食の未来を凍らせない!~日本の冷凍最前線~
昨日の毎日新聞の夕刊で「冷凍おにぎり」の話題が取り上げられていましたが、実は最近、「冷凍寿司」とか「冷凍フルーツ」がSNSでも話題になっています。最近の冷凍食品は「本当に冷凍なの!?」と思ってしまうほどのクオリティで、「冷凍=妥協」というイメージがいま大きく変わりつつあるんです。
最新の冷凍技術、どんなもの?
どんな最新技術が生まれているのか、まずは「細胞を壊さない冷凍技術」を可能にしたデイブレイク株式会社 西日本エリアマネージャーの飯島崇斗さんのお話です。
デイブレイク株式会社 西日本エリアマネージャー 飯島崇斗さん
弊社のアートロックフリーザー、冷たい空気を食材に当てて冷やし込んで冷凍するという原理になっています。冷たい空気で食材を冷やし込む機械ってこれまでもあったんですけれども、食材に対する風の当て方っていうのが違いまして、よりソフトなんですね。優しいソフトな冷気を大量に発生させて食材全方向にあてて冷やし込むという原理になってまして、ムラっていうのも軽減できて、品質だけではなくて、冷凍時間だとか生産効率も上げることができているというところも特徴ですね。食材包装せずに冷凍ができるんですけれども、その際に表面の乾燥とか、変色といったダメージっていうのはほとんどないんですね。かつ盛り付けた状態を立体的にそのまま冷凍できるので、非常に見栄え的にもいいというところで、作り手の思いみたいなものもそのまま届けられたり、というところが今までの技術とのちょっと違う点になりますね。
アートロックフリーザーでそのまま冷凍したお寿司:デイブレイク株式会社提供
デイブレイクはもともとメーカーではなく冷凍機を比較販売する代理店をやっていたそうで、その中で培った食材の研究、冷凍技術へのノウハウを今の技術開発に活かしているんだそうです!
包装せずに立体的なまま冷凍できるというのも、新しいですよね!デイブレイクの冷凍機器「アートロックフリーザー」は現在、スーパーや工場で導入が進んでいて、お刺身の盛り合わせ、そういう立体的な料理を提供する現場でも重宝されているという事で・・・
アートロックフリーザー:デイブレイク株式会社提供
「最新冷凍技術」を導入した現場の声
アートロックフリーザーを導入しているスーパーに、どんな食品を「冷凍」しているのか聞いてきました。株式会社ダイエー 西近畿事業部 事業部長の小林秀峰さんのお話です。
株式会社ダイエー 西近畿事業部 事業部長 小林秀峰さん
生鮮食料品をより高鮮度でお客様に届けたいということがまず一つ。あとは社会問題になっています、フードロスの削減という視点ですね。我々のお惣菜というのは基本的に店舗に並べている常温の商品というのは当日に全て売り切ってしまわないといけない商品なんです。ところが冷凍の商品というのは非常に長い賞味期限を持っております。その関係でいつでも売り場に陳列することができますので、例えば閉店間際にお惣菜を買いにきたお客様でもですね、今でしたら商品がもう売り切ってしまって、ないということがあるんですけども、冷凍の場合でしたらどの時間帯にお客様が来ていただいても商品の提供が可能であるというそういうメリットがやっぱり大きく出ております、商売の現実としては。
これはまさにお惣菜のフードロスに繋がりますよね。ダイエーでは、これらの冷凍製品(その数なんと130アイテム!)を最適に解凍して一番美味しい状態で食べられるように、各製品それぞれに解凍方法が載ったQRコードを記載する工夫をされていました。
ダイエーではお惣菜の他にも、揚げ菓子のチュロスを急速冷凍して販売していて、自宅で揚げたてのサクサク感が味わえると人気なようです!この最新冷凍技術を導入したダイエー店舗は、近畿で25店舗、関東圏では鴨井店、武蔵小杉店、横浜西口店、向ヶ丘店、など9店舗、合計34店舗で展開しています。
冷蔵でもない、冷凍でもない、新しい冷却技術!
さらに最新の冷凍技術を調べてみると他にも、冷凍庫でも冷蔵庫でもない全く新しい「ゼロ庫」という保存方法もあるようなんです。凍る一歩手前の0度で冷却をすることで、細胞を壊さずにフレッシュな状態を維持する技術なんですが、この技術を生み出したZEROCO株式会社 代表取締役社長 楠本修二郎さんに伺いました。
ZEROCOの渋谷ラボ:ZEROCO株式会社提供
ZEROCO株式会社 代表取締役社長 楠本修二郎さん
いわゆる鮮度保持という概念は、獲れたてからいかに劣化させないで長く持たせるかという概念だと思うんですけど、ゼロコに入れていると、ほとんど全ての食材がある一定期間美味しくなっていきます。例えば野菜、果物ですと、凍っちゃいけないと思って、自分たちでエネルギーを出して美味しくなっていくんですね。 2つ目は「食のレコーディング」ができる。 調理したものを一度ゼロコに予備冷却装置として使っていただいて、普通の冷凍庫で大丈夫です。そういう一般家庭用のすごく簡単なオペレーションで解凍するだけで出来立てが復元する。ある方は日本の今の食文化は「イタリア・ルネッサンス以来の人類の功績だ。」という人もいるほどです。ならば僕らが先人の人達から受け継いできた食文化というものを、僕らの責任は今度アセット(方法)としてどう引き継いでいくのか、考えなきゃいけないじゃないですか。(日本の)食産業が世界に誇れるものにして、それがちゃんと稼げる産業にして、そういった社会を作れたらいいなっていうのがゼロコの想いですね。
時間とともに美味しくなる冷却技術っていうのも面白いですよね。
ZEROCOで保存したイチゴの比較:ZEROCO株式会社提供
オンエアでは実際に、森本さんと遠藤さんにゼロコで冷却されたフルーツを試食していただきました!冷凍庫から出したばかりでもカチカチに凍らず、シャリっとしたような不思議な食感なんです。私も実際にゼロコで8か月前に保存された梨を試食したのですが、シャキシャキでみずみずしい・・・!まさに今獲れたような新鮮さでした。
写真:梨の新鮮さにビックリの糸山
併せて2か月半前の牛乳も。2か月半前と聞くとドキリとしますが、見た目もそのままで香りも全くそのまま。飲んでみると少しすっきりとした味わいで飲みやすいような感じもしました!
このゼロコ技術を使って、食に関わる全ての人の労働環境改善、そして食産業全体がワンチームになって日本の食文化を盛り上げていくような仕組みづくりをしていきたいと楠本さんは話していました。
最先端の冷凍・冷却技術が、これからの食のあり方をどう変えていくのか。ますます注目ですね!
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:糸山仁恵)