量子コンピュータなど様々なところで利用される「量子もつれ状態」とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話】
非線形効果を用いてつくる「量子もつれ状態」とは?
量子フルーツのバナップルは、バナナとアップルの性質を半分ずつ持っています。前項までは量子フルー1個の話をしてきましたが、その量子フルーツ2個を使って「量子もつれ状態」をつくることができます。もつれ状態は量子コンピュータや量子センサー、量子通信などさまざまなところで利用される人気絶頂・引っ張り凧だこの「量子のふしぎ」の1つです。
まず2個のバナップル(バナップルペア)をつくります。実験的には「非線形効果」という特殊な効果を用いて、バナップル2個をエイヤッ!とつくります。この非線形効果がバナップルをもつれさせるのですが、もつれることで2個のバナップルが運命共同体になったと考えてください。
重ね合わせ状態の1個のバナップルをかじる(測定する)とバナナかアップルのどちらかになるかは
50%の確率でしたが、2個からできている「もつれバナップルペア」ではどうなるでしょう。もつれた片方のバナップルをアリスに、もう片方をボブに渡します。同時に2人にかじってもらうと、両方ともアップルになり、もう一度バナップルペアをつくって2人にかじってもらうと今度はバナナでした。何度試しても同じです。アップルかバナナかの出現はランダムなのに、2人にはまったく同じフルーツが出てくる。これが「量子もつれ状態」 です。片方がかじられる (測定される)ともう片方がそれと同じフルーツになる。つまり、2つのバナップルは運命共同体であって、こうした2個のバナップルを「量子もつれ状態」と呼ぶわけです。
実際の実験では、緑色のレーザ光を非線形結晶と呼ばれるマジカルで透明な結晶に打ち込みます。すると2つの赤色のバナップル光子ペアが出てきます。この光子ペアはどちらもタテ(バナナ)とヨコ(アップル)の振動の重ね合わせです。出現した光子ペアをアリスとボブが測定すると、必ず2人ともタテ(バナナ)かヨコ(アップル)に振動している光が測定できます。ですが、どちらになるかは毎回気まぐれです。
「もつれバナップルペア」で「量子もつれ状態」を見る
バナナかアップルかはランダム。でもいつも一緒
非線形結晶(非線形効果)を使って「えいやっ!」とボブとアリスのバナップルペアをつくる。ボブとアリスに1つずつバナップルを渡して同時にかじってもらうと、両方ともバナナ、もしくはアップルになる。この量子フルーツの出方はランダムなのに、ボブがかじる(測定される)とアリスには同じフルーツが出る。これを運命共同体の「量子もつれ状態」と呼ぶ。
実際の実験で「量子もつれ状態」を見る
タテの振動をバナナ、ヨコの振動をアップルに置き換えた図だが、その出現頻度には規則性がなく、気まぐれである。下図は実際の実験の方法。レーザー光の波長を変換するための非線形結晶に緑色のレーザー光を打ち込む。そうすると赤色の光子ペアが出る。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話』著:久富隆佑、やまざき れきしゅう