「トンビが鷹を生む」って実際のところ本当?【眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話】
「トンビが鷹を生む」は本当?
ポリジーンがバリエーションを生む
前のページで、親から子に引き継がれる遺伝のバリエーションは無限であることを説明しました。では、平凡な親から優秀な子が生まれる「トンビが鷹を生む」はありうるのでしょうか。
遺伝的な形質は単一の遺伝子だけで決まることは少なく、たいていは多数の遺伝子が関わっています。このような遺伝を「ポリジーン」と呼びます。この考え方に沿って、次のようなシミュレーションをしてみましょう。
まず、5対の染色体にそれぞれ対立遺伝子があり、それらの組み合わせで決まる形質があると仮定します。それぞれの遺伝の効果は1点か0点だけとすると、左ページの図のような合計5点となる組み合わせを持つ両親の子は最小で2点、最大で8点になります。両親が平均的でも著しく優秀な子や平均よりも劣る子が生まれる可能性があることがわかるでしょう。このような、効果の足し合わせで遺伝的素質が決まるタイプの遺伝を「相加的遺伝」といいます。
実際、平均的な身長の両親から生まれてくる子どもの身長が遺伝的にどれくらい散らばるか算出したところ、社会全体の身長の分布とほぼ同じでした(左ページのグラフ参照)。つまり、同じ両親から多様な遺伝的素質を持つ子どもが生まれる可能性があり、「トンビが鷹を生む」も、その逆も普通に起きることなのです。
「トンビが鷹を生む」のメカニズム
5対10組の対立遺伝子の組み合わせで決まる形質があり、それぞれの効果が1点か0点と仮定します。この場合、父親と母親からそれぞれ0点か1点が子に受け継がれて対になるので、たとえば父親の5対のうちのひとつが「0、1」で母親が「1、0」だとすると、子は最小で「0、0」、最大で「1、1」となります。したがって、父親と母親の5対の遺伝型の組み合わせが 右の図のようであった場合、両親ともに平均的な5点でも最大で8点、最小で2点の子がそれぞれ約15%の確率で生まれうるのです。
身長ひとつとっても家庭内でばらつく
平均的な身長を持つ一組の父母から生まれる子どもの身長が、どれくらい遺伝的に散らばるかを算出し、集団全体の散らばりと比較したグラフです。一組の両親から生まれる子どもの身長のばらつき方は、社会全体とほぼ変わらないことがわかるでしょう。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話』著:安藤 寿康