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【高知家の後継者募集】四国山地の大自然に広がる牧場を引き継ぐ 高知県大豊町「ワタナベファーム」

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【高知家の後継者募集】四国山地の大自然に広がる牧場を引き継ぐ 高知県大豊町「ワタナベファーム」

心と体が、目の前に広がる大自然の光景に吸い込まれてしまう――。そんな不思議な感覚に陥ってしまう。

四国山地の真ん中、梶ヶ森の中腹に広がる「ワタナベファーム」の牧草地での体験だ。

草の新緑と森の木々が織りなす緑のグラデーションの中を、放牧された牛たちがゆったりと歩む。

遠くの山々にはほんのりと霞がかかり、見上げる空は限りなく青く深い。

まるでアルプス山脈の国に迷い込んだ錯覚にとらわれる。

「澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んで、森の美しさや雲の近さ、空の深さを感じ取って欲しい。この場所は特別な空間なんです。ここで暮らせば心が豊かになることは間違いない」

父の代から、この地で酪農を営む渡辺則夫さん(75)が赤銅色の笑顔で微笑む。

渡辺さんがここで牧場を始めたのは今から40年ほど前、三十代の時だ。

標高約800mに広がる荒地を、父の成甲(しげる)さんと一緒に開拓して、広さ約7ヘクタールの牧場に造りあげた。

スタートは国の補助事業を導入したが、その後は自ら木を切り倒し、切り株を掘り起こし、道をつけるなど手塩にかけて造り上げた。

「スイスのような光景をここに創りたかったんです」と照れながら話す。

この丹精込めた手造り牧場が、今回の事業承継案件だ。

渡辺さんは、生きがいを感じながら牧場経営を40年以上も続けてきたが、70歳を超えたころから別の夢が膨らんできた。

それはWWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farmsの略=ウーフ)の活動を通じて芽生えた。

ウーフとは、有機農場を核とするホストと、そこで手伝いたい・学びたいと思っている人とをつなぐサービスで、お金のやり取りではなく「食事・宿泊場所」と「力」と「知識・経験」の交換で成立する仕組みだ。

このホストファミリーの活動を続けて来たことで、国内をはじめ世界各国のたくさんの人々との繋がりができた。

「全国を旅しながら、知り合った人々を含めて色々な方と触れ合いたい。農業に携わる人が何に興味があって、どんな考え方をしているのか、多様な生き方に出会ってみたいのです。そのために、牧場を承継してくれる人を探したい」

年齢も七十代半ばになった渡辺さんに残された時間はそんなに多くはない。このため、牧場経営に熱意ある人に譲りたいと、全国に向けて積極的に情報発信しているわけだ。

ファームの現状を見てみよう。

現在飼育しているのは、繁殖牛8頭。

少し前まではジャージー牛を飼って、チーズの製造販売免許を取得、3種類のチーズの販売も行っていた。

ただ、経営規模を徐々に縮小する過程でジャージー牛は手放したため、今はチーズの販売はしていない。

また、有機栽培のトマトも手掛ける。雨よけ用のハウスが20アールほどあり、冷涼な気候を利用して、ミニトマトや中玉など3種類のトマトを栽培。

JA系の販売所に出している。牛の糞尿を堆肥化して土づくりから行っている「循環農業」のため、トマト一粒の旨味は別格。

露地のトマトが不足気味になる夏場に最盛期を迎えることも手伝って、貴重な販売品目になっているという。

牧場は標高1400mの県立自然公園「梶ヶ森」に通じる車道途中に位置している。引継ぎを希望しているのは、放牧用地はもちろん飼料畑や牛舎、管理棟、野菜栽培用の畑やハウス施設、チーズの製造・保管施設などだ。

「売却はお互いのハードルが高いので、当初は年間5万円ほどで賃貸し、牧場が軌道に乗るようだったら、売却するという形式がいいのではないか」と提案している。

引継ぎ条件は、「この地で長い間牧場を続けてくれること」。

精魂込めて創り上げて来た牧場が荒れて山に還るのは何としても避けたいという思いが強いからだ。

「ここでお金儲けはできません。田舎の山で人生を豊かに過ごしたいという人に来てもらいたい。ここで暮らすと人生観が変わるはず」と渡辺さんは魅力を語る。

標高800mからの眺望は、下界とは別世界だ。

山の稜線に沈みゆく夕日を見送った後、夜の帳に身を委ねる。

爽やかな風が肌寒く感じるころには、頭上には星が輝き始め、無数の淡い光が降りそそぐ。

邪魔する人工の光は全くない。

このまま、眠ってしまうと、目が覚めたら、異次元の世界に転生しているかもしれない。

この大自然の中で牛を育て、野菜を収穫する暮らしと、都市部に住む私たちの生活は比べる術がない。

どちらの生活がより幸せで充実しているのか。それを決める尺度は、それぞれの人の心の中にある。

合同会社ワタナベファーム

経営は上手く行っているのに、後継者がいないために廃業せざるを得ない――そんな悩みを持つ企業が全国的に激増し、大きな社会問題になっている。高齢化先進県である高知県は全国に輪をかけて、事業承継の課題が山積している。「県内での事業承継を少しでも増やしたい」。このコーナーは、事業を譲りたい人と受け継ぎたい人を繋ぐ連載です。

高知県事業承継・引継ぎ支援センター

電話:088-802-6002

メール:kochi-center@kochi-hikitsugi.go.jp 

担当:野本 横山

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