【3/24に土星の環が消える!?】15年ぶりの天体ショー 見られるのはいつ? どこ? 科学博物館学芸員が見どころを解説
惑星っていうと、どんなものを想像しますか?
色、形…頭の中に思い浮かべてください。ひょっとして、その星、まぁるい環(わ)がついてませんか?
太陽系の惑星として2025年現在、確認されている天体は8つ。
その中で、環のある惑星として知られるのが、土星です。
環のある惑星って、SF漫画やアニメでも描かれるように典型的な天体のイメージがありますよね。土星もそんな理由で天体ファンには人気の惑星で、望遠鏡で“環”を見たのがきっかけで宇宙や天文に興味を持ちはじめる人もいるほどです。
ところが、2025年3月24日に土星から環が消えてしまうらしいんです。
え、本当に!?
富山市科学博物館の学芸員に聞いてみました。
土星ってどんな惑星?
地球の約9倍 太陽系の惑星で2番目の大きさ
太陽系の8つの惑星の中では、木星に次ぐ大きさを誇る土星。
その赤道半径は6万268km。直径で地球の約9倍の大きさがあります。
中心部分には岩石からなる核がありますが、その周りには金属水素や液体水素、ガスなどが取り巻いていると考えられていて、巨大ガス惑星に分類されています。
土星の“環”ってなに?
そんな土星をぐるっと囲むように1周している“環”。
1本の帯のように見えますが、実はたくさんの環が重なっています。外側からA環、B環、C環と3重になっていて、B環がもっとも明るく、C環はかなり暗くみえます。小さめの望遠鏡でも簡単に見えるのはA環とB環です。
さらに明るい環の外側にはE、F、G環、内側にはD環がありますが、とても暗いので、大望遠鏡や探査機でしか見ることができません。
“環”は何でできてる?
土星の環は、土星の周りを高速で公転する氷の粒が集まったもの。
この粒が太陽の光を反射することで明るく輝いて見えるのです。
粒の大きさは、ごくごく小さな数mmのものから数mもの大きなものまでさまざま。
暗く細い環のD~G環は、その大部分が数ミクロン(1000分の1mm)の小さなチリの粒子でできています。
どうして土星の“環”がなくなるの?
さて、土星についてわかったところで、どうして“環”が消えるのか、解説します。
まず、土星の環は、土星が太陽の周りを回る公転軌道の面に対して、26.7°傾いています。土星はその傾きを保ったまま、太陽のまわりを約29.5年かけて1周します。そのため、土星と地球の位置関係によっては、地球からだと環がほとんど見えない状態になるときがあるのです。
上の図でイメージしてみるとわかりやすいでしょう。
土星と地球が図の上と下の位置にあるとき、環を真横から見る関係になるため、環がほとんど見えなくなる=消えたように見えるというわけです。
“環”が見えなくなる条件は大きく3つ
環が見えなくなる条件は、大きく3つにわかれます。
条件① 土星が地球に対して横を向くとき
土星の環の厚みはたいへん薄いので、真横から見るとほとんど見えなくなります。
条件② 土星が太陽に対して横を向くとき
土星から見て太陽が赤道方向にある場合も、薄い環に太陽光が当たらないため、ほとんど見えなくなります。このような位置関係は約30年の公転周期中に2回あるので、およそ15年に1回、見るチャンスがあります。
条件③ 土星に対して地球と太陽が南北に分かれる場合
土星の環を挟んで地球と太陽が南北に分かれる場合があります。このような位置関係のときも、地球から見える環は太陽光が当たらない面となるため、環はほとんど見えなくなります。
何時にどの方角で見られる?
2025年の場合、3月24日に条件①、5月7日に条件②、その間が条件③となります。
3月24日、土星が地球に対して横を向く時間は早朝4時。残念ながら、日本では土星が昇る前の時間帯のため、観測はできません。また、3月から4月中旬までは太陽に近いため、観測しづらい状況です。
4月下旬以降は、夜明け前の東の空の低いところで見えるようになってきます。
5月7日前後は金星を目印に探してみてください。
半年後にまた消滅!?
土星の“環”が消えるというせっかくの天体ショー、なんだか今回は条件が厳しそうですね…。
でも、安心してください。
約半年後の11月下旬ごろになると、地球が土星を追いこす「逆行」現象が起こり、この時に土星の“環”をほぼ真横から見るような状態になります。
完全に消えるわけではないので、天文学的には「準消失」となりますが、3~5月とは違って土星が地球を挟んで太陽とは反対側に位置するため、夜間の観測しやすい時間に見ることができるんだとか。
ベストタイミングは、11月25日ごろ。
地球が土星の赤道方向に近づくので、「ほぼ環が見えない」状態になります。時間は夕方から夜にかけてで、高度も十分にあり観察しやすそうですよ。
ベストタイミングは11月ですが、徐々に「消失」していく環の変化もぜひ楽しみたいところです。
観察に必要なものは?
土星は1.0等級の明るさがあり、肉眼で観察できますが、環を観るためには望遠鏡が必要です。
観察の際は、車の往来や野生動物との遭遇などにも注意し、安全で他人の迷惑にならない場所を選ぶようにしてくださいね。
【富山市科学博物館】
住所 富山県富山市西中野町1丁目8-31
営業時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)