「東大卒の1児の母」が今もやってる「勉強法」 家事・育児・仕事に忙しくても勉強するコツ
大人になってから勉強するのは大変です。しかし、家事・育児・仕事に忙しくても、勉強するコツさえつかめば、資格取得・リスキリングなどの夢がかないます。東大卒、1児の母である勉強の達人が、現在も実践している子育てしながら勉強する方法を紹介します。
子育て中こそ語学を! 忙しいママのための「タイパ最高勉強法」超実践ガイド 使えるアプリや教材を徹底紹介入学式が行われたり、学年が上がったり……。我が子が新しい生活にまい進している姿を見て、親御さんの中には「自分も何かを始めたい!」と、意欲が湧いた方もいるはずです。東大卒業後、仕事と勉強を両立して数々の資格を取得し、結婚・出産後は子育てをしながら東大大学院に合格。現在は育児と仕事をかけもちしながら大学院にも通う勉強の達人・石黒由華さんが、子育てをしながら勉強するコツを紹介します(全3回の1回目)。
何かを始めたい気持ちはある! でも、自分がやりたいことがわからない!
新しい生活に社会全体が動き出していると、周囲のポジティブな雰囲気に刺激されて、「自分も何かを始めたい!」と、気持ちが高まった親御さんは多いはずです。
とはいえ、「何かを始めたい気持ちはあるけれど、いったい自分は何を始めたらいいのか?」と、踏み出す前に立ち尽くしてしまう方もいます。
「目標や自分の興味関心が見つかるコツは、考えすぎないことです」と、話すのは仕事や子育てをしながら8つの資格を取得してきた石黒さん。勉強の達人である石黒さんは、どうやって自分にふさわしい興味を発見したのでしょうか。
「何か目標を探さなくては! と必死になるよりも、日常生活の中でまずは自分の目標の種になるようなものを拾い集めてみてください。
その方法が、自分の心のアンテナに引っかかったものを画像として記録することです」(石黒さん)
「ネットの記事や情報で気になったものはスクリーンショットをし、本や雑誌、パンフレット、テレビで気になったものはカメラで撮影してスマホに保存します。憧れの人のインタビュー記事を残すのもおすすめです。
保存した画像は、ほかの写真と区別するために『お気に入り』にチェックを入れておくといいでしょう。
この方法のメリットは、ある程度、画像が溜まったところで見返してみると、今の自分がなんとなく気になっていることや、直近で挑戦できそうなものが見えてくることです。また、眺めているうちに自分はこうなってみたいんだな……と、理想像が整理できます。
目標を思いつかなきゃ! と自分に圧をかけると苦しくなってしまいますが、SNSの投稿に『いいね!』をするような気軽な感じで記録していくと、自然と自分の興味関心が発見できたり、目標めいたものがつかめてきますよ」(石黒さん)
自分の仕事周りや趣味から、やりたいことを見つけても
「私が取得した8つの資格の中には、VBA(Visual Basic for Applications)エキスパートというMicrosoft Office製品に関するプログラミングスキルがあります。
これは、仕事で時間のかかる作業を担当していたときに、計算法などをプログラミングできたらもっと早く仕事が終わるんだろうな、と思ったところから取得した資格です。
また、私には美術検定の資格もありますが、趣味の美術鑑賞をしたときにミュージアムショップで問題集を見つけたことが資格をとるきっかけでした。日本化粧品検定も書店で検定のテキストを手にしたことが勉強の出発点です」(石黒さん)
石黒さんは「自分の周囲を全方位的に見渡してみることも、自分を発見できる糸口です」といいます。やりたいことの種は意外と身近に落ちていることがあるので、生活全体に意識を広げてみるといいでしょう。
三日坊主になる人は、三日坊主になる勉強法を選んでやっています。 写真:mapo/イメージマート
三日坊主になる人は、三日坊主になる勉強法をやっている!?
石黒さんのプロフィールには、〈東大卒〉〈留学経験なしでTOEIC950点超〉〈プログラミング技術など8つの資格を独学で取得〉〈現在は東大大学院に在学〉といった輝かしい経歴が並びます。
キャリアを見て、勉強がそもそも得意な人からのアドバイスなんて参考になるのだろうかと疑う方もいますが、石黒さん本人は「勉強は苦手だった」「勉強のコツをつかむまで失敗もした」と話します。
「高校時代を振り返ると、勉強は苦手なほうでした。理数系よりも国語や社会のほうがまだマシという、勉強が苦手な人の典型でしたし。成績も平均よりずっと低い偏差値30台になったこともあります。
そんな私が気持ちを入れ替えて勉強をし始めたのは、高校2年生のときです。
ただ当初は、特に成績がひどかった数学に手を出してみたところ、全然、わからなかったあげく、苦手に拍車がかかり、自信を失って勉強をしなくなるという事態にも……。
その失敗があったので、まだマシだった文系教科から勉強することに変えてみたのです。が、これがいい結果を招きました! ダメなりに少しずつ手応えや達成感を感じられるようになったんです。文系教科の自信が数学にもつながって、徐々に成績も上がっていきました。
私の勉強法は『だれでも、どんなに時間がなくても結果の出る勉強法』を謳っていますが、高校時代の試行錯誤と成功体験が原点です。勉強は、少しでもできるほうや好きなものから始めるのがコツです」(石黒さん)
勉強において、苦手分野は少しでも克服する必要がありますが、不得意から始めてしまうと手応えを感じるまでが長く、その間にやる気を失ってしまうことがあります。
これが三日坊主で終わってしまう原因です。勉強は「得意」や「好きなもの」から始めることをおすすめします。
完璧主義者は要注意! 勉強が挫折するそのほかの原因
勉強は苦手分野から始めてしまうとモチベーションダウンを起こしてしまいますが、そのほかにも挫折の原因があります。
「私の失敗には、問題集の1ページ目から完璧にやろうとしていたこともありました。これだと数ページ進めるのもやっとのことで、実際に勉強を始めて3日後にやめたことが何度もあります。
ですから、勉強は完璧でなくて構いません。
大事なのは、『反復学習する』ことです。初回の勉強では、本当は理解できていなかったり、実際に解いてみたらできないくらいのレベルであっても、それを2回、3回と繰り返すうちに次第に自分のものになっていきます。
また、勉強で重要に思われている『考え込む時間』や『悩む時間』はある意味、ムダな時間です。『解けないものは解けない』『覚えていないことはわからない』と割り切ることも、勉強を効率的に進めるコツです」(石黒さん)
「解けないものは解けない!」などと割り切ることは簡単ですが、それでは知識は積み上がっていきません。そこでこのときに取り入れてほしい方法が、「カンニング勉強法」だと石黒さんは話します。
カンニングは本来、不正に他人の答案や参考書などを見ることを指しますが、石黒さんのいうカンニングは、すぐに「正解を見る」という手法です。果たしてそのようなやり方で本当に知識は身につくのでしょうか。
次回は、勉強時間の短縮にもつながる「カンニング勉強法」を紹介します。
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◆石黒 由華(いしぐろ ゆか)
東京大学卒業、勉強の達人
学生時代から勉強法を研究し、「だれでも、どんなに時間がなくても結果の出る勉強法」を考案。偏差値30台から東大に逆転合格する。東大卒業後はマスコミ企業に就職し、社会人になってからも自身で築き上げた勉強法を実践して、留学経験なしでTOEIC950点超、プログラミング技術など8つの資格を独学で取得する。結婚・出産後は、さらに子どもを育てながら勉強を続け、東京大学大学院に合格。現在、同大学院に在学中。効率的な勉強法の研究は、今も勉学に励みながらアップデートしている。著書に『夢を先送りしない勉強法』(技術評論社)がある。
取材・文/梶原知恵