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僕がめんどくさいから行きたくないだけじゃなくてね、家族にも行ってほしくないんですよ。大阪万博。

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僕がめんどくさいから行きたくないだけじゃなくてね、家族にも行ってほしくないんですよ。大阪万博。

どうもー、ズイショですー、よろしくお願いしますー。

あのー、妻と小学2年生の息子と暮らす大阪市民なんですけど。

これ、もうちょっと逃げ切るの難しいな、大阪万博!


まず最初に勘違いしてほしくないんですけど、これは政治的な話では全然ないんですよ。いやもちろん別に大阪府を拠点に活動している某政党に思うところが全くないわけではないですよ、いち市民として。ただ某政党が思想的に相容れないから自分の政治信条的に行きたくないとかそういう「これは闘争だ!絶対に行ってたまるか!」みたいな話では全然ないんですよ。そこは誤解しないでいただきたい。


俺はただただ純粋に、複合コピー機の裏表を間違えて取引先に白紙のFAXを100枚送っちゃうような同僚の自動車の助手席には絶対に乗りたくないのと同じノリで万博行きたくないだけなんですよ。パソコンが突然動かなくなったんだけどどうなってるの?って情シス呼んで結局コンセント抜けてただけだったみたいなことを半年に一回繰り返すような上司と一緒に出張行くのは絶対避けたいのと同じノリで万博行きたくないんです、僕は。イソジンで記者会見を開くようなやつらが音頭を取って毎日何万人を捌こうとするイベントにただただ行きたくない。イソジンって言っちゃったら某政党って濁してた意味がなくなっちゃうけど、もともとねえよそんな意味!みんなわかってるに決まってんだろがよ!


別に万博行ったら命が取られるとはそりゃ全然思わないけどね、万が一なんて言い出したらそれこそきりがないし。でも命は取られないにしてもどんなトラブルに出くわしてどんな嫌な思いをするかわかったもんじゃないわけで、どうしようもないトラブルなら別にいいけど「そもそもなんでこんなことなっちゃってるの・・・」ってトラブルかもしれないし、一番嫌なのはそのときに誰かに言われるとかじゃなくて俺が俺自身に対して思うよね、「そもそもこいつらにまともな運営能力があるわけないのはわかりきってたのにわざわざ足を運んでトラブルに巻き込まれてるお前も間抜けだよね」って。


割とこういうリスクは避けたがる性格の自覚はあるんですよね。特にこういう「言わんこっちゃない」的なトラブルは避けたい。避けられないトラブルなら仕方ないというかむしろ楽しんで乗り越えられるタイプなんですけど、「大丈夫っしょ」と甘く見積もって痛い目を見るっていうのが一番堪えるんですよ、僕の性格的に。もちろんリスクをいっさい恐れてたら何もできないんでね、そこは変に臆病ってわけじゃないですよ。飛行機墜落したら怖いから飛行機乗らないなんて言わないですし、海外旅行だってある程度みんな危険を承知でそれでも行きたいから行ってるんだろうので何の文句もないし僕自身も必要とあらば行く(必要を感じないので人生で一回しか海外旅行したことないけど)。ただ、「日本の安全な環境下で世界のカルチャーに触れられるのが大きな魅力」とか謳う万博にしては、少なくともそこまでめちゃめちゃ安心な気持ちで行けねえしそこまでして見に行っておもろいもんなのかも俺にはよくわからんし・・・ってのが僕の正直な気持ちなんですよ。


ただね、大阪市民やっぱどうも逃げ切るのむずいんですよ。むずかしい。

息子の通う小学校は、何年生より上は遠足で大阪万博行きましょうみたいな流れになってるらしくて、とりあえず頭数全然足りてなさそうな教師のアテンドのもと集団で行くことは避けられたのでホッと一息。


僕がめんどくさいから行きたくないだけじゃなくてね、家族にも行ってほしくないんですよ。なんかこう自分のなかで「そこまでして行かんでええやろそんなん」って思ってるものに家族がわざわざ出向いて、そこでなんかトラブルが発生したときに純度100%で家族に寄り添って一緒に怒ったり悲しんだりできるかちょっと自信なくないですか?少なくとも「やっぱ止めときゃよかった」っていう自責の念は生まれるじゃないですか、そういうのが紛れるような選択肢はできる限り取りたくないんですよね。そういうとき後悔しないようにいつも主体的にリスクを引き受けながら決断したいし、きっと後悔しちゃう選択であるならこの万博の話がそうであるように些細なリスクではたからみて馬鹿馬鹿しかったとしても引き受けたくない、みたいなそういう感覚。「納得」の話だと言ってもいいかもしれない。


しかし遠足を回避したとしてもね、逃げ切るのむずいんすよ。まず、低学年にも万博の無料チケットは配りよるんですあいつら。ほんでね、息子も「クラスの◯◯くんがこの前の日曜に万博行ったらしくて」とか言うてくるわけですよ。SNSでもそれなりにアレが面白かったコレが面白かったと賑やかなので嫁も浮かれてきたのか僕の基本的に全然行きたくないスタンスを承知のうえで「息子くんも行きたがってそうだし、ね?」みたいなことを言うようになってきた。


まぁ仕方ないんですよ、二人とももともと外国の文化とか本とか映像とかで学ぶの好きだから。息子なんか赤子の頃から英語やってるのに加えてなんか最近は自主的にフランス語まで勉強してて、196カ国の国旗見て国名当てさせたら正答率たぶん90%くらい行く。電車で1時間かからないところで万博やってるのに彼が行かないことの方がよっぽど意味わからないんですよ。ただ俺は行きたくないし行かせたくもない、「俺は行きたくないから二人で勝手に行け」という話ではなくて、家族も我が身として考えたうえで俺が取りたいリスク取りたくないリスクの問題なわけですから。ただこのまま「俺はなんとしても行きたくないんや!」と突っぱね続けるにしても万博ってアレ10月くらいまでやるんでしょ?ずっと万博行きたくないストライキを家庭内で孤軍奮闘半年くらい続けるのもしんどいし、どうせ行かないまま終わったら終わったでテレビとかで万博の話するたびに「あー行きたかったなー」って向こう十年二十年言うでしょ、俺が死ぬまで言うし、俺が死んだときの戒名も大阪万博断固拒否居士とかにするんでしょ!どうせ!わかってんだよ、お前らの考えてることなんか!ばーか!!


で、ここまで考えて気付いたんですけどね、「万博に行ったらこんな素晴らしいものが見れる」っていうリターンの部分に対する見解が、嫁息子と僕のあいだで大きく乖離してる。僕は建築物とかそもそも興味ないし外国の文化に興味はあるけど情報を食ってたら満足するタイプなので目で楽しむ耳で楽しむみたいなんはどうでもいいしわざわざ見に行かなくても写真や動画なんかいくらでもネットにアップされてんじゃんっていう感覚で、これまでさんざ語ってきた行くリスクに比べて行って得られるリターンが少ないんですね。で、それに対して実際に見て聴いて触って楽しみたい嫁息子からすると「楽しい」っていうリターンが大きいんでしょうね。ここが決定的に噛み合ってないから落とし所が見つからないわけです。

かといってここで俺が安易に「仕方ないなぁ」と考えを曲げてもね、それで万博行って超つまんなくて嫌な目にあったときのダメージがここまで考えたうえで安易に曲げちゃったせいで余計に大きくなるのでそれは絶対嫌なんですよ。やりたくないんです。


ここで僕、ひらめきました。リターンに対する価値観が揃わないなら、リスクの方を揃えればいいんだ!と。

で、僕はさっそく嫁さんに話すわけです。

息子はな、万博を舐めとる。というか、世の中を舐めとる。親や大人の庇護を信用しすぎとる。自分に危険なことは何も起こらないと思って日々健やかに生活を楽しんで、気軽にアホみたいな顔で万博行きたいとか言いよる。それは素晴らしいことかもしれない。ただ彼がそのスタンスで居続けるなら彼の安全を守るのは俺の仕事やし、では俺が彼の安全のために決断するならば「万博には行かない、運営が信用ならんから不要なリスクを取る必要はない、そこまでして行くイベントではない」になる。が、彼が世の中は安全ではなく、自分の身を常に誰かが守ってくれるわけではないと理解したうえで、自分の身を危険に晒してでも覚悟を持ってそこに赴く選択肢は自分で選ぶんだと考えるなら、家族3人で行ってもいいんじゃないか。


その場合、俺は彼の「それでも行きたい」という意思を親として尊重して、「じゃあ、お前の安全を100%俺が保証してやることはできないけど、一緒にできる限りの努力はしてやるから一緒に気を引き締めて行こうな」という話ができるようになるわけだ。どうだここでひとつ手を打たないか?俺の考える「そんなめんどくさいところ行かんでええやろ」の気持ちを蔑ろにしないまま君たちの「行きたい」の気持ちを尊重するならここらへんが落とし所ではないだろうか。


で、嫁さんは「まぁ、それならええんちゃうか」と言うわけです。

わかった、じゃあ俺が具体的にこれから息子に教えてやりたい話としてはまず大学生だか専門学校生だかのおがくずの中に電球吊るしてる展示が発火して子どもが亡くなった事件、運営が常にこちらの安全を守ってくれるとは限らないってことを教える。あと日航機墜落事故、絶対に安全なものなんて存在しないってことを知ってもらう、明石家さんまがあれきっかけで飛行機極力乗らなくなった話もする。普段は東京を拠点に活動していたサンドウィッチマンがたまたま宮城でロケしてるときに被災した話もする。タイタニック号の話もする。「まぁたぶん大丈夫っしょ」じゃなくて常に死ぬ可能性があるし我々はいつも死と隣り合わせで生きている。今までは幼いお前がのびのび育ってくれるようにこのおっかない真実を我々親が隠していたが、本当は人間なんかいつ死ぬかわからんのだ、それでもお前は今自分の隣にある危険を見積もりながら安全ではない世の中を生きていくのだ。お前が保育園に0歳で入った頃はひとつの組に保育士さんがたくさんいただろう、そしてお前が年を重ねるにつれて保育士さんや先生の数は減っていっただろう、それは一人の大人が安全に面倒を見れる子どもの数っていうのは子どもの年齢によって変わってくるよねってことを大人みんなが真面目に考えているからだ、そんなことをいちいち考えなくちゃならないほどに安全を確保するって大変なんだってことをまず息子にわかってもらってやな。何万人を捌く会場の大変さ、そいつらを運ぶ中央線の大変さ、安全は当たり前に保証されるわけではなく、なんなら最悪ひとつ人が死ぬ。そういう話をしていきたいね。


「まぁ、じょじょに、順番に、少しづつ」と嫁さんは言う。そうだね。息子も嫁さんも俺も納得して、あんまり暑くなる前に行けるといいね、万博。

まぁ、ここらへんまでセットで学べるなら万博なんかにわざわざ行くぶんの元はとれるかな!?俺はいいけど、本当にそれでいいのか万博!!どこの国にどんな大したカルチャーがあるのか俺は知らないけど、とりあえず俺は万博を「他人を安易に信用してはならない、疑ってかかれ」と「メメント・モリ、死を想え」を教える教材とさせていただきます。押忍押忍!

***


【著者プロフィール】

著者名:ズイショ

関西在住アラフォー妻子持ち男性、本職はデジタルマーケター。
それだけでは物足りないのでどうにか暇な時間を捻出してはインターネットに文章を書いて遊んだりしている。
そのため仕事やコミュニケーションの効率化の話をしてると思ったら時間の無駄としか思えない与太話をしてたりもするのでお前は一体なんなんだと怒られがち。けれど、一見相反する色んな思考や感情は案外両立するものだと考えている。

ブログ:←ズイショ→ https://zuisho.hatenadiary.jp/
X:https://x.com/zuiji_zuisho

photo by Buddy Photo

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