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【虎に翼】花江(森田望智)を追い詰めた「ワンオペ」問題...今週残された複数の「モヤモヤ」は今後回収されるのか

毎日が発見ネット

【虎に翼】花江(森田望智)を追い詰めた「ワンオペ」問題...今週残された複数の「モヤモヤ」は今後回収されるのか

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「残されたモヤモヤ」について。あなたはどのように観ましたか?


※本記事にはネタバレが含まれています。



吉田恵里香脚本×伊藤沙莉主演のNHK連続テレビ小説『虎に翼』の第13週「女房は掃きだめから拾え?」が放送された。



「特例判事補」になった寅子(伊藤)は仕事が増えて大忙し。そんな中、崔香淑(ハ・ヨンス)、よね(土居志央梨)に続いて、かつての学友で「魔女5」の梅子(平岩紙)と再会する。寅子にとっては、初めて互いに喜び合える嬉しい再会だったが、その再会の場は家庭裁判所だった。



きっかけは、梅子の夫の遺産相続問題。愛人・元山すみれ(武田梨奈)が持つ遺言書の検認に立ち合うため、三人の息子たちと義母・常(鷲尾真知子)がやってきたのだ。実は梅子は高等試験当日に夫に離婚届を渡され、絶望し、三男・光三郎を連れて家を出ていたが、すぐに連れ戻され、倒れた夫の介護要員をずっとさせられてきたのだ。寅子は、轟(戸塚純貴)、よねの事務所に案内する。



すみれが出してきた遺言状では、すみれが遺産を全部相続することになっていたが、それは偽造であることがあっさり発覚。しかし、問題は解決せず、家裁に調停の申し立てが行われることに。梅子は息子たちに均等に分けられることを望むが、長男・徹太(見津賢)は他の兄弟に相続放棄を迫り、常は徹太に面倒を見てもらうのは嫌だからと、光三郎(本田響矢)と暮らすことを希望。光三郎には梅子もついてくるだろうからと、そこにもまた、梅子を家事要員・介護要員にしようという思惑があった。



しかし、光三郎とすみれが裏で通じていることが発覚。ドロドロの展開に、梅子は相続を放棄し、遺産を求めない代わりに自分が背負わされてきた母として、嫁としての務めも全て放棄する。



花江(森田望智)が「わざわざそんな当たり前のこと、法律にすること?」と言った民法第730条「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない」の「扶け合い」がフェアに行われないことは実際に多いだろう。それを逆に押し付け返してやったと高らかに笑う梅子。溜まっていた苛立ちや怒りや呆れの噴出と解放の笑いを、平岩紙が存分に見せてくれる。



その一方で、少々モヤモヤするのは、特に次男は自らが父のもとに残ることを選んだとはいえ、それは子どもの選択だっただけに、母に捨てられた恨みを大人になっても抱いているのは、ある程度仕方のないことだろう。まして戦争の傷は簡単に癒えるわけもなく、それを「ひねくれ」と断じられるのは辛い。



また、意地悪義母に見える常も、家制度の犠牲者だった部分はあるのだろうし、「こうやってしか生きてこられなかったんだよ」と光三郎がかばったすみれの事情は置いてけぼりで、悪女のように処理されている。色ボケで頼りなく見える光三郎が、すみれの事情を思いやっったのも、梅子に愛情を注がれ、優しく、良くも悪くも人を疑わずに育ったからという面はあるだろう。しかし、いずれにしろ息子たちはまとめて母親から子育ても家庭も「失敗」と評価され、切り捨てられる辛さ。



本当は一見ダメなヤツ、意地悪なヤツ、悪いヤツに見える次男や常、すみれのような人すらも取りこぼさないのが、『虎に翼』の圧倒的信頼感だと思うのだが。そのあたりの事情はまたいつか描かれるのだろうか。



ところで、大庭家の話がやや駆け足になり、そうした「市井の人々」の扱いが若干雑になったのには、朝ドラ前作『ブギウギ』とのコラボに尺やエネルギーを使う都合もあったのかもしれない。



家庭裁判所の存在を広く知ってもらうため、多岐川(滝藤賢一)は「愛のコンサート」を開くと言い出し、出演歌手の交渉を寅子に任せる。そこでライアン(沢村一樹)の伝手で、茨田りつ子(菊地凛子)が登場。寅子が言う、仕事が・法律が好きだという思いに共鳴したりつ子は、熱唱し、コンサートは成功する。ちなみに、りつ子のパートは『ブギウギ』の脚本家・足立紳氏が手掛けたことが本作制作統括や脚本家により明かされている。



そして今週もう1つの軸になっていたのが、寅子の仕事が忙しくなるに伴い、花江のワンオペ状態が進んでしまう様子だ。特にはる(石田ゆり子)が亡くなった後、はるがやっていたように自分も良き母であろうとすることで、1人で家事育児を抱え込むように。



深夜まで仕事をする寅子は、あくびをしながら手伝うと言うが、その状態で手伝ってくれと言うことなどできない。寅子の娘・優未はすっかり花江の子のようになっている。



夫婦でなく同性同士であっても「外で働く人、家を守る人」の役割分担は、名のなき家事が休みなく無数にある主婦を追い詰め、ワンオペを加速させてしまう。これは明らかに寅子と花江の個人的問題ではなく、社会構造の問題だ。そして、そうした働き方を寅子にさせている多岐川にも責任がある。



その一方で、コンサート終了後、「愛妻家」と皮肉られつつもすぐに帰宅する汐見(平埜生成)と、夜遅くまで酒を飲みかわし、歌を歌うオヤジ・寅子の対比も、それが男女差だけでない問題であることを示している。



コンサート後に、りつ子は女性の味方として寅子の話をしたことから、おそらく寅子が引っ張りだこになる予感。仕事が順調な一方、寅子の親子関係も気になるところだ。


文/田幸和歌子

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