ジャングリア沖縄は「変化の“起点”は作れる」本質は「“売れる仕組み”を作ること」森岡毅氏”おきなわブランド戦略”基調講演
沖縄の魅力を価値のある存在として消費者に浸透させ、県内外の多くの人たちに選ばれるための「おきなわブランド戦略」についてのトークイベント(沖縄県商工労働部グローバルマーケット戦略課主催)が、2025年3月に那覇市のダブルツリーbyヒルトン那覇首里城で開催された。 基調講演では、2025年7月25日にオープン予定の「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」を手掛ける株式会社刀代表取締役CEOの森岡毅氏が登壇。 「沖縄で挑戦する理由」と題して、自身の事業やマーケティングの持論、そしてJUNGLIAを展開していきながら沖縄で成し遂げたいことなどについて、1時間にわたって講演した。
テーマパークで“変化の起点”をつくる
冒頭、森岡氏は家族旅行で沖縄を訪れた際のエピソードトークで緩やかな雰囲気を作りつつ、沖縄の人の暖かさについて触れながら「今日話したいのは、沖縄はもっと良くなるということです。テーマパークひとつでガラリと変化が作れるとは考えていませんが、変化の“起点”は作れると思っています」と言い切った。 またマーケティングについて、その本質を「“売れる仕組み”を作ること」であると森岡氏は定義づけた。 その仕組みについて「いわゆる天才的な閃きよりも、条件を整えて環境を作り、着実な結果を出す確率を上げていく“理科の実験”のように考えています」という解釈を示した上で、「そこで『ブランド』が大きな役割を果たします」と強調した。 「消費者の頭の中に作られるのが『ブランド』で、その仕組みを作っていく活動が『ブランディング』です。消費者は何かを買う時、常に頭の中で複数の候補からランダムに意思決定を行っています。その選択の中で選ばれるために、ブランドが関わってくる。そのためにさまざまなアプローチがありますが、消費者の相対的な好意の度合い(=プレファレンス、好み)の伸びしろを伸ばしていくことが最も効率の良いアプローチだと考えています」
ポイントは「高度観光人材」「インフラ整備」「新たな投資」
沖縄に関しては「県内で頑張っている事業者の皆さんが同じ方向を見てベクトルを合わせれば、『おきなわブランド』が出来上がりやすくなりますし、束になることで沖縄の魅力は増します」と切り出し、JUNGLIAを開業・運営していく上でも超えていかなければならない「ティッピング・ポイント」(※)を示した。 (※Tipping Point:それまで小さく変化していた状態から、急激に変化する時点。転換点) まずは「高度観光人材の育成と排出」。 沖縄のリーディング産業として位置付けられる観光業が、低賃金かつ重労働という良くないイメージをまとっている現状を指摘しつつ「沖縄の観光業がどうあるべきかを考えなければならないし、沖縄という地域にある特徴を価値に変えていかなければならないんです」と説明。 大学機関と連携しながら、JUNGLIAを日本の中での観光学を学ぶための拠点とする考えを述べた。 次いで話題は「インフラ整備」に及んだ。 「全国47都道府県の中で唯一、沖縄だけが鉄軌道の恩恵に預かっていません」と森岡氏。 JUNGLIA開業に際して、交通渋滞への懸念が度々示されている現状にも触れつつ「(開業前の)今も渋滞は起こっていて、沖縄の皆さんは不便な思いをしています。南城市のコストコさんの状況は心臓が止まりそうになりながら見てました(笑)」と、ひと笑いとった。 その上で「1人1台運転しないといけないという、今のような構造はいつか変えるべきなんです」と強調。渋滞の問題を乗り越えるために、テーマパーク事業が鉄軌道や高速道路といった交通インフラ事業につながることで「北部にも人が流れ、北部での滞在を楽しめるようになる」と話し、次の論点へとつなげた。 それが「新たな投資を呼び込む変化の起点」だ。 先に述べたように、北部への人の流れを作り出すことができれば、「人がどんどん増えてホテルや商業施設も増え、雇用が生まれる。現在南に集中し過ぎている人が分散して、バランスをとれるようになります」と森岡氏は展望を語る。 そのためにも、北部にテーマパークという存在があれば、エンタメ投資も含めたさまざまな投資・融資を誘発することになり、経済が回っていくと解説した。
「沖縄には、沖縄の人たちが思っているよりもすごい力がある」
「沖縄の旅を最高にする、ということを私たちは言ってきていますが、これはもちろん沖縄県民のみなさんにとってもめちゃくちゃ面白いものになっています。沖縄の皆さんにはその点を理解していただきたいです」 森岡氏は話の中で、テーマパーク事業やジャングリアの挑戦について、沖縄の地元の人たちへの理解を何度も訴えた。また、沖縄の長所については「沖縄は、沖縄にいる人たちが思っているよりもものすごい力を持っています。一番素晴らしいのはソフトパワーで、沖縄の人たちの温かさ、独特のゆるやかな空気と時間。こうした良さを、沖縄ブランド繋げていけばいいと考えています」と述べた。 さらに北部地域のブランディングは「できるだけプレミアムな観光地であるために、自然環境を壊さずに生かした形ですべきです」と言い、JUNGLIAのテーマパーク事業の中で環境アセスメントに配慮しながら、以前よりも木々を3〜4万本増やしたことにも言及し、講演を終えた。