日本企業が今、タイへ向かう理由 中国の台頭と“現地発”戦略
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先週月曜の日経新聞で、「中国で生まれたブランドが若い世代を中心に受け入れられてきている」という記事がありました。この流れは、家電やスマホだけでなく、ファッションやコスメの分野にも及んでいるようです。
「SHEIN」「Temu」…中国系のネットショップを活用する若者
では実際にどんなものを使っているのか、渋谷で若者に聞いてみました。
「SHEIN」で服とかアクセサリー買ってます。GUとか結構使ってたんですけど、クーポンとかも送られてきて安く買えるんで活用してます。
「SHEIN」で、自分でセルフネイル用のパーツとか、ダンスの服とかバッグとかいろいろ。百均とかでも揃えるけど、種類が豊富なのと、かわいいのと、流行りのものがいっぱいある。
全部「SHEIN」です私。服も今着てる服と靴、全部「SHEIN」。リップは多分「Temu」かな。発色とかめっちゃいい。最初心配してたけど、意外とスキンケア系もめっちゃ売ってて、中国っぽい。中国の人がメイクで使ってるような感じの色。あとリップオイルも買いました。匂いもよし、全部よし!ただめっちゃベトベトなの好きじゃなくて使ってないです。でも安いからOK!
<渋谷で聞きました>
「SHEIN(シーイン)」や、「Temu(テム)」で買っていますと言う声がありましたが、どちらも中国のネットショップで、服やアクセサリーやコスメの格安サイト。世界的にみても「Temu」のユーザー数は、なんとアマゾンに次ぐ世界2位。ジーパンやワンピースが1000円代と、国内で比較的安いGUなどと比べても破格のものがそろっています。
さらに、リップ(口紅)を買っているという人もいましたが、数百円で買える化粧品なども多く売られるようになっていて、SNSのティックトックでの動画を参考に買っているという人も少なくありませんでした。
<中国発のオンラインショッピングサイトで、格安の商品を豊富に取り揃えているプラットフォーム「Temu」>
「バズ」を制する者が、世界を制す
ということで、ファッションだけでなくコスメの分野にも中国製品が広がりを見せています。「安かろう、悪かろう」ととらえられてきた中国製品が、なぜここまで日本の若者に受け入れられてきているのか?中国経済に詳しいジャーナリストで、千葉大学客員教授の高口 康太さんに伺いました。
千葉大学客員教授 高口 康太さん
「バズって一気に売れる商品を、いち早く見つけて売ろう」というのが中国で今中心になっているビジネスのスタイルなんですけれども。アパレルなんかだと本当に数日とかで同じものが作れるっていう形なんですね。なので、100件とか200件とか小さい単位で作ってみて、どれがバズるだろうっていうのを探していって、バズったものだけ追加でドンと大量生産する。いわば実際の販売する場でマーケティングをやっている。
中国コスメはですね、「中国のコスメだから良くない」という印象っていうのはだんだんなくなってきている、若い人たちの間では。さらにその中からですね、レベルアップさせているメーカーというのもいくつか出てきて、その中の代表格っていうのがですね「フローラシス」というメーカー。こちらGINZA SIXにもお店を開きましたけれども、非常に衝撃というか、じっくりと腰を据えてでも、日本で展開していこうというようなメーカーが出てきている。
「花西子Florasis(フローラシス)」というブランドが先月初めて海外にお店を出したんですが、その場所が、東京のGINZA SIXです。さらに、「PERFECT DIARY(パーフェクトダイアリー)」や「ZEESEA(ズーシー)」など、数々の中国コスメが上陸。高いデザイン性はもちろん、品質面でも優れているブランドだそうです。
また、中国では「チャイボーグメイク」というスタイルが流行しました。これは「中国」と「サイボーグ」を
合わせた言葉で、透明感のあるメイクのこと。日本でもSNSで人気になりました。
ただ一方で、中国コスメ全体を見ると、「粗悪品が届く」「発がん性物質が検出された」「デザインが他のブランドに似ている」などの問題が指摘されたこともあるんですが、それでも、中国のコスメは日本でどんどん人気になり、
貿易のデータでは、一時、輸入額が20%も増えたことがあったそうです。
コーセー「タイ発、世界へ」
一方で、こうした状況の中、日本のメーカーも変化を迫られています。アジア発のブランドが日本の若者にも定着する中で、「現地ブランド」を活かす戦略を取る企業も。老舗メーカー「コーセー」の取り組みについて、経営企画部の築山 文彦さん。
「コーセー」経営企画部 築山 文彦さん。
今回買収したのが、タイのピューリ社が持つ「パンピューリ」というブランドになります。お化粧品なんですけれども、パフュームというか香りの部分のものであったりとか、ホームフレグランス、入浴剤、ハンドクリームとかそういったラインナップ。
今まで「メイドインジャパン」といった形で、日本で作ったものを商品を世界に広げていくっていうような戦略をとってたんですけども、このパンピューリにおいてもSNSでバズってですね、そういう動画が中国とかで流行ると、その店員さんがインフルエンサーみたいになって、その店員さんめがけてやってくるみたいなところもありますので、現地から世界に広がっていくというのがとても重要。我々グローバルサウス(ASEAN、インド)といったところに注力をしていて、「タイ企業で、タイから発信する」っていう観点で買収したと。
コーセーにとっては10年ぶりの買収で、昨年末、タイのブランド「ピューリ社」を選びました(日本でも、新宿伊勢丹などで購入できます)。中国のコスメ市場は競争がどんどん激しくなっていて、日本のブランドも新しいやり方が必要になっている中で、日本から輸出するのではなく、すでに人気のある現地ブランドを活かして広げていくことにしたようです。
「メイドインジャパン」だけでは売れにくくなってきた今、世界の流れをどう取り入れるか、日本ブランドの新しい形が問われています。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材:田中ひとみ)