【野球ごはん⑨】肉の種類、特徴について≪令和版≫
体づくりには、ささみが一番いい?
選手と肉の食べ方について話していると、時々、このような話を聞きます。「テレビでプロスポーツ選手が、体づくりにささみが一番いいと話していました。本当ですか?」。「体脂肪を増やしたくないから、ささみしか食べていません」。選手が目的に合わせて、栄養のことを考えていただけることは嬉しいです。しかし、ささみが一番いいとは限りません。豚肉、牛肉、鶏肉には、それぞれ強みを持っています。
表1は、各肉100gあたりに含まれる栄養素の量を示しました。肉は、体づくりに欠かせないタンパク質が豊富です。そして、肉の種類によって多く含まれるビタミン、ミネラルの量が違います。豚肉は、エネルギーやタンパク質の代謝を助けるビタミンB群が豊富です。体の成長や練習・試合時の体を動かすエネルギーを作るときに必要な栄養素です。牛肉は、酸素の運び役である赤血球の材料となる鉄が豊富です。鉄が不足すると鉄欠乏性貧血を起こし、持久力が落ちやすくなります。鶏肉はビタミンAが豊富です。ビタミンAは、のどや鼻の粘膜を健康に保ち、ウイルスなどの侵入を防ぎます。また、目の機能を健康に保つ働きもあります。
このように肉の種類によって特徴が違います。ささみばかりを食べると、栄養バランスが悪くなります。いろいろな肉を食べて、さまざまな栄養素を補給することが大切です。
肉を食べる時は、部位に気をつけましょう。
図1は、肉の部位によるタンパク質、脂質の含有量を示しました。肉の部位によっては、脂質を多く含んでいます。豚・牛肉のばら、ロース、サーロインは、脂質が多いです。体脂肪を増やしたくない時は、モモ肉、ヒレ肉を選ぶようにしましょう。例えば、ステーキを食べる時は、サーロインステーキではなく、モモステーキ、ヒレステーキにしましょう。肉の脂身は白いです。スーパーでは、「こま切れ肉」が売られています。こま切れ肉は、肉のいろいろな部位を組み合わせられています。値段も高くなく、利用することが多いと思います。こま切れ肉を買う時は見比べて、なるべく白い部分が少なく、赤身の多いものを選ぶようにしましょう。
鶏肉は、皮の部分にあぶらを多く含んでいます。もも肉・むね肉は、皮をはずすだけで脂質を減らすことができます。
脂質を取り過ぎたくない時は、今、お話した方法ですが、食が細くて食事量を増やせられない、追い込み練習の期間に入り体重が落ちやすくなった時は、ばら肉、皮つき鶏肉を使いましょう。あぶら(油・脂)を利用してエネルギー補給量を増やします。炭水化物、タンパク質は1gあたり4kcalですが、脂質は1gあたり9kcalです。脂質をうまく利用すれば、効率よくエネルギーを補給することができます。
ささみやヒレ肉などあぶらの少ない部位を加熱するとかたくなり、パサついて食べにくいと感じることがあります。肉を焼く前に調味料の塩こうじ、刻んだパイナップル・キウイと一緒に漬けこむといいでしょう。これらの食品が持つ酵素によってタンパク質が分解され、やわらかく仕上がります。
焼き肉を食べる時は、「丸ごと食べる」をイメージしよう
スーパーではいろいろな肉の部位が販売され、自宅でも焼き肉店のような種類を楽しめるようになりました。表2は、牛肉の部位別の栄養素の含有量です。焼き肉でよく食べられている「カルビ」「ハラミ」は、あぶらが多いです。そして、コリコリした食感の「タン(舌)」も意外にあぶらが多いです。今まで牛タンばかりを食べていた選手は、気をつけましょう。
焼き肉を食べる時は、「丸ごと食べる」をイメージしてみましょう。ひとりで豚・牛一頭、鶏一羽を丸ごと食べることはできませんが、丸ごと食べるようなイメージで、いろいろな部位を食べるようにすると、あぶらの取りすぎを抑えることができます。レバーやハツなどのホルモン(内臓)を組み合わせてください。一般にホルモンと呼ばれる部位は、あぶらの量が少ないです(小腸以外)。
焼き肉を食べる時は、シンプルに塩こしょう、レモン汁がおすすめです。焼き肉のタレは、砂糖やごま油を多く使用していることがあります。使い過ぎに気をつけて下さい。そして、肉ばかりでなく、サニーレタスを巻いたり、キムチ、ナムルなど野菜料理を組み合わせたりして、野菜、きのこ、海藻も一緒に食べて下さいね。
上村香久子(うえむら・かくこ)
管理栄養士、調理師。1974年、京都府生まれ。中学生の頃にプロ野球ファンになり、スポーツ現場で働く栄養士を目指す。現在、中学、高校、大学野球をはじめ、サッカー、バスケットボール、バレーボール、駅伝チームなど全国各地のスポーツ選手たちへ栄養指導、レシピ提供などを行っている。また、公益財団法人全日本柔道連盟科学研究部員として合宿、オリンピックに帯同し、柔道選手をサポートしている。神奈川工科大学客員教授。<!-- .c-authorbox__contents -->