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ammo、3人が生み出す、吐き出す、奏でる音楽を受け止め、愛したーー大阪での初野外ワンマン『インマイライブ・クォーターライフ』2時間を超える壮絶なステージ

SPICE

ammo 撮影=toya

ammo『初めてのホールワンマン&野外ワンマン『インマイライブ・クォーターライフ』』2025.6.29(SUN)大阪・大阪城音楽堂

岡本優星(Vo.Gt)がこの日、何度も口にした言葉がある。「大阪、Orange Owl Records所属、ammo。よろしくお願いします」、そして「ほんまに、選んでくれてありがとう」。自分たちは何者で、自分たちは何をやるためにここに立っているのか。それを自身に刻みつけるように何度も口にする。その3人が生み出す、吐き出す、奏でる音楽を受け止め、愛して、この日を選んだ目の前にいる人たちに、深くて熱い感謝と誓いのような思いを何度も何度も言葉で伝えた。6月21日東京Kanadevia Hallでの初のホールワンマンを経て、生まれ育った大阪で開催された初めての野外ワンマン。ダブルアンコールを含め全32曲、2時間を超える壮絶なステージをammoはこの夜見せてくれた。

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6月とは思えない真夏のような気温の中、開演の17時半が近づくまで大阪城音楽堂内にはWEEZERの曲が流れていた。その音が止み開演時刻の場内にthe pillowsの『白い夏と緑の自転車と赤い髪と黒いギター』(アルバムバージョン)が聴こえ、北出大洋(Dr)、川原創馬(Ba.Cho)、岡本の順に3人が登場する。90年代以降の音楽シーンに大きな足跡を刻み続けるWEEZERとthe pillows。ammoと彼らをつなぐ見えない何かが見えたような気がした。

「大阪、Orange Owl Records所属、ammo始めます。よろしくお願いします」と改まった口調で告げ、1曲目は「CAUTION」。ギターをかき消すほどの拍手と歓声が迎える。暗い部屋で耳を塞いでいた主人公が音楽に触れ、<居場所が無いなら作ればいい>と、<奏でていたいんだ/心の中に用があるんだ>と、自分の声と音で外の世界に通じる壁を突き破ったこの曲に、無数の拳が上がる。「ガンガン行こうか!」と「ハート・フル」へ。太宰治「グッド・バイ」のようなつづりだなといつも思うこの曲から「未開封」「深爪」「SHI’NE」までノンストップで。川原は激しく頭を振り、ステージの端ギリギリまで前のめってベースを弾き倒す。サポートメンバーはいない。DTMで同期を使うこともない。3人だけで奏でる爆音がまだ青い空に向かって放たれるさまは、潔くて、頑固で、不器用な3人そのもので清々しく思える。

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最初のMCで「自分たちは25歳を過ぎて人生の4分の1が終わった」と、ライブのタイトルに絡めて岡本が話した。「俺たちはこれでメシを食ってる、俺たちはこれで生きてる。そんな決意のライブをやりに来ました」と静かな口調で言うと、「気温が高いのでそれぞれのペースで楽しんでいきましょう。……なんて言うわけないじゃないですか!」と噛みつくように言い放ち「馬鹿な人」を。中盤、歌詞が怪しくなった「歯形」では「しっかりしろ!優星」と自分に喝を入れ、「野外でロングセットだからどっしり落ちついてやろうと思ったけど、カッコつけんのもうやめました」と開き直ると、すでに沸騰している場内はさらに火を投げ入れられたように沸きあがった。

「寝た振りの君へ」に続く短い弾き語りの歌詞にも、「紫春」の前の弾き語りにもammoらしさや優星らしさが現れている。たとえば<本当は混沌の中にあるもんさ だろ?>と韻を踏んだり、聴き手に問いかけながら自分に問いかけていたり。「ブルースを抱きしめて」を一緒に口ずさむ人。身動きしないでステージを見つめる人。それら数曲の間、その場にいる人たちの中に歌が染み通っていくのを目の当たりにする。

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その穏やかな空気を一変させるような激しい「突風」に始まり、「包まれる」「星とオレンジ」で一気にエモーショナルに。点滅する照明までも客席を煽っているように映る。その熱気が醒めないまま、岡本がギターをかき鳴らしながら言った。「情けない。どうしようもない。そんな人生を肯定しにきた」。「足掻いてるわけじゃない。逃げてるわけじゃない。ただ俺は俺を愛したい、これで、ロックバンドで」。そう吠えると、さらにギターを加速させ、「これまで何度も立たせてもらったこのステージで初めてのワンマンライブをする。初めてが何なんだよ。今日選んでくれた君はなんだ、今日選ばなかったやつはなんだ?俺がいるんだよ。俺たちは今ここで生きてんだよ」とまくしたて、「だから今日を人生のピークにしにきました」。

そこからの「フロントライン」は、もしもこの場所がライブハウスだったらどれだけのダイバーが飛び交い、どれだけの人がモッシュでもみくちゃになっただろうと想像せずにいられなかった。爆速で駆け抜ける曲中にも歌詞とクロスするように、「俺はこの人生をやめない」、「今日が一番じゃなきゃダメだと思ってる」と言葉を継ぎ、最後に「こんな歌を7年前からずっと歌ってる」と。これまでどんな人生を生きてきて、その身の中でどんな思いがうごめいていて、やがてそれがどんな音楽として世に放たれようとしているのか。そんな生き様みたいなものを振り下ろすスティックに、掻き鳴らす指先に、絞り出す声にありったけ詰め込んで3人が放つ。「俺たちが26歳、大阪、ammoでした。よろしくお願いします!」の言葉も一緒に。

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ammoは大阪城音楽堂でのイベントに何度も出演しているが、明るい時間帯の出番が多く、トリのバンドが夜空の下で照明に照らされ演奏する姿に憧れていたという。今日はそれが実現すると期待したが……「なんでこんなに明るいん?(笑)」と19時を過ぎてもまだ暗くない空を見上げる。客席に向かって改めて、「パンパンの野音の景色を絶対見せるから。座りながらでいいから聴いて」と新曲の「Nostalzia」を披露。この日会場後方の数列は空席で、満員御礼とはならなかった。岡本の言葉通り、この次ここでammoを見る時は初の満員の大阪城音楽堂ライブであることを想像すると、未来にまだ「初」があることも素敵だと思える。

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「やまない愛はある」から「好きになってごめんなさい」まで嵐のように駆け抜け、アンコール1曲目は「High Ace!!!」。歌い終えた後、東京のホールワンマンと今夜の野外ワンマンを通して心が強くなったと語り、即興で「身体は三つでも俺たちは一つ 今日は大阪城音楽堂あなたの笑顔を見つけたよ 愛されているなと思いました また俺たちの名前を呼んでよ」と歌った。「身体一つ、恐怖断つ。」だ。「ハニートースト」と最後の曲「歌種」を合唱する客席に、万感の思いで「大阪愛してます」と伝え、この夜の晴れやかな幕切れとなった。誰もいなくなったステージを見つめ余韻に浸る人、席を立ち始める人が目立つ中、なんと3人が駆け足でステージに戻ってきて、「時間がない!」と「後日談」を演奏し始めた。出口に向かっていたお客さんも足を止め、歓声と歌声を夜空に響かせる。岡本は歌いながら「これが最後、いやだ!」と別れを惜しみながらも、最後は「バイバイまた会おうぜ」と再会を約束し晴れやかにステージを締めくくった。

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同日0:00に配信された「Nostalzia」を聴いて驚いた。全編でピアノが鳴っている。ライブではギターがリードして、初めて耳にするのにするりと隣にすべり込んで肩をなでるようなあたたかさがあり、同時にとびきりの切なさが沁みた。これまで知らなかったammoの一面を聴かせてくれる曲だ。10月からは結成7周年で7会場を回るツアーが始まる。「Nostalzia」が開いた扉の向こうで、もっと新しい、まだ知らないammoに出会えるような気がする。

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取材・文=梶原有紀子 撮影=toya

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