宮崎県小林市のダム湖で<ボタンウキクサ>が問題に 東京ドーム17個分の水面を覆う?
宮崎県にあるダム湖で、「ボタンウキクサ」と呼ばれる外来種の植物が水面を覆い尽くしていることが問題となっています。
本種は南アフリカを原産とするサトイモ科の植物で、非常に繁殖力が高いことが特徴。大量に繁茂して、在来種に悪影響を与える外来種です。
宮崎県は、大量に繁茂したボタンウキクサの撤去作業を行っています。
ボタンウキクサとは
ボタンウキクサ(Pistia stratiotes)は、南アフリカを原産とする多年生の浮葉植物です。
本種は扇状で肉厚の葉を持ち、この葉の形が牡丹の花に似ることがボタンウキクサという名の由来になっています。なお、本種は英名で「ウォーターレタス」と呼びますが、食べることはできません。
ボタンウキクサの移入は1920年代 観賞用が逸出し野生化
宮崎県小林市野尻町のダム湖で大量に繁茂し問題となっているボタンウキクサですが、もとは1920年代に観賞用として小笠原諸島と沖縄県に導入されていました。
しかし、観賞用として導入されたものが、逸出して野生化。1990年代には西日本、南日本でボタンウキクサの異常繁茂が問題視されるようになったのです。
現在、国内では関東~北陸以西の各地で確認されており、日本外のアジアやオーストラリア、南北アメリカにも移入されています。
一方、かつては国内繁殖も行われており、ホームセンターで大量に販売されていたようです。
ボタンウキクサは特定外来生物
そんなボタンウキクサですが、繁殖力が非常に高いことが特徴です。
同種は水面を覆いつくし光を遮ってしまうことにより、在来種の生育場所を奪います。また、人間の生活圏においては、繁殖したボタンウキクサによって水質悪化や船の往来ができなくなるなどの悪影響が懸念されています。
そのため、現在は特定外来生物に指定されているほか、日本の侵略的外来種ワースト100にも選定。かつてはホームセンターでも売られていたボタンウキクサですが、現在ではボタンウキクサを販売することはできません。
約80ヘクタールにわたりボタンウキクサが大繁殖
日本各地で確認されているボタンウキクサですが、宮崎県小林市野尻町の岩瀬ダムの下にある湖ではボタンウキクサが大量に繁茂。2025年1月現在、約80ヘクタール(800000平方メートル)にわたってボタンウキクサに覆われています。
岩瀬ダムでは2010年に初めてボタンウキクサの生息を確認し、2023年には繁殖したものを県が撤去。1ヘクタールまで減らしましたが、その後2年余りで東京ドーム17個分に相当する約80ヘクタールにまで拡大し、ダム湖を覆いつくす状況になっています。
2億円以上かけて撤去作業
本種の繁茂に伴いダムの管理に支障が出ていることから、県は今月から2億円以上かけて撤去作業を開始。流木などを撤去する専用の船を2隻使い、ボタンウキクサの撤去を行っています。
しかし、本種は特定外来生物であるが故に、生きたままの移動が法律で禁止されており、回収したボタンウキクサは一度、仮置き場に運び完全に枯らせる必要があるようです。
ボタンウキクサがどれくらいで枯れるのか不透明な部分もあるといい、懸念点となっています。
撤去作業は春先まで続く見込み
現在、ダム湖のボタンウキクサは葉が枯れているものの根は元気であり、春になると繁殖が再開するそうです。
また、ボタンウキクサは根や葉が残っていると、そこから栄養繁殖が可能なため完全な除去が難しいといいます。
宮崎県の撤去作業は春先まで続く見込みです。
(サカナト編集部)