備蓄米 の失敗しない炊き方とは!?
「あ、これ無理かも」――永野の正直すぎるひと言から始まった
「ごめん、俺…これ無理かもしれない」
芸人・永野さんの一言に緊張が走った。番組冒頭、スタジオに広がった香りに言葉が止まる。その匂いは、いま全国で売れている「備蓄米」に向けられた正直な一言....
備蓄米とは? なぜ今こんなに出回っているのか
備蓄米。それは政府が“万が一”のために確保しておく、いわば「国家の非常食」。災害時の配布用などのために数年分が保管されている。その備蓄米が次々と一般流通に乗り始めた。理由はお米の価格高騰。少しでも市場に流通量を増やし、全体の価格を押し下げるため、政府は保管されていた備蓄米を放出し始めたのだ。「市場で売れることで、他のブランド米も価格を下げざるを得なくなる」と西島さんは語る。つまり、備蓄米は私たちの食費に直結する“分岐点”になっているのだ。
「香りがすべてを変える」――開封直後の衝撃
スタジオには、実際にファミリーマートで販売されている備蓄米が持ち込まれた。パッケージは普通。炊飯器も家庭用の一般的なもの。何の変哲もないセットだ。
だが――封を開けた瞬間、空気が変わった。
「……うわっ」「これは……」「ちょっとヤバい」
井上アナ、永野さん、西島さんがほぼ同時に顔をしかめる。
「なんだろう……古い押入れ?体育館の倉庫?」「いや、咳き込むレベルっすね」永野さんはあまりの匂いに本気でむせ返った。「俺、まさかこの年で“臭い飯”を食べるとは思ってなかったっすよ」
誰も悪くない――そう分かっていても、リアルな反応は止められない。それが“現実”だった。
食べ方で変わる?西島マイスターの逆転テク
「でもね、ここからが本番なんです」
そう言って立ち上がったのが、西島さん。彼は、五ツ星お米マイスターとして全国を回る、米のプロフェッショナル。
今回、西島さんが用意したのは2つの炊き方。
A:洗ってすぐに炊飯器で炊いたもの(吸水なし)
B:1時間水に浸した後に炊いたもの(1時間吸水)
見た目は同じようで、明らかに違った。
Aは炊きあがりがややパサつき、匂いが残っている
Bは粒が立ち、ツヤもあり、匂いもかなり軽減されていた
「これ、同じ米なの?」「いや、嘘でしょってくらい違う」
永野さんの感想は、素直な驚きだった。まるで別物。
“たった1時間水に浸すだけ”で、これだけ変わる。
シャカシャカ研ぎの極意――1分半で変わる香り
西島さんがもう一つ強調したのが「研ぎ方」。
「水の中で回すだけではダメ。乾いた状態で、米同士を20回シャカシャカ擦ってください」
ポイントは、音。
「ザラザラ……っていう摩擦音がするのが正しい。そうでないと表面のにおいが取れない」
研ぎ方の基本はこうだ:
水を入れてすぐ捨てる(最初のすすぎ)
水を切って20回シャカシャカ
水で2回すすぎ
再び乾いた状態で10回シャカシャカ
最後に2回すすぎ
これで約1分半。これだけで、においの原因となる酸化膜を落とし、匂いを軽減できるという。
政治と米――「古い電卓」の正体
話はやがて、「なぜこんなに古い米が出回るようになったのか?」という本質へ。
「今の備蓄制度は“古い電卓”で計算されているようなものなんです」
西島さんが語ったのは、驚きの内容。政府が在庫としてカウントしているお米の中には、「市場に出せないレベルの古さ」も含まれているという。
「数字だけ見て、“余ってます”と発表されていた。現実には流通できるお米は足りていなかったんです」
さらに――その背景には、農業団体と政治の深い関係がある。
備蓄制度の維持=票になる
輸入米や改革の提案=反発を招く
だから“現状維持”が続いてきた
「これを変えるには、選挙で声を上げるしかない」と西島さんは言う。
「うまい」と言った政治家、本当に食べた?
ある議員が備蓄米を食べて「おいしいじゃないか」と発言したことが報じられた。
「でも、それ本当に食べたの?」と井上アナ。
西島さんも、「たぶん、炊きたてしか見てない。においまでは確かめてないでしょう」と推測する。
備蓄米の問題は、「食べる前」に始まる。袋を開けた瞬間、鼻を突くあの香り。
食卓に出す前に、家庭のキッチンが“警報”を発するレベルだ。
「これを“うまい”とだけ伝えるのは、正直ちょっと無責任だったかも」と井上アナ。
食べ方で変わる――救済レシピとブレンド術
ただし、希望はある。西島さんは「食べ方の工夫で変わる」と提案する。
チャーハンやドライカレー:香りが強い料理と合わせるとほとんど気にならない
雑炊やオムライス:ふっくら感が活きる
ブレンド米:今の家庭米を7割、備蓄米を3割混ぜれば香りが抑えられる
さらに、「吸水時間を2時間にすれば、においがさらに軽減される。ただし9時間以上は雑菌繁殖の恐れあり」と実践的なアドバイスも。
「香りは残るけど、味と食感は救える」
吸水1時間+正しい研ぎ方で、味と食感はほぼ問題なくなる
ただし、においだけは“完全には消えない”
食べ方やブレンドで「日常のご飯」には戻せるレベルになる
永野さんは「これ、何も知らずに買ったらクレーム入れたくなるけど、ちゃんと知っていれば“使い道あるな”って思える。俺、米好きなんすよ。本当に。毎食、米食ってる。だから今日、最初に匂い嗅いだとき、正直泣きそうになった。これを“うまい”って言うのは、米を裏切る気がして。だけど、1時間吸水でこんなに変わるなら……何とかしてあげたいと思った」
知って食べる。知らずに捨てない。
備蓄米は、ただ、“古いだけ”だ。
知って、扱い方を覚えれば、十分に使える。
1kg、2kg単位で買って、吸水して、混ぜて食べてみてほしい。
嘘をつかず、正直に語ること。それが“食の信用”を守る第一歩。
永野さんは「俺、生きてて“臭い飯”って買う日が来るなんて思ってなかったっすよ。でも、この吸水で救えたんです。ちょっと泣きそうなくらい、安心しました」
(TBSラジオ『井上貴博 土曜日の「あ」』より抜粋)