【「大岡信研究」第10号】 四元康祐さんの世界各国連詩体験
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は12月20日に発行(奥付)された三島市出身の詩人大岡信さん(1931~2017年)の仕事を掘り下げる冊子「大岡信研究」(大岡信研究会発行)の第10号を題材に。(写真・久保田竜平)
大岡信さんを筆頭に、マーサ・ナカムラさん、四元康祐さん、和合亮一さんという「しずおか連詩の会」の参加経験者の名前が並ぶ。阿部公彦さんも連詩の作法を語っている。中でも2024年1月29日に行われた「第28回大岡信研究会」の講演採録で、四元さんが海外の詩人を交えた連詩の経験を語っているのが印象に残った。
ご自分が初めて連詩に参加したのは2003年の「しずおか連詩」という。参加者は大岡さん、小池昌代さんにオランダの詩人2人、ヘンク・ベルンレフさん、ウィレム・ファン・トールンさん。四元さんにとって海外詩人との共同制作は、静岡が端緒だったようだ。
中国、韓国、トルコ、アメリカなどの詩人たちとの連詩創作のエピソード、作品解説が続く。2015年、戦後70年の年に開かれた「日中韓三か国語連詩」の立ち上げの経緯が興味深い。
首相談話に中韓が反発する中、四元さんは「政治が言葉をめぐって対立するのであれば、詩人は言葉によって繋がり、ひとつに和する姿を示すべきではないかと考えた」という。中韓の詩人に四元さん、そして「宇宙人枠」で谷川俊太郎さん。8月15日に中韓の詩人を招いた朗読会で披露された連詩。聴いてみたかった。
(は)
※写真のバックはかつての「しずおか連詩の会」の作品を紹介する静岡新聞紙面