「買取大吉バレーボールネーションズリーグ2024 福岡大会」開催記念!! 大山加奈×迫田さおり SPICE特別対談<第2回 コートエンドから見るバレーの魅力>
バレーボールのテレビ中継でおなじみなのは、コートサイドからの映像だ。だが、実は選手がいつも見るのはコートエンドからの映像である。どうやら、そこから見ることでわかることがあるらしい。現役時代に世界を相手に活躍した大山加奈と迫田さおりに、コートエンドから見るバレーボールの魅力を教えてもらった。
――テレビや配信の映像はコートサイドからの画角がメインです。でも、バレーボール選手はコートサイドからはあまり見ないと聞きました。
迫田さおり(以下、迫田)「データで見るときは絶対にエンドですね」
大山加奈(以下、大山)「動きや戦術、戦略がよく分かるからエンドから見ますね。解説はコートサイドから見る席でやることが多いですが、事前に情報を集めるために試合を見るときは絶対にエンドから見ています」
――エンドから見ると、どんなことが分かるんですか?
大山「漫画の『ハイキュー!!』を見てバレーボールを見に行こうと思う人もいると思うんですよ。漫画にも出てくる『同時多発位置差攻撃』というのは、実は実際にも使われていて、それがエンドから見るとよく分かります。『伊達工のバンチリードブロック』もサイドからではわかりにくいのですが、エンドから見ると『これがバンチリードブロックか』とよく分かります。いろんな戦術や戦略がよりわかりやすいので、楽しめると思います」
迫田「ブロックの位置取りやスパイクのコースがよく分かります。サイドから見ていると、このスパイクはどこを抜けてきたんだろう?と思うこともありますが、エンドから見ていると『ブロックはストレートを開けているな』『この選手はクロスに打つことが多いな』『これだけクロスをブロックしているのに、もっとクロスに打つんだ』と、すごくわかりやすく見えます。今の日本代表はバックアタックの種類が増えてきて、セッターの前から打ったり、後ろから打ったり、バックライトから打ったりするんですが、エンドから見るとバックアタックに入るときの相手のブロックの隙間がより見えます。観戦しながら『あそこ開いていたのに!』というのも分かってくると思うので、より楽しく応援できると思います」
――コートの幅をどう使っているかが見えやすいということですね。他にも注目ポイントを教えて下さい。
迫田「選手たちがプレーのために観客席の方に歩いて行くのはサーブ時だけなんです。サーブを打ちに来たときに、身長の高さもより感じるでしょうし、どんな息づかいをしているか、どれくらい汗をかいているかも見ることができます。そのときの表情を生で見られるのは醍醐味です。競っているときとそうでないときだったら、やっぱり表情も違いますからね」
大山「みなさんが驚くのはサーブの軌道ですね。テレビだとゆっくりに見えるので『なんではじくの?』と思うかもしれませんが、エンドから見てるとボールが揺れていることや、突然落ちたりすることがよく分かります。エンドで初めて観戦された方はびっくりすることが多いですね」
――そういわれると、真鍋政義監督も後ろの方に下がって見ていることがありますね。
大山「相手のブロックの付き方や、自分たちのブロックのシステムが機能しているかを見やすいのはコートエンド側だからでしょう。真横からの画角だとそれが見えないですから。エンドからだとブロックとスパイクの攻防は見やすいです。トスの軌道もよく分かります」
迫田「サイドから見ると、視線を左右に動かさないと自分たちのコートと相手のコートを見ることができないんです。でも、エンドから見ると、視線を動かさないでも両方のチームが視界に入るので、お互いのコートで何が起こっているかを常に把握できるのは大きいですね」
――コートエンド席のエピソードがあれば教えてください。
大山「コアなファンの方で、絶対にエンドに席を取ってくれる方がいました。私はロングサーブを打っていたので、本当に真後ろから声で後押ししてくれるのはすごくありがたかったです。一緒に戦ってくれている感じがして、めちゃくちゃうれしかったですね。あとはサーブレシーブするときやブロックをするときに、相手コートの後ろのエンド席が実はよく見えるんですよ。そこに自分の名前が入った応援グッズを持っている人がいるとすごくうれしいんです。なので、反対側で遠いからと思って諦めずに、アピールしてほしいです」
迫田「得点板がコートエンド側にあることが多いので、得点を確認するときに視界に入るんですよ。そこで、点が入ったときにお客さんが盛り上がっているのを見るとうれしかったです。その盛り上がりを見て、選手だけでなくみんなで戦っているんだなと感じていました」
――試合終了後、選手たちはコートエンド側に座って話をしていることが多いですよね。
迫田「確かにそうですね。考えたことがなかったですが、そういう習性なのかな(笑)あそこでは、その試合の反省をしたり、ありがとうってチームメートに伝えたりしているんです。試合が終わって、緊張から開放されたときの表情やコートでは見られない関係性が出ますし、選手じゃなくて1人の人間としての振る舞いを見ることができると思います。あんなにキリッとした表情でコートに立っていたのに、こんな一面もあるんだと発見することができますよ」
大山「連戦だったら、そこですぐに試合の反省点や修正点を話したりします。特にセッターの選手はよく話していると思います。そういった姿を見るのも、色々なことに考えを巡らせることができておもしろいと思います」
写真・文:Masaki