【「第7回熱海未来音楽祭 2025」プロデューサー巻上公一さんインタビュー】佐藤允彦さん、中西俊博さん、サム・ベネットさんが初参加。町田康さん(熱海市)は3年ぶり
音楽家で詩人の巻上公一さん(熱海市)がプロデュースする、「即興」をキーワードにした音楽とパフォーミングアーツの祭典「第7回熱海未来音楽祭 2025」が11月29~30日、熱海市各所で開かれる。今年注目の演目や出演者について、巻上さんに聞いた。(聞き手=論説委員・橋爪充)
-今年の“巻頭詩”に「海へと向う坂道のラビリンス」を掲げていますね。「カモメは空に白を運び/イルカは海に波を運ぶ/みかんと風の相性を訊き/世界は雨からことわざを知る/熱海では坂道は海へと向う/坂道では未来は音楽に向う/ぼくらはそこに立っている」としていて、熱海の風景がそのまま頭に浮かびます。
巻上:今回は、(毎年「熱海未来音楽祭の期間中に)サンビーチに設置している)「ラビリンスドア」を新しく作りました。11月30日の午前中、(ワークショップで)白いカモメを作り、口琴を鳴らしながら浜辺のラビリンスドアを目指してパレードします。
-「海へと向う坂道のラビリンス」はパレードそのもののタイトルでもあるのですね。
巻上:そうですね。
-ピアニストの佐藤允彦さんが「熱海未来音楽祭」初登場です。
巻上:日本のフリージャズシーンの第 1 世代です。まさに大御所。1980年ごろだったかな。日本のフリージャズの歴史に詳しい音楽評論家の副島輝人さん(故人)が新宿ピットインに僕を呼んでくれて。それが初顔合わせでした。
-40 年以上の付き合いになりますね。
巻上:そうなりますね。ツアーに呼ばれたこともあります。10年ほど前には、ポーランドの(南西部の都市)ヴロツワフのジャズフェスティバルにも一緒に出ました。允彦さんのピアノは静謐なんです。静かな感じ。知性を感じます。
-即興で演奏するんですか。
巻上:お任せです。佐藤さん、どんな演奏でもできちゃうから。恐ろしいよね。でも、誰でも楽しめるように(プログラムを)作ってくれると思います。
-バイオリニストの中西俊博さんも初めて参加します。
巻上:熱海市の近くにお住まいなんですよ。未来音楽祭に出たいとお申し出がありました。僕は(ジョン・ゾーンが作曲したゲームの理論を応用した即興演奏)COBRAでご一緒したことがあります。(ヒカシューのドラマー)佐藤正治さんの方が、昔からよく一緒にやっているかな。今回は中西さん、正治さんに加えてバリトンサックスの本藤美咲さんに入ってもらいます。今バリバリの、いい演奏家です。
-パーカッション奏者のサム・ベネットさんも熱海未来音楽祭に初登場です。
巻上:ようやく出てもらえた。サムさんは日本に30 年住んでいる素晴らしい演奏家。ブルースを含めたアメリカの古い音楽を愛していて、ボーカルもすごいです。
-サムさんは巻上さん、シンセサイザー奏者坂口光央さんとの3人組「巻上公一と熱海サンビーチ」、そこに佐藤允彦さん、黒谷都さん(人形演劇) 、纐纈之雅代さん(サックス)が加わったフィナーレ「境界賛歌 Anthem at the Edge」で演奏します。
巻上:「熱海サンビーチ」は、しりあがり寿さん(漫画家、静岡市出身)のイベントに参加するために2024年12月に結成したバンド。僕が構成を考えているけれど、ほぼ即興ですね。
-この顔ぶれでは巻上さんはテルミンが多めになりますか。
巻上:そうですね。サムさんと僕のボイスの掛け合いもあるでしょうね。
-作家で音楽家の町田康さん(熱海市)は3年ぶりの参加です。
巻上:「トークならいいよ」って言ってくれて。「続・くるぶしからのど仏を通って熱海行き」というタイトルです。僕と町田さんはもともと音楽をやっていて、そこから詩や小説といった文学の道を行っている。そうした話が中心になると思います。昔からお互いに知っているので、バンドの話も。
-お二人は2021年6月に熱海市で開かれた「オノマトピアミーティングin熱海」でも対談されていましたが、オノマトペがテーマになっていたのでパーソナルな話題はありませんでした。
巻上:今回はその辺も話そうかなと。1980年前後ぐらいのことを。
-町田さんがINUのメンバーだったころですね。
巻上:初めて彼を見たのは1978年か1979年、「キッド・アイラック・アート・ホール」(東京都世田谷区)でした。関西からいろんなバンドがやってきて演奏したんです。アーント・サリーやSSと一緒にINUが出ていましたね。そんな昔の話もできると思います。
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■ 第7回熱海未来音楽祭
※主な演目
▼11月29日(土)
ワークショップ「巻上公一の声の冒険ワークショップ」
時間:午前11時~正午
会場:起雲閣音楽サロン
講師:巻上公一
熱海の街を舞台にしたダンス×即興演奏のパフォーマンス! 「LAND FES」
時間:午後1時~午後2時半
受付:受付場所=EOMO store前(熱海市銀座町6-6)
出演: 西山友貴(ダンス)、イルマ・オスノ(ペルー民族舞踊)、若羽幸平(舞踏)、大野慎也(ガイダ、アコーディオン)、星衛(チェロ、和笛、電子獅子舞)、サム・ベネット(パーカッション、ボイス)
対談「続・くるぶしからのど仏を通って熱海行き」
時間:午後5時~午後5時45分
会場:起雲閣音楽サロン
出演:町田康(作家、音楽家)、巻上公一(音楽家)
ライブ「天ノ橋 地獄巡 熱海に参上」
時間:午後4時~午後5時
会場:起雲閣音楽サロン
出演:天鼓(ボイス)、内橋和久(ギター、ダクソフォン)、巻上公一 (ボイス、テルミン、尺八ほか)
ライブ「合縁奇縁(あいえんきえん)」
時間:午後5時45分~午後6時45分
会場:起雲閣音楽サロン
出演:中西俊博(バイオリン)、佐藤正治(パーカッション)、本藤美咲(バリトンサックス)
▼11月30日(日)
※主な演目
ワークショップ「熱海の迷宮道先案内人〈白いカモメ〉をつくろう!」
時間:午前10時半~午前11時半
会場:Eomo storeアトリエ
講師:長峰麻貴(舞台美術家・造形教育研究家)
口琴のミニWS付き 熱海未来パレード 《波間から迷宮へ ― 口琴パレード ―》
時間:午前11時半~午後0時半
受付場所:EOMO store
出演:長与江里奈(ダンス)、 佐藤正治(パーカッション)、サム・ベネット(パーカッション)、星衛(チェロ・和笛・電子獅子舞)ほか
ライブ「人形と鍵盤の白黒の行方」
時間:午後1時40分~午後2時40分
出演:黒谷都(人形演劇) 、纐纈之雅代(サックス)
ライブ「緻密な一音に震える世界 佐藤允彦ソロ」
時間:午後3時半~午後4時15分
会場:起雲閣音楽サロン
出演 :佐藤允彦(ピアノ)
ライブ「巻上公一と熱海サンビーチ」
時間:午後5時~午後6時
会場:起雲閣音楽サロン
出演:巻上公一(ボイス、テルミン他)、坂口光央(シンセサイザー)、サム・ベネット(ボーカル、パーカッション)
フィナーレ「境界賛歌 Anthem at the Edge」
時間:午後6時20分~午後7時20分
会場:起雲閣音楽サロン
出演:佐藤允彦(ピアノ)、黒谷都(人形演劇) 、纐纈之雅代(サックス)、巻上公一(ボイス、テルミン他)、坂口光央(シンセサイザー)、サム・ベネット(ボーカル、パーカッション)
■チケット料金など詳細は公式サイト(http://www.makigami.com/atamimirai.html)を参照。参加申し込み、問い合わせは電話(080-5447-5151)、メール(makigamioffice@gmail.com)