鼻吸い器は使いすぎると鼻の粘膜を傷つける! 「赤ちゃんの鼻水・鼻づまり」5段階の受診の目安と7つのケア方法 小児科医が解説
赤ちゃんの「鼻水・鼻づまり」について小児科医・岡本光宏先生取材。体調不良時の対応やチェックすべきポイントや受診の目安など。 「0~1歳児の赤ちゃんのホームケア」シリーズ(全11回の回5目)。
「赤ちゃんの鼻水・鼻づまり」 受診・ケアポイントを小児科医が解説赤ちゃんの体調不良のときにチェックしておくポイントや家庭での対応、受診の目安などを「おかもと小児科・アレルギー科」院長・岡本光宏先生にお聞きしました。5回目は、鼻水・鼻づまりのホームケアと受診の目安についてです。
兵庫県三田市にある「おかもと小児科・アレルギー科」院長・岡本光宏先生。日本小児科学会小児科専門医、認定小児科指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医。新生児から思春期の心の疾患まで、幅広く診察している。
鼻水は体を守るために出ている
鼻水は、鼻に入った異物を押し出すために出るもので、体を守る防御反応です。子どもの場合、ほこりや室温、温度変化で粘膜が刺激されて鼻水が出ることもあります。
また、風邪などで鼻の粘膜が炎症することで、鼻水・鼻づまりが強く出ることも。とくに赤ちゃんは鼻の中が狭いため、鼻がつまりやすい傾向があります。
「赤ちゃんの鼻のケアはとても大事です。鼻づまりの症状がひどくなると、息苦しくなったり、夜眠れなくなったり、飲食ができなくなったりして、体に負担がかかってしまいます」(岡本先生)
受診する目安
次に、赤ちゃんに鼻水や鼻づまりの症状があるとき、小児科を受診するかどうかの目安を段階別に紹介します。
〈様子見でOK!〉
・鼻水・鼻づまりの症状はあるけど、せきは出ない
〈小児科を受診〉
・鼻がつまっていて鼻呼吸ができない
・母乳・ミルクを飲みにくそうにしている
・鼻がつまって眠れない
・食欲がない、せきこんで吐く
・せき・鼻水・鼻づまりが10日以上続いている
・鼻水・鼻づまりに加え、発熱、下痢、嘔吐などの症状がある
イラスト/オヨネ
〈時間外でも急いで受診を〉
・水分がとれない
・唇が紫に変色している
〈受診の準備〉
・鼻水が出るときの状況を確認する
・熱を測っておく
・機嫌が悪くないか、食事・水分・睡眠はとれているかを見る
・下痢や嘔吐、発疹など鼻水以外の状態をチェックしておく
「風邪を引くと、症状が10日くらい続くのが一般的です。鼻水・鼻づまりが続いても、嘔吐などの症状がなければ10日くらいは様子を見てもいいでしょう」(岡本先生)
7つのケアと注意点
赤ちゃんに鼻水・鼻づまりの症状があるときに、家庭でできるケアの方法を紹介します。
【1】鼻水をふき取る
出ている鼻水をぬるま湯で濡らしてから絞ったガーゼやティッシュなどでやさしくふきます。ふいたあとは、ワセリンを塗って肌を保護しましょう
【2】鼻吸い器でこまめに鼻水を吸う
0~1歳の赤ちゃんは鼻をかめないので、1日4回を目安に吸引をして鼻の中にたまった鼻水を取ります。うまくできないときは、小児科を受診するといいでしょう
<鼻吸い器の使い方>
2人で行う場合は、1人が赤ちゃんの頭と体を固定して、もう1人が吸引します。1人のときは、両足の間で赤ちゃんを仰向けに寝かせましょう。鼻吸い器のノズルは顔に対して垂直に当てるのがポイントです。手動の場合、強く吸いすぎないよう注意しましょう。
鼻水を取るタイミングは、起床時、授乳・離乳食前、お風呂上がり、就寝前、せきで起きてしまったとき、登園前などがよいでしょう
イラスト/オヨネ
【3】上体を起こして寝かせる
鼻水が喉の奥に行くのを避けるために、丸めたタオルやクッションなどを背中の下に置き、上体を起こして寝かせます。ゆっくり休めるように、静かで快適な環境を整えましょう。ただし、長時間眠り続けている場合は、たまに起こして水分を与えます
【4】水分補給をする
離乳食前は母乳・ミルクでOK。離乳食以降なら、経口補水液や乳児用のイオン飲料などを少しずつ飲ませます。ただし、子どもが嫌がるときは無理に飲ませないようにしましょう
【5】短時間の入浴(※ただし、症状が軽く、機嫌がいいとき)
汗を流すために短時間入浴をして、体を清潔にします。湯気で鼻の通りもよくなります
【6】消化にいいものを食べさせる(※ただし、症状が軽く、食欲があるとき)
消化がよく、のど越しのいいものを食べさせます。食欲がなければ無理に食べさせる必要はありませんが、水分はこまめに与えましょう
【7】室内環境を改善する
室内のほこりや乾燥も鼻水・鼻づまりを引き起こしやすくなります。掃除機をかけたり、換気をしたりして部屋を清潔にすることが肝心です。また、部屋の湿度が50~60%になるように加湿器などを使って調整しましょう
写真:mon_printemps_fleuri/イメージマート
注意したいポイント
「赤ちゃんはよく鼻水を出すので、自宅に電動の鼻吸い器があると便利です。ただ、鼻吸いを頻繁にやりすぎると鼻の粘膜を傷つけてしまう可能性があるので、1日の使用回数には注意するようにしましょう」(岡本先生)
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赤ちゃんの鼻がつまって苦しそうにしているとママパパも心配になってしまいますが、ケアや受診の目安がわかっていると、不安に押しつぶされずにすみそうです。
ただし、「様子見でOK」に当てはまる場合でも、「なんとなくいつもと様子が違う」のようにママパパから見て気がかりなこともあるかもしれません。少しでも気になることがあれば、早めに小児科を受診することをおすすめします。
赤ちゃんのホームケア次回6回目は、「嘔吐」についてお届けします。
取材・文/畑菜穂子