【なぜうちの子は言うことを聞いてくれないの?】0歳~6歳の心の発達を知れば、子どもの「困った姿」にもう悩まない![保育士てぃ先生推薦]
大人になれば、2歳の違いなど関係ありません。気が合えば、一緒に外出や会話を楽しめることでしょう。
ところが幼児期の子どもはそうではありません。1、2歳の違いによって、運動能力ばかりではなく、もののとらえ方、考え方、振る舞い方に違いが見られます。
もちろん、コミュニケーション能力や、絵や粘土などで製作する力にも差があらわれます。
保護者が子どもの発達について正しく理解していないと、子育てに「見通し」がもてず、子どもに対して自分勝手な解釈や、自己流の関わり方になってしまいます。
子どもの成長には、年齢や時期に応じた段階があり、保護者や周囲の大人がその段階に合わせた関わり方をすることで、健やかな発達が期待できます。
たくさんのママ・パパから絶大な信頼を得ている保育士・てぃ先生が推薦する、発達心理の専門家・湯汲英史氏の著書『0歳~6歳 子どもの社会性の育て方』(Gakken)では、今の子どもの「気になる」姿をもとに、子育てにおける10か条をあげています。これは、親をはじめとして、子どもの育ちに関わる大人が基本的に心がけるべき要点です。
こういう視点をもつことで、子育てへの理解が深まり、結果的に子どもの将来によい影響を与える……そう確信しながら、述べているものです。
こちらの記事では、その中から3つを抜粋し詳しくご紹介します。保護者のみなさまの子育ての振り返りの視点として、ぜひ参考にしてみてください。
「気になる子」が増えている?
子どもの発達に関わる仕事について50年ほど、園にうかがっての発達相談を始めてからも40年余が過ぎました。
発達障害専門のクリニックで働いているのですが、1990年代半ば頃から、落ち着きがないとか、社会性に問題があるという子どもが来るようになりました。そして2000年前後からは、発達障害といえるかな……?と悩むような「気になる」とされる子どもが増えてきました。
もともと「正常」には定義がありません。一方で、診断名と診断基準は新たに作ることができます。
2000年前後から始まった発達障害のある子どもの増加は、診断名が増えたことによる影響がうかがえます。つまり、問題の範囲が広がった結果、正常の範囲が狭くなったのではないかということなのです。
この背景には、子どもを見る目がとても厳しくなったことがあげられます。
大人のように落ち着いて、社会性もあって、ちゃんとコミュニケーションが取れる子ども像が求められています。
しかし、自分の子ども時代を振り返ってみれば、そういう子はまれでしたし、極端な少数派だったと思います。子どもは落ち着かず、騒がしく、大人の言うことは聞かなくて、おおむね自由奔放でした。子ども集団も存在し、大人の世界とは別の社会がありました。
そういう体験からすると、今の子どもたちに求められていることは非常にレベルが高く、その結果として発達障害のある子どもが増加していると思えてなりません。
発達への理解がないと、余裕がなく不適切な対応に
保護者の中には、2、3歳の子どもが言うことを聞かない時に、「わたしのことを嫌っている。だから言うことを聞かない」と考える人がいます。
この保護者には、「2、3歳は自我が芽生えてくる年齢」という知識が、たぶんないのでしょう。「きらわれている」というとらえ方は、一歩間違えば虐待にもつながりかねません。
一方で、子どもの言いなりになる保護者もいます。子どものやりたいようにやらせながら、幸せそうではなく疲れているように見えます。
紹介した保護者たちの姿ですが、おそらく子どもへの愛情はあるのだろうと思います。でも、子どもの発達への無理解があり、気持ちが空回りしているのでしょう。「いっぱいいっぱい」での育児だから、余裕がなく、不適切な対応につながってしまいます。
学ぶべきことを学ぶべき時に
筆者の勤めるクリニックには、発達障害診断名のつく子どもが多数来ています。学業的に見てとても優秀な子どもや青年もいて、ゆくゆくは日本の中枢でリーダー役を果たすのではないかと思わせます。
ではどうしてそういう子どもが来ているのか……。それにはいくつかの理由があると思うようになりました。
発達は連続線の上にあり、段階を追いながら進んでいくと考えられています。例えば2歳台の課題、学ぶべきことを獲得していないと、その課題をずっと引きずっていく可能性があります。その結果、発達障害に見えてしまうのです。
小学生になったらとか、中学生になればという希望的な思いをもちますが、実際には、子どもは学ぶべきことを学習しないと幼いままにとどまりがちです。
人の一生には出会いがあり、転機がやってくることがあります。子どもにも、よい出会いがあり、それがよい転機となることもあります。ただ、そういう偶然ばかりを期待していては、子ども自身の認識が変わらず、社会に適応できなくなってしまうことも考えられます。
そこでまず序章として、今の子どもの「気になる」姿をもとに、子育てにおける10か条をあげてみました。これは、親をはじめとして、子どもの育ちに関わる大人が基本的に心がけるべき要点です。こういう視点をもつことで、子育てへの理解が深まり、結果的に子どもの将来によい影響を与える……そう確信しながら、述べていきます。
振り返りの視点として、お読みいただければ幸いです。
「気になる子」の姿から導く 子育て10か条
親をはじめとした子どもに関わる大人が、「気になる子」の子育てにおいて、心にとめておくべき点をまとめました。
① 安定した毎日を保障する(ぐずぐず、不機嫌な子)
② 「認められたい」気持ちをはぐくむ(大人の評価を求めない子)
③ 決定権を誤解させない(自分の思い通りにしたがる子)
④ 気持ちのコントロール力をつける(気持ちの切り替えがうまくいかない子)
⑤ 「あきらめる」心をはぐくむ(あきらめられない子)
⑥ 集団参加を促す(集団活動が苦手な子)
⑦ myルールからourルールに(約束・ルールを守れない子)
⑧ 「感じ」を克服する力をはぐくむ(自己主張が強すぎる子)
⑨ 取り組みの過程を励ます(頑張ろうとしない子)
⑩ 子育てを楽しむ(感情・感動が薄い…いろいろなことが気にかかる子)
こちらの記事では、上記「子育てにおける10か条」から、以下の3つを抜粋して詳しくご紹介します。
安定した毎日を保障する ← ぐずぐず、不機嫌な子の場合
気になる…
●登園の際、別れる時にぐずる
●午前中に不機嫌なことが多い
●園での活動で、素直に活動に参加できない
●ごろごろしていることがある
●日によって気分にムラがある
子どもは、生理的な状態によって言動が左右されやすいものです。
生活リズムが整い、十分な睡眠と規則的な食事をとると気持ちも安定します。一方で、生活リズムが乱れ不安定になれば、赤ちゃんがぐずるように不機嫌になりがちです。
子どもが不機嫌な時に、親は心理的な原因を探しがちです。
しかし、それよりも生活リズムなどに注目し、その改善を図った方が子どもの状態はよくなることでしょう。
生活リズムを考える時、特に睡眠が子どもの状態に影響するので、寝る時間を決め、子どもに明確に伝えた方がよいでしょう。また、寝る前には、テレビゲームなど神経を刺激するあそびはさせない、寝る時には部屋を暗くし、テレビなどを消し、静かな環境にするなどといったことが望ましいです。
→『0歳~6歳 子どもの社会性の育て方』(Gakken)では、愛着の築き、気持ちの育ち、応答的環境について、「あわせて読みたい」として、さらに詳しい解説を掲載しています。
決定権を誤解させない ← 自分の思い通りにしたがる子の場合
気になる…
●なんでも思い通りにしたがる
●人のものを勝手に使う
●ほかの子どもとの争いが多い
●人に指示や命令をしがち
●自分から折れることができない
子どもは、2歳前後から自分の思い通りにしたいという姿を見せます。
この時に親や周囲の大人と衝突しながら、思い通りになることばかりではないと学ぶ必要があります。
友達とあそんでいる時に、人のおもちゃを勝手に使う子は、それが自分のもので、自由に使えると思っているのでしょう。だから「貸して」と言えず、相手からの「いいよ」の返事を待てません。
何事も自分の思い通りにしたがる子どもは、ほかの子との争い事が起こりやすくなります。また、こういう子どもは大人に対しても、指示や命令をする傾向があり、生意気な子どもに思われたりします。
我が強いというよりも、決定権を誤解しているととらえて、「買うか買わないかを決めるのは親」というように、要求していることについて、だれが決めるかをことばにして教える必要があるでしょう。
決定権を誤解していると、人の意見を聞き入れにくくなり、話し合いをしても、自分から折れることがなかなかできません。社会性が未熟な段階といえるでしょう。
→『0歳~6歳 子どもの社会性の育て方』(Gakken)では、自我の芽生え(思い通りにしたい)、自我の芽生え(他者の発生)について、「あわせて読みたい」として、さらに詳しい解説を掲載しています。
「感じ」を克服する力をはぐくむ ← 自分の思い通りにしたがる子の場合
気になる…
●「ぜったいいやだ」と言い張る
●いやなことはしなくていいと思っている
●「きらい」と言って、やろうとしない
●「ちょっと暑い」など、程度を言えない
●乗り越える体験をしようとしない
「疲れた」「暑い」と感じるのは自分です。ただ、自分の「感じ」を主張しすぎると、周りには不平不満に聞こえ、いやな思いをもたせます。
一方で「感じ方」は、社会性が影響します。子どもは、4歳くらいから自分の「感じ」に程度をつけるようになります。「ちょっと」なら「大丈夫、我慢できる」と思うようになります。感じ方を意識しだしたといえます。
6、7歳になると、「暑いけれど、歩いた」「疲れていたけれど、やれた」というように、自分の「感じ」を乗り越えていくことに誇りをもつようになります。
子どもは一般的に「きらい」とは言わないようです。そのかわりに「きらいかもしれない」「きらいなことがある」とあいまいに表現します。「きらい」をよく使う子どもには「にがて」などに言い換えるよう促し、克服できることを伝えましょう。
→『0歳~6歳 子どもの社会性の育て方』(Gakken)では、気持ちの育ち、生まれる共感、ことばで確認する、について「あわせて読みたい」として、さらに詳しい解説を掲載しています。
成長著しい幼児期に子育てに見通しをもてるように
5歳の子どもと3歳の子どもは、対等にはあそべません。関わったとしても、5歳が3歳の世話をするのがメインとなります。3歳の子どもは、5歳の子どもたちのあそびのルールがわかりません。結果的に、5歳の子どもたちのあそびを邪魔することになったりします。
以前、新幹線に乗っていた時、後ろの座席の保護者が、自分の子どもがちゃんと座らないからと、聞くに堪えないようなことばを使い怒っていました。怒られている子どもの年齢は、4、5歳でした。
本書の目的は、主に幼児期を中心として、子どもの様々な領域での成長の姿を示すことです。
子どもの成長の姿を理解しないと、子育てに「見通し」がもてません。そのために、子どもに対して自分勝手な解釈や、自己流の関わり方になってしまいます。子どもの成長には、年齢や時期に応じた段階があります。その段階に合わせた関わり方をすることで、健やかな発達が期待できます。
そして、もしもこの本が、子育て中の親を中心とした大人の、子どもについての理解に役立つことがあれば幸いです。
0歳~6歳 子どもの社会性の育て方 主体的で仲間と協力できる子に
★★ママ・パパが絶大な信頼を寄せる保育士てぃ先生推薦!★★
――なぜ子どもは言うことを聞いてくれないの?
それは、【子どもの心が成長している証】です。
3歳と5歳では、伝わる言葉が全く違います。
発達心理の専門家が【子どもの社会性】の観点から、0歳~6歳の心の発達をわかりやすく解説。すぐに実践できる【子どもとのコミュニケーションのコツ】を伝授します。
子どもを知れば、子育ての悩みは消える!――てぃ先生
▼こんな【子育てのお悩み】を持つ方におすすめ
・うちの子、友達がいない! だいじょうぶかな…
・いつもぐずぐずして不機嫌
・あきらめられずに泣き騒ぐ
・嫌なことはしなくていいと思っている
・自分のやりたいことができないと怒る
・「ぜったいイヤだ!」と言い張る
子どもの一見「困った姿」ですが、「●歳になると、~がわかるようになる、できるようになる」という発達過程を示しながら、どんな言葉や対応をしたらいいかを解説しています。
※発達過程はあくまでも目安です。発達には個人差があります。
◆こんなときどうする?◆買い物に行って、欲しいおもちゃがなかった時に泣きわめく子
その場をなんとか納めたい気持ちからしかるのではなく、3歳くらいなら「残念だね」「しかたがないね」と「あきらめる」ことを伝えて気持ちをコントロールできるように促していきましょう。また、4歳頃には「~かもしれない」ということばがわかってくるので、事前に「ほしいおもちゃがないかもしれないね」と伝えておくとよいでしょう。
●【子どもの社会性】が育っていないと、どうなる?
「相手を拒絶し、認めない、受け入れない」「決まった人以外と接するのが苦手」「断れず、言いなりになってしまう」「何事にも積極的になれない」「人に頼ることができない」「気持ちをうまく表現できず、誤解され、あげく、嫌われる」…といったことにつながります。相手を尊重しつつ、自分で考え、決定し、行動できる子に育てるためにはどうしたらいいか、大人ができることを教えます。
●【発達過程表】で子どもの社会性の発達がよくわかる
2歳頃、「自分で」という意識をもつ → 3歳頃、順番を意識し始める → 4歳頃、人の内面(感情)に気づき始める → 5歳頃、自他の能力の違いに気づく ……年齢によってどんな行動に「自我の発達」が表れているのか、【発達過程表】にまとめました。
「自我の発達」のほか、「愛着の形成」「感情の育ちと共感」「自立に向けて」「ことばの育ち」の観点で【子どもの心の仕組み】を解説しています。
●大人から見ると「気になる」子どもの姿から、親が心がけるべき【子育て10か条】をしっかり解説!
※本書は、保育者向け『0歳~6歳 子どもの社会性の発達と保育の本』(2015年発売)を保護者向けに調整・一部加筆したものです。