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1月からスタートの新作アニメ『全修。』過去のヒット作や話題作を連想させるしかけに注目!

アットエス

SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は『全修。』についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

あなたはもう見た?1月の新作アニメ『全修。』

1月からアニメが始まった『全修。』は、監督を山﨑みつえさん、シリーズ構成をうえのきみこさんが務めている作品です。「全修」とは、元々アニメ業界ではオールリテイク、全て直すといった意味。よくタイトルにつけたなとも思える、なかなか強いワードです。

主人公は高校を卒業してアニメーターになり、瞬く間にヒット監督になった広瀬ナツ子。注目と期待を集める新作のラブコメ映画の制作中に、傷んでいたお弁当を食べて食中毒で意識を失い、子どもの頃に繰り返し見ていたクセが強いアニメ映画『滅びゆく物語』の中に転生してしまいます。

何度も見ている映画なので、これから何が起こるかもわかっているし、キャラクターの設定も全部頭に入っています。それでその世界でアニメーターの力で世界を救おうとするお話です。

ポイントは、ナツ子が持っている「タップ」。アニメを描くときに紙を止める金具です。このタップが「描け」と命じると、突然作画机が現れて、瞬間的に絵を描いて、その絵が実体化して、ピンチを乗り切るという展開がお約束になっています。作画机が現れて絵を描いているところは、いわゆる魔法少女の変身バンク――毎回登場する変身シーンのことです――と同じ。「全修~」というコーラスも入っており、まさに『美少女戦士セーラームーン』の変身シーンを彷彿とさせます。

ちなみにナツ子の出世作『スケバン魔法少女暗黒学園』には主人公が「お天道様が許しても、アタイのイナズマが許さないぜよ」という決めゼリフをいうところがポイント。その主人公をセーラームーン役の同じ三石琴乃さんが演じています。というふうに、絶妙に過去のヒット作や話題作を思わせるものがあるところがポイントです。

第1話で、ヴォイドという謎のモンスターが出てくるのですが、それを倒すときにナツ子が描いたのが巨大なモンスター、まさに『風の谷のナウシカ』の巨神兵でした。ナツ子が倒れる前、アニメーション制作スタジオに作品のポスターが貼ってあったのですが、そこに『巨人物語』という作品がありました。

山崎監督はインタビューで、第1話に今後のヒントがあると言っているんですよね。第3話ではサーバルキャットマスクというキャラクターを作画で呼び出して格闘させるのですが、これは実質『タイガーマスク』でした。で、第1話では、やはりサーバルキャットマスクのポスターが貼られているのが確認できます。『タイガーマスク』の有名なナレーション「虎だ! 虎だ! お前は虎になるのだ!!」をもじって、ポスターには「猫だ!猫!お前は山猫になるのだ!」と書いてあるんです。

また第2話ではミサイルを大量発生させるのですが、これは『超時空要塞マクロス』で板野一郎さんが描いたミサイルの乱舞、いわゆる板野サーカスと言われるシーンです。しかもこのシーンの監修は板野さん本人が担当していました。
 第4話には、男性アイドルアニメ『うたう☆メンズアイドル』から超実在イグジストというキャラクターが出てきますが、声は『うたの☆プリンスさまっ♪』で一ノ瀬トキヤを演じていた宮野真守さん。三石さんの起用を含め、「本人かよ!」とツッコミを入れたくなるところが大変おもしろいです。小ネタのクオリティが担保されていないと、つらくなるだけの作品なので、そこをやりきってるのも素晴らしいですね。

そんな感じで、1個ずつ小ネタを出し、皆が見てきたアニメの記憶を利用して、やっぱりアニメは面白いなと再確認させる作りなのが本作です。後半戦のヒントになる可能性があるのは第1話に登場したポスターですが、他にあったのが『サムライ飯』『野球帰宅部』『移動戦士イクダス』。中でも『サムライ飯』は気になりますね。作画的にチャンバラのかっこいいアニメはいくつかあるので、参照先としてもありうるんじゃないでしょうか。

今後の展開で気になるのは、ナツ子監督が入った『滅びゆく物語』を作った鶴山亀太郎監督。彼も第1話で食中毒で死んでしまっているので、実は鶴山亀太郎も転生していて、最終的にラスボスとして出てきて、監督対監督になるのではないか……という想像もできます。

また、ナツ子が介入してピンチを切り抜けていくことで、入っている映画がストーリー通り展開していかなくなっているんですよね。そこも「全修」、映画そのものを修正していくという意味があるのだと思います。

そして最終的に、絵コンテに行き詰まっていたナツ子がなにかを掴んで、再び映画に挑めるようになるんじゃないかと思います。続きが楽しみな『全修。』のお話でした。

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