川越の西福寺で埼玉県無形民俗文化財指定の「南大塚餅つき踊り」が1月12日に開催。ユニークな餅つきの所作に注目!
埼玉県川越市南大塚に古くから伝わる民俗芸能「南大塚餅つき踊り」が2025年1月12日(日)に埼玉県川越市の西福寺で行われる。当日は唄に合わせてリズミカルに踊りを披露しながら餅つきが行われ、それを地域の人々が見守り和やかなムードに包まれる。ぜひ現地で見学しよう。
子供の帯解き祝いに行われていた民俗芸能
「餅つき踊り」とは一つの臼を数人で囲んで踊りながら餅をつく芸能のこと。かつて北足立から入間地方にかけての米作地帯で広く行われていて、現在でも東松原市や上尾市など埼玉県内の数カ所でその風習が残っている。その起源は定かではないが、約300年前から行われていたともいわれる。
南大塚の餅つき踊りは幕末の安政年間(1854~1860)以来、子供の「帯解(おびと)き」といわれる現在の七五三のお祝いに呼ばれて披露するものだった。長男長女が7歳を迎えると地域の“餅つき連中”に頼んで自宅の庭で餅をつきながら踊ってもらい、最後に臼を引きずりながら鎮守である菅原神社まで参詣した。しかし裕福な家しか行うことができず大正末期には一時中断、戦後再開されるもその後は地域の祭りとして実施するようになった。
6つの所作を繰り返して餅をついていく
「元々は長男長女の7歳のお祝いに始まり、その後は新成人の門出を祝う行事として紅白の祝い餅を配っていましたが地域の若者も少なくなってきて、現在は新春のもちつき大会のような位置づけになりつつあります」と話すのは南大塚餅つき踊り保存会の栗原直樹さん。それでも川越の地に伝わる芸能を後世に残すため、20~80代からなる保存会メンバーは普段から所作の練習などを行っているという。
餅つきの中で行われる所作は全部で6つ。まず6人が大杵(おおきね)で蒸し上がったもち米をなじませる「ナラシ」、続いて「押っせ押っせ」の掛け声でもち米を潰す「ネリ」、唄に合わせて6人が一斉に杵を振り下ろす「ツブシ」。さらに2人ないしは3人ずつが組になって交互につく「6テコ」、3人による唄付きの「3テコ」、最後に3人が並んでつく「アゲツキ」で締めくくる。
また、餅つきは全部で4回行われる。1回目は「供え餅」といってついた餅は隣の菅原神社に奉納される。2回目、3回目でついた餅はきなこをまぶして見物客に振る舞われる。最後の4回目は「引き摺り餅」という昔から受け継がれている行事。紅白の引き縄を臼にかけて西福寺から菅原神社まで引きずりながら先ほどと同じ工程で餅をつくのだ。
「大人数で踊りながら餅をつくのは珍しい形態なので、きっと見ている方にも楽しんでもらえるはず。3臼目が終わった後には希望者を募って実際についてもらいます。昔ながらの風習をぜひ体験してもらえれば」と栗原さん。保存会メンバーが生き生きとした表情とユニークな踊りで魅了する餅つき踊りを見学して、年の初めにパワーをもらおう!
開催概要
「南大塚餅つき踊り」
開催日:2025年1月12日(日)
開催時間:12:30~14:30頃
会場:西福寺(埼玉県川越市南大塚2-3-11)
アクセス:西武鉄道新宿線大塚駅から徒歩12分
【問い合わせ先】
川越市教育委員会文化財保護課☎049ー224ー6097
公式HP:https://www.city.kawagoe.saitama.jp/kurashi/bunka/1003787/1003798/1003828/1003868/1003869.html
取材・文=香取麻衣子 ※画像は主催者提供
香取麻衣子
ライター
1980年生まれ。『散歩の達人』編集部でのアルバイト経験を経て、2010年からライターとしての活動を開始。あだ名はかとりーぬ。『散歩の達人』では祭り&イベントのページを長らく担当。青春18きっぷ旅や山歩きなどのんびりと気ままにお出かけするのが好き。あとビールや美術館めぐりも大好物。