天才ロック歌手フレディ・マーキュリーが愛した猫たち 最期のときも彼のそばに… 英国
ツアー中も、猫に電話
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伝説のロックバンド「クイーン」。そのリードボーカルをつとめたフレディ・マーキュリーは、大変な愛猫家でもありました。
彼が猫を飼い始めたのは、1970年代のこと。当時の恋人メアリー・オースティンが、つがいの猫Tom とJerryを購入して自宅に連れ帰ったのが最初です。ツアーに出かけている間、フレディはひんぱんに自宅に電話をかけてメアリーに猫の様子をたずねたといいます。
彼の個人秘書ピーター・フリーストーンも「ホテルに着くとさっそくロンドンの家に電話をかけ、猫に話しかけていましたね。メアリーがTomとJerryを交互に受話器に近づけ、フレディが2匹に話しかけていたのです。そんな状態が何年も続きました。彼にとって猫は家族同然で、自分の子供のような存在だったのです」と話しています。
10匹の猫を溺愛して
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やがてフレディの飼い猫は、合計10匹に増えました。ほかの8匹の名前はそれぞれ「Tiffany」「Dorothy」「Delilah」「Goliath」「Lily」「Miko」「Oscar」「Romeo」です。ピーターによれば、クリスマスにはそれぞれの猫にお菓子やおもちゃが詰まった靴下を用意するほど甘やかしていたといいます。
7年間フレディの恋人だったジム・ハットンは、回想録の中で「フレディはいつも猫の世話をして過ごしていました。彼が留守の間に万一猫が危害を加えられたりしたら大変なので、周囲の者は大変気を使いましたね。猫たちは昼間は家や敷地内を自由に走り回っていましたが、夜になると全員を家の中に戻さなくてはなりませんでした」と記しています。
ある日Goliathの姿が見つからなくなったとき、フレディはひどく取り乱したといいます。
「深い絶望と怒りにかられて、彼は美しい日本製の火鉢を窓から外へ投げつけたのです。でもそのあと猫が無事に見つかって、フレディは大喜びでした。Goliathを抱きしめたりなでたりして、まさに恍惚状態でしたね。その後はまるで本当の母親のように、逃げ出したことを大声で叱っていました。その間じゅう、この猫はゴロゴロいいながらじっと座っていましたよ」
1985年には猫好きの程度が最高潮に。ソロアルバム「Mr. Bad Guy」がリリースされ、これは「愛猫 JerryとTom、Oscar、Tiffanyに捧げるとともに、世界中の猫好きのみんなのための音楽だ」と表現されています。当時フレディの愛猫たちにあてて、多くのファンたちからおもちゃが送られてきたといいます。
Delilahとの特別な絆
とくにフレディのお気に入りは「うちのお姫様」と彼が呼んでいたDelilahでした。ジムによれば「一番よく抱き上げてなでていた子がDelilah で、この猫はフレディのベッドの足元で寝て、夜になるとこっそりと外に出て徘徊していました」といいます。
体調が悪化してくると、フレディはDelilahにささげる歌を作りました。この曲は、フレディの存命中にリリースされた最後のクイーンのアルバム「Innuendo」に収録されています。アルバムのカバー写真のため、両肩と頭に猫を載せた姿も撮影されました。
フレディが亡くなる前の数ヵ月間、Delilahは彼に寄り添い、やさしい気遣いを見せました。フレディは水彩画でこの猫の姿を何時間もかけて描こうとしたといます。そして1991年、臨終の前に彼が最後にしたのは、Delilahをなでることだったのです。
彼はその遺産のすべてを親友のメアリーと猫たちのために遺しました。ピーターによると、飼い猫のほとんどは最終的にほかの家に引き取られたものの、Delilahと残りの数匹だけはメアリーが世話をし続けたといいます。
出典:
・Bohemian Rhapsody: Freddie Mercury and His Cats, a Love Story
・Meet Freddie Mercury and His Faithful Feline Friends