【アートカゲヤマ画廊の「北村さゆり展2025」】 歴史小説を通じた「シズオカ人」のつながり
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は藤枝市のアートカゲヤマ画廊で5日に開幕した「北村さゆり展2025」を題材に。
藤枝市出身の日本画家北村さゆりさんの地元での個展は、2021年度に行った藤枝市郷土博物館・文学館の「藤枝出身の日本画家 北村さゆり展」以来。
2階スペースにはデビュー当時から描いている「水面」のシリーズ最新作「映・春が揺れる」が、同サイズの下絵と並べて掲げられている。水の上に落ちる木々の緑、空の青がシャッフルされて新しい風景を生んでいる。日本画なのに、光の跳ね返りがどこかメタリックなのが不思議だ。
今村翔吾さんとの2022~2023年の朝日新聞連載「人よ、花よ、」は、全部で576枚挿画を描いた。今回の個展では代表作が掲げられている。今村さんはデビューのきっかけとなったのが2016年の伊豆文学賞最優秀賞。静岡県ゆかりの作家と言っていい。
北村さんと小説家とのコラボレーションを紹介する一角を見る。村松友視さん(静岡市出身)の「ゆれる階」の表紙にも北村さんの絵が使用されている。今村さんの「蹴れ、彦五郎」や羽州ぼろ鳶組シリーズの「恋大蛇」の表紙原画も掲げられていて、装丁としてクレジットされている芦澤泰偉さんが、これまた静岡市出身。「シズオカ人」があちこちでつながっているさまが見て取れて、うれしくなる。
1階スペースは花々を描いた小品を集めている。正方形の漆黒の画面に白梅の花弁。まるでまたたいているようだ。白黒が基調なのに鮮やかさを感じる。向かい合うようにして力感なく置かれた「庭の椿」や、横長の画面に音符のようにくりんくりんと赤唐辛子を並べた「トウガラシ」もいい。北村さんは、小さな自然物を使ってリズムを生むのがうまい。
(は)
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■アートカゲヤマ画廊「北村さゆり展2025」
住所:藤枝市小石川町4-10-28
営業時間:午前10時~午後7時(無休)
観覧料:無料
会期:1月19日(日)まで