市民栄誉賞高橋さん 出会い大切に生きてきた 記念講演で半生語る
文化勲章を受章した逗子市桜山在住の詩人・高橋睦郎さん(87)の記念講演会と市民栄誉賞贈呈式が2月2日、逗子文化プラザなぎさホールで開催された。
第一部で高橋さんは母親への思いを詠んだ3編の詩を朗読。第二部の講演では生まれて間もなく、父親が亡くなり母子家庭として貧しかった暮らしぶりや、小学生の時に母親を自由にしてあげようと家出をしたことなど子ども時代を述懐。また、詩との出合い、三島由紀夫や詩と向き合うきっかけとなった呉茂一といった文化人との交流など、自身の半生を語った。
その中で、高橋さんは「人生において少なくとも3回は重要な出会いがある」と持論を展開。一つの出会いを大切にすれば、その一つが3つの出会いを呼ぶ。その繰り返しで出会いは無限に増えていく。「自分が出会いに恵まれたのは一つ一つの出会いを大切にしていたおかげ」と語った。
また、質疑応答で「書けなくて悩むことはあるか」という問いに対し、「悩み苦しむことが人生。楽しむことと分けて通れない。人生は"苦楽(くるたの)しい"もので、苦しいことが楽しいという風に思っている」と答えた。
第三部では桐ケ谷覚逗子市長から市民栄誉賞を贈呈された。賞を受けて高橋さんは「市民にとって名誉な行動をしなければならないとなると困る。文芸や詩歌は不名誉ことなしには成立しない。どこかで不名誉な行動を目撃しても見て見ぬふりをしてください」と笑いを誘った。
講演を聞いた70代女性は「海岸や買い物先で見かけていた人がすごい人で驚いた。話を聞いて人を引き付ける魅力を感じた」と印象を語った。