武道館アイドルだった二瓶有加。25歳で週5コールセンター勤務時の苦悩語る「友達に言えなかった」
スタジオパーソルが運営するYouTubeでは、さまざまなはたらく人の履歴書から「私らしいはたらき方」について深堀りインタビューを行っています。
今回密着したのは、『佐久間宣行のNOBROCK TV』への出演をきっかけにブレイクし、現在は女優・タレントとして活動の場を広げる二瓶有加さんです。かつてはアイドルグループ『PINK CRES.』のメンバーとして武道館公演も経験。しかし、2021年のグループ解散後は、コールセンターでのアルバイトをしながら苦しい時期を過ごしていました。
自己否定と孤独の日々から、彼女は一体どんな強さを手に入れたのか。二瓶さんの言葉には、はたらく人々への温かなエールが込められていました。
※本記事はYouTube『スタジオパーソル』の動画一部を抜粋・編集してお届けします
捨てかけたアイドルの夢。覚悟を決めたきっかけは、1本のCMだった
二瓶有加さんは中学生のころから芸能界を夢見ていました。中学3年生の時に初めてAKB48・11期生オーディションに挑戦しますが、次第に現実を突きつけられたといいます。
「オーディションでは、周りの子たちがめちゃくちゃ可愛くてキラキラしていたんです。『あぁ、自分は東京の三鷹で生まれ育った、ただの“芋っ子”だったんだな』って気付いて、自信をなくしましたね」
その後も数々のオーディションに挑戦するも、すべてかなわず。唯一、AKB48・14期生オーディションでは、正規メンバーになる前段階の仮研究生(候補生)まで進むも、彼女はアイドルを目指す道から一度離れることを選びました。
「その時、彼氏がいたんです。アイドルになりたい気持ちはあったんですけど、AKBって恋愛禁止のルールが厳しかったから……。今はすごく好きな彼氏がいるし、別れることはできないと思って。当時は、見えない未来より目の前の幸せを選んだんですよね」
その後は大学生活を送りながら、居酒屋やパン屋などさまざまなアルバイトを経験。芸能界の夢を心の奥に残しながらも、ごく一般的な大学生活を送っていました。
そんな二瓶さんの人生が大きく動き出したのは25歳の時でした。アルバイトから帰宅後、ふとテレビをつけた瞬間に映し出された元Berryz工房・夏焼雅さんの新グループ『PINK CRES.』のオーディションのCMを見て、「受けよう」と直感的に決意。そして最終審査まで進んだ二瓶さんは、長年交際していたパートナーとの別れも決断します。
「『最終審査が決まったので別れてください』と伝えました。夢が目の前まで来ている。これが本当に芸能人になれるタイミングなのかもしれない。覚悟を決めなきゃって」
強い覚悟とともに念願の芸能界デビューを果たした二瓶さん。しかし、アイドルとしての現実は想像以上に厳しいものでした。
コールセンターで味わった挫折「もうダメだ、自分はクソだ」
「PINK CRES.」としてデビュー後、二瓶さんは武道館で華々しくお披露目公演を行います。しかし「全部先輩(夏焼雅さん)の力。自分を見に来ている人なんて誰もいない」と自信が持てない日々が続きました。
次第に自分のファンの存在を実感し、アイドル活動が楽しくなり始めた矢先、グループは2021年6月に解散。その後、芸能事務所に所属しフリーの女優として活動を始めた二瓶さんは、生活費を稼ぐためにコールセンターでアルバイトを始めます。週4、5日のシフトを入れながら、オーディションに通う日々。しかし、アルバイトでの仕事も思うようにはいきません。
「1件の電話対応が終わった後に、どんな内容の問い合わせだったのか、どう対応したのかをメモしなきゃいけないのに、それを忘れちゃう。『何回も言ったよね』って社員さんにきつく当たられて」
マルチタスクが苦手だったという二瓶さんは、基本的な業務もこなせない自分に打ちのめされていきます。特に心に突き刺さったのは、上司からの「なんで二瓶さんはこんなこともできないの?」という言葉でした。
「人格否定されたように感じて。自分が一番できてないって思ってることを指摘されると、『ああ、もうダメだ、自分はクソだ』って」
コールセンターのバイト先で同じように夢を追う舞台俳優や声優たちと机を並べながら、二瓶さんは自問自答を繰り返します。
「毎日毎日、コールセンターでバイトして、電車に揺られて帰って。『あれ、私何してるんだっけ?』って。自分は女優になるためにこの事務所に入ったはずなのに、目の前のアルバイトの仕事に追われて、夢って何だったっけ?って」
芸能の仕事からの収入は月7,000円という時期もありましたが、「元アイドル」というプライドが邪魔をして、友人たちに本当の状況を打ち明けられません。周りの友人たちが次々と結婚していく中、ご祝儀を払うとその月の生活費が底をつく。それでも「お金がない」とは言えず、孤独な日々が続きました。
さらに、映画、ドラマ、舞台など、数々のオーディションを受けるも全て不合格。「もうあきらめようかと思った」という二瓶さんは、目を潤ませながらも当時の苦しい心情についてこう語ります。
「でも、このコールセンターの仕事がなかったら、私は生活していけない。だから、どんなに嫌なことを言われても、『ここにいなきゃ』って耐えるしかなかったんですよね」
そんな中で、二瓶さんの心の支えとなっていたのが“見返してやる”という想いでした。
「自分は一生ここ(コールセンター)で生きるとは決めてなかったから。『いつかこの人を見返してやろう』『絶対売れて、次に道で出会った時に“あっ、二瓶さん見てます”って言ってもらえるまでになってやろう』って。半分、復讐心です(笑)」
そして二瓶さんは、変化を起こすための第一歩を踏み出します。
『NOBROCK TV』で空前絶後のブレイク。何があった?
自分の状況を変えるため、2022年に二瓶さんはYouTubeチャンネル「二瓶有加ch」を開設しました。アルバイトを減らし、そのぶんの時間を動画撮影や編集に充てるようになったのです。
「バイトの時間を減らすと目の前のお金は減る。でもそれ以上に大事なものがあるって気付いて。少しの間お金には悩むかもしれないけど、自分の未来のために時間を使ってみようと決めたんです」
さらに二瓶さんは、自身のファンクラブも開設。この積極的な姿勢が所属している事務所の目にも留まります。
「自分から動くようになると、事務所の人も注目してくれるようになって。そこから『こんなことやってみようか』『あんなことやってみようか』という提案をいただく機会が増えていったんです。そのうちの一つが『NOBROCK TV』でした」
YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」への出演をきっかけに、二瓶さんは見事に大ブレイク。お笑い芸人の下ネタに思わず笑ってしまうリアクションが視聴者の心をつかみ、2,000万回近い再生回数の動画も生まれました。
「それまでは女性タレントが下ネタや不謹慎なネタで笑っちゃいけない。イメージを損ねてしまってはいけないと思い込んでいたんです。でも思わず爆笑している自分の姿が出た瞬間に、それを面白いと言ってくれる人たちがいた。今までの自己分析って間違ってたのかなって思いました」
その後二瓶さんは、プロデューサーの佐久間宣行さんから受けた「テレビの仕事が増えるのは1年かかる」という言葉のとおり、ブレイクから約1年をかけて少しずつキャリアを広げていきます。『踊る!さんま御殿!!』への出演や、スマートフォンの縦画面に合わせてつくられた「縦型ドラマ」の主演も経験。今まさに活動の幅を広げつつある二瓶さんは、将来の夢をこう語ります。
「35歳までに結婚して子どもを授かりたい。たまごクラブの表紙を飾るのが夢なんです。そのために、たくさん売れて、経済的にもしっかりしたママになれるように頑張っています」
「自分らしさ」がよくわからない人へ
二瓶さんからはたらく人々へのメッセージをいただきました。
「自分らしさを自覚するのって、めっちゃ難しいと思うんです。でも私が最近やっとわかってきたのは、ダメな自分を認めてあげてからが始まりだということ」
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二瓶有加(にへいゆうか)(@niheiyuka.official)がシェアした投稿
「自分の短所は、他の場所に行けば絶対に長所になり得る。どんな短所も、環境を変えたらめっちゃいい長所になるときがある。だから、努力して、努力した結果もダメで報われないときは、周りのせいにしてもいいと思っています。『ここにいたら自分のこと嫌いになるな』と思ったら、その環境から離れていいんです」
最後に、希望を持って前に進むことの大切さを語ってくれました。
「全員が全員、自分のことを好きじゃないって念頭に置いておく。でも、『こんなのじゃダメだ』と思っていた自分を認めてくれる世界は、どこかに必ずある。私はそれを信じています」
※今回お伝えし切れなかったフルバージョンの動画はYouTube『スタジオパーソル』にて公開中
(文:間宮まさかず 編集:おのまり)