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身近な水辺に棲息している<クサガメ> 他のカメとの見分け方は?

サカナト

スルメをくわえて ハイ、ポーズ(提供:halハルカ)

川や池でのんびり泳ぐカメ。なかでも「クサガメ」は、昔から身近な存在ですね。

今回は、子どもとのザリガニ釣りで偶然出会ったクサガメのエピソードを交えながら、その生態や他のカメとの見分け方について紹介します。

ザリガニ釣りで偶然出会ったクサガメ

数年前の初夏、子どもと一緒にザリガニ釣りに出かけたことがありました。

場所はザリガニで有名な大きな池。使ったのは、ヒモにスルメをくくりつけただけの、昔ながらのシンプルな道具でした。何とそんなシンプルな仕掛けで、子どもが可愛いクサガメを釣ったのです。

クサガメ(提供:PhotoAC)

釣り上げたのは甲羅が15センチほどの小さなクサガメ。驚いたのは、その子が釣り上げられてもなお、スルメをがっしりと咥えて離さなかったことです。そんなにお腹が空いていたのでしょうか。

さらに可愛らしかったのは、人が近づいても首を引っ込めることなく、こちらをじっと見つめてきたことです。その愛らしい姿に、私もこどももすっかり心を奪われました。

この出来事をきっかけに、クサガメという存在に興味を持ちました。

静かな水辺の住人クサガメの生態

クサガメは淡水ガメで、漢字では「草亀」と書きます。主に本州、四国、九州の河川や池、水田などで見られ、泳ぎが得意で水中生活に適応した体をしています。

本州・四国・九州に生息するものは、かつて自然分布と考えられていましたが、現在では18世紀末に移入されたとの見方が強まっています。

また近年、ペットとして輸入された中国産個体が各地で遺棄されている可能性も指摘されています。

体長は成体になると20センチ前後になり、甲羅はやや扁平で楕円形。背中の甲羅には三本の縦線がうっすら見えるのが特徴です。

体色はやや黒っぽく、若い個体ほど甲羅に模様が見られますが、成長とともに黒くなっていく傾向があります。顔の周りに薄黄色の模様があり、アカミミガメにも似ていますが、赤い色はありません。

おっとりとした性格が特徴です(提供:halハルカ)

クサガメは雑食性で、水中の水生昆虫や小魚、落ちた果実などを食べます。

寿命は野生でも30年以上とされ、非常に長生き。亀を長寿のシンボルとしてきたのにも納得ですね。

クサガメと他のカメの見分け方

さて、クサガメよく似たカメとして、ニホンイシガメや、前述の外来種ミシシッピアカミミガメ(通称:アカミミガメ、ミドリガメ)などが挙げられます。

この3種にの簡単な見分け方についてもご紹介します。

クサガメ

クサガメ(提供:PhotoAC)

目をよくみると、横長の瞳孔をしています。

甲羅には頭からしっぽに向けて3本の立体的な筋があり、でこぼこした見た目が特徴。若い個体には顔の周りに模様があります。

ニホンイシガメ

ニホンイシガメ(提供:PhotoAC)

クリっとした大きな目がチャームポイント。甲羅が少し黄色がかっていて、背中にくっきりとした一本線(キール)が見られます。

陸上での活動も多いのが特徴です。

ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)

外来種ですが、縁日の「カメすくい」やペットとしてもよく流通していたため、河川や公園で見かけます。

目の後ろに赤い模様があり、甲羅はやや丸くて大きめ。クサガメやイシガメよりも体が大きく、気性も荒めです。

ミシシッピアカミミガメ(提供:PhotoAC)

ペットショップでは小さい個体が「ミドリガメ」として販売されていることもありますが、野生でみられる通り大きく育つため、飼育する際には注意が必要です。

在来種や外来種にかかわらず、一度飼育した個体を自然にかえすことはやめましょう。

見分けるポイントとして、「目の後ろに赤い線がある=アカミミガメ」「黒くて甲羅に線がある=クサガメ」「黄色っぽくて甲羅に一本線=イシガメ」と覚えておくと分かりやすいです。

外来種との共存と私たちにできること

現在、日本の淡水域ではアカミミガメの繁殖が進み、クサガメの生息数は減少傾向にあるといわれています。

アカミミガメは成長が早く、繁殖力が強いカメです。在来種の住処を奪ってしまうだけでなく、他のカメの卵を食べる習性もあるため、大きな影響が懸念されています。

一方、クサガメに関しても、18世紀以降の移入のほか、近年の中国産個体の遺棄が指摘されており、在来の生きものとの交雑や競合、捕食が想定されます。

環境省はアカミミガメを「条件付特定外来生物」に指定し、2023年から販売や野外放流が規制されるようになりました。

この日釣ったザリガニも立派な外来種です(提供:halハルカ)

私たちができるのは、自然の中で出会った生き物をむやみに持ち帰らず、あるがままの環境で観察することです。

野生生物に出会えた時の喜びは、子どもにも大人にも大切な体験になります。

しかし、どれほど可愛くても、野生の生き物はそのままそっとしておくのが鉄則。保護などの理由でも、一度その生き物を生息場所から移動した場合は、最期までしっかりと責任を持って飼い続けてください。

少しの間でも人の手で飼育された個体は、たとえ元の場所であっても野外へ戻してはいけません。

観察したあとは、そっと自然に返してあげる──。

それが、次の世代にも豊かな自然を残すために私たちができる心がけですね。

(サカナトライター:halハルカ)

※クサガメの説明について、記事公開時の内容に修正を加えました(サカナト編集部)。

参考文献

クサガメー京都府レッドデータブック

西堀智子(2021)、大正川での捕獲調査で分かったクサガメの現状、亀楽、p29

ミシシッピアカミミガメー国立環境研究所 侵入生物データベース

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