【スージー鈴木 ロングインタビュー後編】博報堂マーケ局長×音楽評論家の二刀流。本業とサブカル両立のためのTips
書籍の執筆、メディアの連載、新聞のコラム寄稿、ラジオ番組のパーソナリティなど、多方面で活躍する音楽評論家のスージー鈴木さん。実は広告代理店でマーケティング職に就き、局長などの要職を担っていた元サラリーマンです。55歳で早期退職制度を利用して独立するまで、副業としてサブカルチャーの分野で活動を続けてきました。今回の後編では、多忙な管理職として働きながら、どのようにサブカルチャーとサラリーマンを両立する「サブカルサラリーマン」としての時間を生み出してきたのか。その工夫を伺いました。
前編:【スージー鈴木ロングインタビュー前編】「2枚目の名刺をつくってみよう」 会社員こそ挑戦すべきキャリア戦略
「18時15分の電車に乗る」と決める
———キャリアを重ねていくにつれて仕事が忙しくなるなかで、どうやって趣味の「サブカル」を楽しむ時間を確保してきたのですか?
スージー:私が意識してきたのは、観たいイベントの開始時刻から逆算してスケジュールを組むことです。芝居は開演したら途中から入ることが難しいですし、コンサートも1曲目の感動に大きな価値があると思うんです。野球もプレーボールから観たい。だから「18時5分に席を立つ」「18時15分の電車に乗る」と前日に、めっちゃ具体的な行動と時間を決め、それを必ず守るようにしてきました。
こうした逆算で動く習慣を身に付けると、自然に一日の計画が整理されます。「昼は弁当で済ませよう」「あの打ち合わせは明日に回そう」といった調整もできるようになってきます。さらに、時間を読みづらい会議では、自分自身が司会のようになって仕切れば、「今日決めること」と「後回しにできること」を自ら切り分けられるので、ムダな時間を削ることができます。
さらに私が工夫したのは、会議そのものを減らす工夫(笑)。勤めていた博報堂は、打ち合わせが多くて長いカルチャーがありましたが、要点をクリアに整理した絶妙なメールを1本送るだけで、会議が不要になったり、参加人数を減らせたりすることがあるのを発見したのです。例えば、冒頭に「このメールは3点書いています」と見出しを付け、誰にどこを読んでほしいかを指定すれば、長文でもきちんと伝わります。ぜひみなさんも、メールの書き方がめっちゃ上手い「プロ・メーラー」になって、会議を減らしてください(笑)。
こういう効率化への工夫を積み重ねていると、分刻みのスケジュールや長文メールも決して窮屈ではなくなります。むしろ、自分で優先順位を決めて流れをコントロールできるからこそ、ストレスから解放されるのです。大切なのは「やりたいことを起点に逆算する」という発想。その視点さえあれば、仕事がどれだけ増えてもサブカルを楽しむ余裕は確保できます。
65点の合格点を目指す
———その他に、仕事で工夫できるところはありますか?
スージー:2つありますね。1つ目は、完璧を目指すのではなく、まずは合格点を早く出すことを大事にするやり方です。私はこれを “65点主義” と呼んでいます。
よく「仕事は100点を目指せ」と言われますが、経験を重ねていく中で、必ずしもそう単純ではないと気づきました。100点に仕上げるには膨大な時間を要します。私の感覚では、65点のアウトプットに1時間かかるなら、100点に到達するまでには4時間はかかります。もっとも、今なら生成AIを活用すれば多少は短縮できるでしょうけれど。
さらに仕事には締切が存在します。取引先はその期日を前提に動いているため、遅れた時点でどれほど質が高くても「0点」になってしまいます。だからこそ、まずは最低合格点を出すことが重要。1つの仕事に集中して、100点を仕上げるよりも、複数の案件で合格点の65点を満たすほうが、全体としての成果も大きくなる。とにかく締切日までに合格点のアウトプットを提出しておけば、場合によっては、そこから70点、80点……にする修正のやりとりをできるかもしれません。これが私の“65点主義”という考え方です。
“毒味”で不安を消す
スージー:もう1つ大事にしてきたのが、“毒味する”という考え方です。複数の案件を抱えていると、どれから手をつけていいのか分からず、不安で動きが止まってしまうことがあります。それを防ぐために私は、とにかく少しでいいから全部の案件に手をつけるようにしていました。これを私は“毒味”と呼んでいます。
例えば5つの案件があれば、資料をざっと目を通してみる、タスクを大まかに書き出す──ほんの数分でもいいので触れておく。そうすることで「この案件は思ったより手間がかからない」「逆にこれは苦戦しそうだ」といった全体像が見えてきます。その上で、やるべきことと締切をGoogleドキュメントやカレンダーに整理すれば、業務が可視化されて、気持ちがぐっと楽になるんです。
この“毒味”を習慣にしたおかげで、私は常に「無駄なく・無理なく・機嫌よく(MMK)」仕事を進めることができたと思っています。サラリーマン時代によく「要領(だけは)いいな」と言われましたが、それは徹夜や深夜残業を避けつつ、効率的に仕事を回す工夫をしていたからです。私にとっては最高の褒め言葉でした。
あえて、頼りないリーダーであれ
———博報堂で管理職(リーダー)になってから、部下との関わり方や、自分の時間の使い方で意識していたことはありますか?
スージー:私は「完璧な上司」になろうとは思いませんでした。むしろ少し“頼りない”くらいでいたほうが、部下は「助けてあげよう」と動いてくれるんです(笑)。人は完璧なリーダーより、不完全さを見せる存在にこそエネルギーを発揮するものだと思っています。
実際に私が局長をしていたころも、デジタルの最新トレンドなど分からないことは素直に部下に尋ねました。あと日本の管理職って、なぜか否定から入る人が多いのですが、私はいいと思ったら、素直に褒めまくったものでした。部下は実は、自分の仕事の課題には内心気づいているものなので、すでに分かっている課題をチマチマ突っつかれるよりも、「これはうっとりするほど美しい企画書だ」「これまで私が見てきたコンセプトの中でもトップ5に入る」みたいな、多少盛りながらも(笑)、それでも本質的な称賛を恥ずかしがらずに、しっかりと伝えるほうが、部下の改善意欲を引き出せるんですよ。だって恥ずかしがる理由なんて、どこにもないですからね。
また、管理職になると、なぜか「俺は仕事一筋の人間なんだ」と振る舞う人も少なくありません。でも私はそうなりたくなかった。だから飲み会や趣味の時間も大事にして、仕事一辺倒にならないように心がけていました。そのために、社内の飲み会も遅れずに参加しました。なんなら「0次会」と称して、開始前から飲んでいたり。そのほうが気持ちに余裕が生まれ、部下に向き合うときも自然体でいられるのです。
管理職だからといって決して虚勢を張らず、部下の優秀さを認め、どんどん仕事を任せていく。小さな成功を拾ってあげて言葉にすれば、周囲の心理的安全性が高まり、協力者は自然と増えていきます。そうすれば、チーム全体の空気も良くなり、結果的に私自身も本業以外の時間をつくれるようになりました。
休みを堂々と公表する
———会社員時代、長期休暇は取れたんですか?
スージー:取ってましたよ!私は長期休暇を取るときは、もう数か月前に全社員が見られる共通のカレンダーツールに堂々と書き込んでいました。その日の上に小さく置かれる終日の予定ではなく、朝7時から夜11時までベターッと長方形で埋める。色は真っ赤っ赤。社内の気の合う仲間と年に一度の九州旅行を“ウキウキツアー”と呼んでいるのですが、その真っ赤な長方形に「【重要】ウキウキツアー」と書いておく。すると部下も「あっ、こりゃ煮ても焼いても食えないな。休ませてあげよう」とあきらめてくれる(笑)。
大事なのは、管理職自ら休暇を隠さず“宣言する”こと。そうすれば自分も後ろめたさを感じずに休むことができて、職場にも「休みを取るのは当たり前」という空気が生まれます。カレンダーツールのように全員に共有できる仕組みを使えば、調整も容易になり、映画やライブといったプライベートの予定も自然に可視化できる。
こうして休みを「見える化」したことで、サブカルを仕事と同じように優先すべき時間として扱えるムードを作れたと考えています。その結果、長い間、仕事とサブカルを無理なく両立できたのだと思います。
「仕事を見限る勇気」が両立を可能にする
スージー:私は仕事を「見限る勇気」も大切だと思います。「見限る」といっても手を抜くわけではなく、最低合格点をクリアするために、適切な時間と人の組み合わせをたえず考えることです。チームでうまく分担して余計な残業を避けること。映画やコンサートに行きたい日もありますから(笑)。そのために、仲間を信じて任せたり、仕事の段取りを「テトリス」のように組み合わせたりして、スムーズに進めてきました。クオリティは後から整えるとして、まずは流れを止めないこと。抱え込まずに周りを頼り、どうやったら効率よく終えられるかを考える。
私にとっては、 仕事の時間を10とすれば、そのうち2ぐらいは「仕事そのものではなく、仕事をどうやってスムーズに進められるかを考える時間」 だったのです。それが自分なりの“働き方のスタイル”でした。忙しくても、楽しめれば、やりたいサブカルと本業との両立は十分可能です。みなさんも、自分のやりたいことを実現してください!「サブカルサラリーマン」はいいですよ。
――まさに「サブカルサラリーマン」を体現していたスージーさんですが、現在のご自身の活動に肩書をつけるとしたら、なんですか?
スージー:事前に質問をいただいていたので、考えてみました。普段は「音楽評論家」と書いていますが、オリジナルでつけるとすると、 「面白いことを考えて発表する人」 です。考えるだけじゃなくて、“発表する”ってところがポイントです。サラリーマン時代から、プレゼンするときも「今から面白いことを発表しますよ~、これ聞けるあなたはラッキーですね~!」くらいの心持ちでやっていました(笑)。今の活動にも通じていて、面白いことを考えて発表することがモチベーションですね。
プロフィール
スージー鈴木
1966(昭和 41) 年、大阪府東大阪市生まれ。音楽評論家、ラジオ DJ、小説家。BAYFM『9 の音粋』月曜DJ。早稲田大学政治経済学部卒業後、博報堂に入社。在職中より音楽評論家として活躍。2021 年、55 歳になったのを機に同社を退職。著書に『沢田研二の音楽を聴く1980-1985』『大人のブルーハーツ』『サブカルサラリーマンになろう』『〈きゅんメロ〉の法則』『中森明菜の音楽1982-1991』『幸福な退職』など多数。2025年10月28日(火)、南青山 BAROOM にて『スージー鈴木のレコード研究室Vol.27「40周年!!サザン『KAMAKURA』をちゃんと聴くナイト」』を開催予定。
X(旧Twitter)
@suziegroove
個人HP
週刊スージー鈴木(硬式サイト)
▼スージー鈴木『サブカルサラリーマンになろう 人生をよくばる108の方法』(発行:東京ニュース通信社、発売:講談社)
≫Amazon
▼スージー鈴木『幸福な退職―「その日」に向けた気持ちいい仕事術―』(新潮新書刊)
≫Amazon
取材・文:西谷忠和
撮影:求人ボックスジャーナル編集部
編集:求人ボックスジャーナル編集部 内藤瑠那
【スージー鈴木さんの直筆サイン本プレゼント】フォロー&リポストキャンペーン 応募要項
求人ボックス公式Xアカウントフォロー&該当投稿をリポストした人の中から抽選で1名様に、スージー鈴木さんの直筆サイン本『サブカルサラリーマンになろう』『80年代音楽解体新書《REMASTER版》』を2冊セットでプレゼント。
■キャンペーン応募期間
2025年9月30日(火)~2025年10月6日(月)
■キャンペーン参加方法
【ステップ1】X(旧:Twitter)にて求人ボックス「@kyujinbox」をフォローしてください。
▼
【ステップ2】「@kyujinbox」がキャンペーン告知をした投稿を、応募期間中にリポスト(RT)してください。
▼
【応募完了!】
締め切り後当選された方には「@kyujinbox」からDMにてご連絡を差し上げます。フォローを外さず、DMを開放してお待ちください。
以下の注意事項をよくご確認のうえご応募ください。
■注意事項
※必ずご自身のアカウントを“公開”にした状態でリポスト(RT)してください。アカウントが非公開(鍵アカウント)の場合はご応募の対象になりませんのでご注意ください。
※「いいね」はご応募の対象になりませんのでご注意ください。
※ご応募はお一人様1回限りとなります。(複数アカウントを用いた複数のご応募はご遠慮ください。なお、複数アカウントを用いた複数のご応募、その他当社が不正と判断するご応募は抽選の対象外とさせていただきます。)
※未成年の方は、親権者等の方が注意事項に同意いただいた上で本プレゼントキャンペーン(以下「本キャンペーン」といいます)へのご応募をお願いいたします。
※当選の発表は、@kyujinboxからのDMをもって代えさせていただきます。
※当落についてのお問い合わせは受けかねますので、ご了承ください。
※本プレゼント品は非売品です。譲渡・転売はご遠慮ください。
※いただいた個人情報は、本キャンペーン以外の目的には使用しません。
※当選された場合であっても、「■キャンペーン参加方法」に記載のご応募条件を充たしていないことが判明した場合、親権者等の方の同意がないことが判明した場合、不正アクセスがあったことが判明した場合、その他当社が不正と判断する行為を行ったことが判明した場合には、当選を取消・無効とさせていただく場合がございますので、ご了承ください。
※本キャンペーンの内容・期間につきましては当社の都合により予告なく変更(期間の早期終了、期間延長を含みますがこれらに限られません)、中止、終了される場合がありますのでご了承ください。
※アプリの設定、システムエラー等によって応募ができない事態が発生した場合等いかなる事情があっても、日にちを遡り、本キャンペーンの対象として適用することはいたしませんので、ご了承ください。
※本キャンペーンの応募等に関する通信費は、お客様自身のご負担となります。
※本キャンぺーンは株式会社カカクコムによる提供です。本キャンペーンについてのお問い合わせは、求人ボックスのお問い合わせフォームまでお願いいたします。