鉄筋コンクリート住宅ってリフォーム可能?プロが徹底解説!
木造・鉄骨造と比べて長持ちするといわれている鉄筋コンクリート住宅。耐久性が高いためリフォームは難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。
鉄筋コンクリート住宅は、正しく構造がプランニングされていれば木造・鉄骨造よりも容易にリフォームできます。今回は、鉄筋コンクリート住宅専門の設計事務所・株式会社RC design studio代表の澤田さんにインタビュー!鉄筋コンクリート住宅の特徴やリフォームのメリット・注意点などをプロの目線からお聞きしました。
お話しを伺った方
株式会社RC design studio 澤田 友典(さわだ とものり)さん
【資格】一級建築士、インテリアコーディネーター
鉄筋コンクリート住宅のメリット
鉄筋コンクリート住宅とは、鉄筋構造とコンクリート構造を組み合わせた住宅のこと。鉄筋コンクリート住宅のメリット・デメリットを見ていきましょう。
耐久性が高い
ー鉄筋コンクリート住宅のメリットはなんですか?
木造や鉄骨造とくらべて耐久性が高く、長持ちしやすいことです。木材は腐りやすく、鉄は錆びやすいという特徴がある一方、コンクリートは石を主成分としてできているため腐ったり錆びたりすることはありません。
ー鉄筋コンクリート住宅はまったく傷まないのでしょうか?
いえ、まったく傷まないわけではありません。コンクリートの中にある鉄筋が錆びてコンクリートの表面に錆が浮き出ているのが、鉄筋コンクリート住宅の劣化症状です。
適切に施工させたコンクリートであれば、この劣化症状が現れるのは建築後100年以降からといわれています。鉄筋コンクリート住宅の傷みについては、新築であれば考える必要はないでしょう。
強度のある柱や壁をつくりやすい
ー耐久性が高いということは、固くて強いということなのでしょうか?
いえ、単純な材料の強度でいうとコンクリートより鉄のほうがずっと強いといわれています。強度を語る上でポイントになるのは、強度は大きさでカバーできるという点です。
ー強度は大きさでカバーできるとはどういうことですか?
材料の強度は小さくても、柱や壁のサイズを大きくすることで強度を高められます。コンクリートの1立米あたりの単価は鉄や木材と比べて安いため、大きな柱や壁を比較的安価につくることができます。
材料の強度が小さくても、大きなサイズの柱や壁をつくることで強固で丈夫な住宅に仕上がるのです。
防音性が高い
ーそのほか鉄筋コンクリート造にはどのようなメリットがありますか?
コンクリートに音を跳ね返す特性があるため、防音性に優れている点もメリットです。外から聞こえてくる音を遮断できるだけでなく、室内からの音が漏れることもないため、子どもの泣き声や楽器の練習などでも、周りを気にする必要がありません。
鉄筋コンクリート住宅のデメリット
鉄筋コンクリート住宅にはメリットが多くある一方、やはりデメリットも。鉄筋コンクリート住宅のデメリットを見ていきましょう。
地盤をしっかりつくる必要がある
ー鉄筋コンクリート住宅のデメリットを教えてください
コンクリート自体が重いため、地盤に負荷がかかってしまうことです。鉄筋コンクリート住宅を建てる際は強い地盤の土地を選ぶか、地盤改良を行ってから施工する必要があります。
材料が重いことは耐久性や耐震性に優れているというメリットがある一方、地盤に負荷がかかるというデメリットもあるのです。
費用が木造・鉄骨造より高くなる
ー費用面ではどのような特徴がありますか?
鉄筋コンクリート住宅を建てる際の費用は、木造・鉄骨造より2、3割ほど高くなります。鉄筋コンクリートの構造をつくる際にかかる費用と、地盤改良が必要になった際はその費用も上乗せされるため、全体の費用で見ると2、3割増になります。
費用面においていちばん重要なのは、鉄筋コンクリート造に慣れていてどのような工法にすれば無駄がないか、ノウハウをわかっている業者に頼むことです。ラーメン構造であれば柱の位置を決めるプランニングはあまり変わりませんが、壁式構造の場合はどの業者に頼むかでかなり構造計画が変わります。できるだけ無駄を省いてシンプルな構造計画にしないと費用がさらにかさんでしまうため、業者選びは慎重に行いましょう。
鉄筋コンクリート住宅の構造は2種類
鉄筋コンクリート住宅を建てるには、構造に関しても理解しておくことが大切。鉄筋コンクリート住宅の構造について解説していただきました。
ラーメン構造
ーラーメン構造とはどのような構造ですか?
鉄筋コンクリート住宅のラーメン構造とは、地面に向かって直角に伸ばす柱と、柱をつなぐ梁で枠組みをつくって支える構造のことです。
ラーメン構造のメリット
ー鉄筋コンクリート住宅をラーメン構造で建てるメリットはなんですか?
柱と梁で支えるため、開放感のある空間を実現できたり、大きな空間をつくり出せることです。住宅用というよりは、ショッピングセンターやオフィスの構造として導入されることが多い傾向です。
ラーメン構造のデメリット
ー鉄筋コンクリート住宅をラーメン構造で建てるデメリットはなんですか?
必ずしも耐久性が高い=耐震性が高いというわけではないため、壁式構造の鉄筋コンクリート住宅よりも耐震性に欠けることです。阪神淡路大震災でも、ラーメン構造の建物は木造・鉄骨造と同じく倒壊しています。
壁式構造
ー壁式構造とはどのような構造ですか?
鉄筋コンクリートづくりの壁式構造とは、柱や梁ではなく床・壁・天井で枠組みをつくる構造のことです。
壁式構造のメリット
ー鉄筋コンクリート住宅を壁式構造で建てるメリットはなんですか?
壁式構造のメリットは、耐震性の高さです。阪神淡路大震災が起こった際、壁式構造の鉄筋コンクリートマンションはほとんど被害がありませんでした。同じ鉄筋コンクリート住宅でも、構造が違うと耐震性はかなり異なるため注意しましょう。
壁式構造のデメリット
ー鉄筋コンクリート住宅を壁式構造で建てるデメリットはなんですか?
壁で天井や床を支えるため、開放感を生み出しにくいことや、大きな空間をつくれないことが挙げられます。しかし、そこまでの大空間が住宅に必要なケースは多くないため、一般的な大きさの住宅では壁式構造のほうが向いているといえます。
鉄筋コンクリート住宅のリフォームは可能?
耐久性が高い鉄筋コンクリート住宅は、リフォームが可能なのでしょうか。構造ごとにお聞きしました。
ラーメン構造でのリフォーム
ーラーメン構造の鉄筋コンクリート住宅は、リフォームできますか?
木造と同じく柱と梁さえ残せば、リフォームは可能です。木造と違って柱と柱の間を補強する「筋交い」などがないことが特徴です。
壁式構造でのリフォーム
ー壁式構造の鉄筋コンクリート住宅は、リフォームできますか?
壁式構造の鉄筋コンクリート住宅の場合は、合理的な設計であればリフォームを簡単に行うことができるでしょう。住宅内に入っている壁のみを残せばよいため、不必要な壁が入っていなければかなりリフォームしやすい構造といえます。
ー合理的な設計とは?
必要最低限の壁を設置して壁式構造の鉄筋コンクリート住宅をつくることです。必要以上にコンクリートの壁を設置しているケースも多く散見されますが、無駄なコンクリートの壁はただの重りでしかありません。地盤に負担がかかるだけでなく無駄な費用もかかってしまうため、合理的に設計することが大切です。
鉄筋コンクリート住宅をリフォームするメリット・デメリット
鉄筋コンクリート住宅はマンションなどの大きな建物で広く使われている反面、住宅用としてはまだあまり普及していません。鉄筋コンクリート住宅のリフォームを検討する際は、メリット・デメリットを正しく知っておくことが大切です。
鉄筋コンクリート住宅をリフォームするメリット・デメリットとは何なのでしょうか。
メリット:構造体の傷みを心配せずリフォームができる
ー鉄筋コンクリート住宅をリフォームするメリットはなんですか?
構造体の耐久性が高いため、白アリの被害や傷みなどを考える必要がないことです。木造や鉄骨造の場合はどうしても構造体が腐ったり錆びたりするため、補修が必要なケースも多いといわれています。
構造体を心配する必要がない点は、大きなメリットといえるでしょう。
デメリット:リフォームの頼み先が少ない
ー鉄筋コンクリート住宅をリフォームするうえでデメリットはありますか?
鉄筋コンクリート住宅のリフォームに関するノウハウを知らない業者が多いため、リフォームの頼み先が少ないことです。通常のハウスメーカーやリフォーム店では対応できないケースがあるため、ゼネコンのリフォーム部門などに問い合わせるのがよいでしょう。
何に重きを置くか考えながら建物の構造を決める
鉄筋コンクリート住宅のメリット・デメリットやリフォームするうえでの注意点などをお聞きしました。家を建てる際、どの構造にするか迷った時は、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造それぞれの特徴を理解して選ぶことが大切です。
家づくりの際に考えたい、構造の選び方をお聞きしました。
断熱性能だけを見るのであれば、木造住宅がおすすめ
ー家づくりで構造を考える際、考えるべきポイントはなんですか?
家づくりの際、自分がどの部分を重視したいのか考えることが大切です。
断熱性能をいちばんに優先したいのであれば、鉄筋コンクリート住宅より木造住宅のほうがよいでしょう。
壁式構造の鉄筋コンクリート住宅では、連続した空間に断熱材が貼れるため保温性はある一方、性能値は高めにくいというデメリットがあります。
ーなるほど。断熱性能という面から見ると、木造住宅のほうがよいのですね
そうですね。数値だけで判断するのであれば木造住宅がよいことも多々ある一方、鉄筋コンクリート住宅の魅力は「数値化できない快適さ」だと思います。
ー「数値化できない快適さ」とは?
鉄筋コンクリート住宅は気密性があるため、室内の温度が急激に変化することはありません。鉄筋コンクリート造のマンションに住んでいる方はわかると思うのですが、一年を通して室温の上下があまりないんですよね。
もちろんマンションの場合は隣の部屋に人が住んでいたり、窓が部屋の1つの面しかなかったりする要因も大きいといわれています。ただコンクリートが蓄熱体になるため、室内の温度を保ちやすいというのは数値化こそできませんが大きなメリットといえるでしょう。
鉄筋コンクリート住宅は「安心して暮らせる」ことが最大の強み
ー鉄筋コンクリート住宅の強みは何だと考えますか?
やはり「安心して暮らせる」ことでしょう。腐敗やシロアリなど構造体に関しての心配が要らないだけでなく、コンクリートの重みを生かすことで防音性、耐震性を高められます。
近年では、何十年に一度の大雨や地震、大型台風などの自然災害が頻発しており、住まいに安心感を求める方も増えています。鉄筋コンクリートの機能そのものが建物全体ひいては家族を守るため、安心して暮らせる家に仕上がるのです。
まとめ
いかがでしたか?鉄筋コンクリート住宅の特徴やメリット・デメリット、リフォームの注意点などをプロの目線から学べましたね!
家づくりにおいて何に重きを置きたいか考えながら、家づくりを進めていきましょう!