<義父に弁償10万!?>電車好きの息子が義父の部屋へ……「うわ~ん」何が起きた!?【まんが】
私はトモヨ。夫のテツヤ、4歳の息子であるコウヘイと3人で暮らしています。わが家から車で30分ほどのところに義両親が住んでおり、近すぎず遠すぎずの距離で私たちは良い距離感を保てていると思っています。義父の趣味は鉄道模型収集で、そのコレクターぶりたるや圧巻のひと言です。義実家のひと部屋を専用の部屋として使用しているほどに没頭しており、電車好きのコウヘイも義実家に行くたびにコレクションを見せてもらっています。
義実家に行くと必ずこんな会話が交わされます。義父は若いころから鉄道模型収集の趣味があって、そのコレクションはまさに圧巻のひと言。気が遠くなるくらいの年月とお金、そして熱量をかけて集め続けたことは、鉄道模型に詳しくない私でもよくわかります。
義母がイタズラっぽく笑って言いました。鉄道模型収集は結婚する前からの義父の趣味だったようで、それを知りながら夫婦になることを選んだ義母は義父の趣味にとても寛大です。義実家で鉄道模型を見せてもらっているときのコウヘイの目は本当にキラキラしています。
喜びながら模型を見つめるコウヘイの後ろ姿を見ながら、私はそう願わずにいられませんでした。
ある日、「リンゴがたくさんあるから取りに来て」と電話をくれた義母。ありがたい話です。私たちは、さっそく3人で義実家に向かいました。義父は用事があって違う部屋にいるらしく、義母だけが玄関で迎え入れてくれました。
義母がそう言いかけたとき、鉄道模型が飾ってある部屋から大きな音がしました。続けてコウヘイが大声で泣く声が聞こえます。私たちは急いで部屋へ向かいました。
義父の鉄道模型コレクションは、ひと目見ればすぐに「素晴らしい」と思えるほどのものでした。電車にまったく興味がない私でもそう思うのですから、電車好きのコウヘイからしてみたら夢のような空間だったことでしょう。だからこそコウヘイは「1人で行っちゃダメ」という大人たちの制止も聞かず、足を踏み入れてしまったのだと思います。 そしてそこで何が起こったのか、部屋には泣くコウヘイと壊れた鉄道模型が。私の頭は真っ白になりました……。
壊れてしまった鉄道模型!呆然とする義父の姿に「ヤバい!」
義父が部屋を覗き込み、惨状を目にするやいなや固まってしまいました……。コウヘイは泣きじゃくっています。
コウヘイの手には壊れた鉄道模型が握りしめられています。いつもコウヘイに優しくしてくれる義父。けれどいま何を思っているのかはわかりません。
もうおすそ分けのリンゴどころではありません。私たちは逃げるように帰ることになりました。帰りの車の中も、当然ながら重々しい空気に包まれていました。コウヘイも随分泣いて反省しているので、これ以上責める気にもなりません。いつの間にかコウヘイは泣き疲れて寝てしまっていました。
夫は若いころから義父の鉄道模型を見てきたため、多少は種類や値段がわかるかと期待して聞いてみました。ところが……。
義父の大切にしていた鉄道模型を壊してしまって、泣きじゃくっていたコウヘイ。私は思わず大きな声で叱り飛ばしてしまいました。 しかし一方、義父の第一声はコウヘイのケガを心配するものでした。しかしその後壊れた模型を目の前にすると、義父は目に見えて落胆。義母の機転で私たちは義実家をあとにしました。弁償したほうがいいのかもしれないと考えていた私。ところが夫から「10万以上することもある」と聞いて驚いてしまいました。 わが家の家計からそんな大金をポンと出すのは難しいです。
「義父にも非がある!」弁償を回避したくて夫に訴えるも……?
わが家の家計からいま10万円がなくなるのは、正直かなりキツイです……。コウヘイが悪かったことは十分わかっているつもりなのですが、なんとか弁償しないで済むようにと必死に言い訳をしてしまう自分がいました。
私は夫から確実に「弁償しなくていい」という言葉を引き出したい一心で、懸命に説得しようとしました。「子どものしたことだから仕方がないよね」と。夫も私の言い分に賛同してくれるかと思ったのですが、残念ながら逆効果だったようで……。
義父の大切にしていた鉄道模型を壊してしまったコウヘイ。「弁償したほうがいい」とはもちろん考えていましたが、思っていたより模型が高額で驚いてしまいました。正直、わが家の家計からそんな大金をポンと出すのは難しいです。 できれば夫から「弁償しなくていいんじゃない?」という言葉を引き出したかった私は、義父にも非があったと主張。しかし夫からの言葉に思わず納得してしまいました……。私はなんだか自分が恥ずかしくなってしまいました。
息子がポツリ「じいじに謝りたい……」義父に渡したモノとは?
次の日の朝、「昨日のことをじいじに謝りたい」と話しかけてきたコウヘイ。私たちは夫婦で顔を見合わせました。しかしコウヘイがそう言っている以上、やはりもう一度謝ったほうがいいでしょう。
私たちは準備を済ませると、少なくとも私は重い足取りで出かけました。義実家に着くと義両親はいつもの笑顔で迎えてくれました。
少し元気がないようにも見える義父。大切な鉄道模型が壊れてしまったのだから当然です。申し訳なさから、私は義父の顔をまっすぐ見られませんでした。ただ、昨日気持ちを決めたはずなのに、どうしてもお金のことばかり考えてしまいます。すると、コウヘイが誰に促されるでもなく話しはじめました。
鉄道模型を壊してしまったことを、正直に義父に謝るコウヘイ。義父はそんなコウヘイに優しく接してくれました。コウヘイは素直に返事をしたあと、またもや「あのね」と言い、その小さな手にはいちばんお気に入りの電車のおもちゃが握られていました。
「じいじに謝りたい」と言って、自分がいちばん大切にしている電車を義父にプレゼントしたコウヘイ。できる限りの償いをするために、幼いながらにいろいろと考えた結果だったのでしょう。「弁償なんてしなくていいよね」とごり押ししていた自分がとても恥ずかしいです。 そしておもちゃの電車ひとつにもかかわらず、それをコウヘイの謝罪の気持ちとして受け取ってくれた義父に対しても、頭が下がる思いでいっぱいです。私もこれからは、2人の人間性を見習いたいと思います。
【義父の気持ち】孫が壊した模型は……亡き兄からのプレゼント!
私はすっかり年を重ねて、今ではコウヘイという可愛らしい孫がいるおじいちゃんです。私は鉄道模型収集が好きで、結婚するより前から長く続く大切な趣味となっています。「結婚する際に全部捨てられた」なんて仲間もいましたが、妻は私の趣味に理解を示してくれてありがたいかぎり。最近では孫のコウヘイも電車を好きになったようで、わが家に来るたびに私のコレクションを眺めています。キラキラした目で見つめているのが本当に可愛らしいです。
コウヘイたちが来たとき、私はちょっとした用事があって別室で電話をかけていました。電話をかけ終わると同時に、鉄道模型の部屋の方から大きな音とコウヘイの泣き声が聞こえてきました。私は慌てて部屋に向かいました。
部屋ではトモヨさんがコウヘイを叱りとばしています。私は思わず泣きじゃくるコウヘイに駆け寄りました。見たところケガもしていません。何かを飲み込んだというわけでもなさそうです。
私は思わずハッとしてしまいました。これは亡き兄がくれた鉄道模型だったのです。コレクションの中でも1位2位を争うほど大切なもの……それが壊れてしまいました。しかし泣きじゃくりながら謝る孫を前にして、ショックを受けた素振りを見せるわけにはいきません。表面上「大丈夫だよ」と言うのがやっとでした。
気付いたときには私は部屋に1人、とり残されていました。息子たちはいつの間にか帰ってしまったようです。
鉄道模型のコレクションをしまっている部屋からコウヘイの泣き声がしたときには本当に焦りました。あの部屋には模型のコレクションばかりがあるわけでなく、模型を動かすための重い機械や細かい部品、危ない工具なども置いてあるからです。 「もしコウヘイに何かあったら」との一心で駆けつけましたが、ありがたいことにコウヘイは無事でした。しかし私がいちばんと言ってもいいほど大切にしていた模型は、残念ながら壊れてしまったのでした……。
孫からの精一杯の償い「ずっと大切にします」
一般的なきょうだいよりもずっと歳が離れていた兄は、私のことをとても可愛がってくれました。初めての給料で鉄道模型をプレゼントしてくれて、とてもうれしかったことをよく覚えています。
「一緒に酒を緒むのが楽しみだ」と口癖のように言っていた兄。私も同じ気持ちでした。しかし……。
一緒に酒を飲む夢は、残念ながら叶いませんでした。私が19のとき、兄は病気で急逝してしまったのです。
私は最近兄のことを思い出していなかったことに気付きました。そして壊れた鉄道模型を目の前にして、「少し前に孫ができたんだよ」と語りかけながら酒を飲みました。
コウヘイが壊してしまった模型は、今は亡き兄が私のためにプレゼントしてくれたものでした。あんなに大切な兄だったはずなのに、最近は思い出すこともすっかり減っていました。しかしコウヘイのトラブルのおかげで私はまた、あの頃のことを鮮明に思い出したのです……。 翌日、コウヘイは大切にしているはずの電車のおもちゃを私にくれました。きっと贖罪のつもりなのでしょう。私はその気持ちを受け入れました。これからは兄がくれた模型も、コウヘイがくれたおもちゃも、どちらも大切にしようと思います。