夏アニメ『サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと』会沢紗弥さん×種﨑敦美さんが語るキャラとのシンクロと収録現場の温度感|物語が進むにつれて少しずつ他人と話せるようになって心持ちが変わっていく、そんなモニカとリンクしていったところがあるのかなって思っています
TVアニメ『サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと』が、2025年7月よりTOKYO MXほかで放送スタートしました。
本作は、小説投稿サイト「小説家になろう」で累計1.3億PV、シリーズ累計発行部数100万部(紙・電子含む)を達成した依空まつりによるライトノベルを原作としており、魔術師の少女モニカ・エヴァレットが貴族の名門校であるセレンディア学園に潜入し、リディル王国第二王子フェリクス・アーク・リディルを護衛する極秘任務を命じられたところから物語が動き出します。
本作の放送に合わせて、アニメイトタイムズではモニカ・エヴァレット役:会沢紗弥さん&イザベル・ノートン役:種﨑敦美さんへのインタビューを実施。
放送開始直後ということで、出演が決定するまでの経緯や収録時のディレクションなどを中心に伺っています。また、おふたりが語る序盤のみどころや注目キャラクターも要チェックです。ぜひ、第1話の視聴前後にご一読ください。
【写真】アニメ『サイレント・ウィッチ』第1話放送直後 声優インタビュー:会沢紗弥×種﨑敦美
キャラクターを形作る一助となった金﨑貴臣総監督のディレクション
──いよいよ放送開始となりますので、まずは出演までの経緯や現在の心境からお教えください。
モニカ・エヴァレット役:会沢紗弥さん(以下、会沢):出演が決まった瞬間は事務所に居ました。マネージャーさんから「あれ落ちました、これ落ちました」とオーディションの合否を伺い、いくつも落ちた中で『サイレント・ウィッチ』のモニカ役が決まりましたと言われた形です。まだ私は生きていて良かったんだな……と素直に思いました。本当に嬉しくて嬉しくて、改めて原作を読み返したくらいです。
ただ、私はこのモニカ役が初めてのアニメ主人公になるのですが、作品に対する緊張とはまた別の緊張があったので、今まで携わってきた作品で主役を演じられていた方たちは、このプレッシャーとどうやって向き合ってきたのだろうかと疑問が生まれました。
役に向き合って演じるという部分は一緒なのですが、自分の演じるキャラクターが台本の表紙に描かれていたり、香盤表の一番上に自分の名前が書いてあったり、本当に今までにない経験をさせていただいて緊張していました。
──収録が始まった後も緊張は続いていたのでしょうか?
会沢:むしろ、敢えて緊張をほぐさないようにしていました。モニカというキャラクターはあがり症でオドオドしていて、誰かと上手に会話ができない。だから台本を持つ手が震えていたり、自分の心臓がバクバクしていたほうが、心情が乗りやすいと思ったんです。緊張していたほうが演じやすい感覚があったのでそのまま臨んだのですが、本当にモニカというキャラクターならではでした。
ですが、この作品はモニカの成長物語でもあるので、生徒会メンバーやお友達との関わりが増える度に現場にいらっしゃるキャストさんたちも増えていったように思っていて。私自身も色々なキャストさんやスタッフさんたちとお話させていただきながら現場に慣れていったので、物語が進むにつれて少しずつ他人と話せるようになって心持ちが変わっていく、そんなモニカとリンクしていったところがあるのかなって思っています。
──種﨑さんから見て会沢さんの緊張は伝わっていたのでしょうか?
イザベル・ノートン役:種﨑敦美さん(以下、種﨑):お芝居なのか素なのか、どっちなんだろうと思っていました。どちらもだったのが今わかりまして、ああ、そうだよなって共感しています。緊張具合はもちろんどのお芝居もずっと素晴らしかったです。
──ありがとうございます。種﨑さんも出演までの経緯や心境をお話しください。
種﨑:テープオーディションでイザベルとクローディアを受けていました。ふたりとも芯の部分を外すと全然違うキャラクターになってしまいそうで、どちらにもそれぞれの難しさがあるなと思いました。そして叶うならイザベルを演じたいと思っていたので、自分に任せていただけると知ったときはとても嬉しかったです。世の中にはたくさんの悪役令嬢的なキャラクターが存在していますけれど、悪役令嬢“風”に振舞うことはオーディション段階からわかっていたので、任せていただけるということはつまり「あなたが思う悪役令嬢を自由に演じてください」と言っていただけたような気がしたんです。
──会沢さんはイザベルの印象についていかがですか?
会沢:初登場時から高笑いをしていたので圧倒されっぱなしでした。モニカに助けてもらった恩を感じてくれていて、そこを発端としてモニカに対する愛も凄く感じられるし、イザベルはモニカの学園生活を支えてくれている存在だと思います。
──収録時、おふたりで何かお話をされたりはしたのでしょうか?
種﨑:会沢さんは主役で一番セリフ量も多いので真ん中に座られていて、私は端っこの席が好きなのもあり、物理的に距離が遠くて(笑)。なので遠くから、とても素敵なお芝居をされる方だなと思いながらずーっと様子を見ていました。お芝居をしている時、マイク前でよくモニカと同じ動きをしていましたけど、あれは自然と体が動いていたんですか?
会沢:私自身がどの現場でも体を動かしてしまうタイプなのですが、手をモニョモニョと動かしながら喋ることが多いモニカにあわせて、自分も手を動かしたほうがそういう声が出るかなって思ったんです。収録時は台本を持つので、片手でモニョモニョしていました。
──種﨑さんはそういった経験はあるのでしょうか?
種﨑:キャラクターによりますけど私もよく動いてしまう方だと思います。今回のイザベルも喋りながらよく動く子なので、姿勢から指先から収録に影響がない程度に自分も割と動いてしまっています。なのでとても共感しながら会沢さんのお話を聴いていました。
──おふたりでお話されることはなかったそうですが、他には何か収録現場で印象に残ったことはありますか?
会沢:金﨑貴臣総監督のディレクションからは、この作品の世界を優しくて温かいものにしたい、見てくれる人が温かい気持ちで終われるようにしたいという軸があるように思いました。本当に温かい現場だったなって思っています。
種﨑:私もそんな空気を感じていました。温かさがありながら、さらに芯を突いたことも言ってくださるんです。私が最初に言われたのが「悪役令嬢とっても素晴らしいです!素晴らしいんですけれど、伯爵令嬢なので品は忘れずに」というディレクションで、「たしかにその通りだな」と、すーっと自分の中にもおちてきました。それ以降も大事なことを柔らかくも的確にしっかり伝えてくださったのでありがたかったです。
──ありがとうございます。おふたり以外のキャスト間では何かお話されたりしましたか?
会沢:ネロ役の生天目仁美さんが、モニカのすぐ隣にいてくれるネロのように必ず私の隣に座って面倒を見てくださいました!
種﨑:私は毎回出番がある訳ではないし座る場所も特に決まっていないので、その都度隣にいる方も原紗友里さん、市川蒼さん、茅野愛衣さんと毎回変わっていました。でもその隣になった方々とはここぞとばかりにいろいろお話しました。
──ご自身の演じられる以外でおふたりが気に入っているキャラクターもお教えください。
会沢:私はシリル様(※シリル・アシュリー)が好きです。生徒会メンバーの中でも一番モニカに当たりが強くてツンケンしているのですが、結局一番面倒を見てくれるのもシリル様なんですよ。
モニカとしてはボケているつもりはないのですが、言葉が詰まって「ごっごっごめんな、さいっ」みたいに言うと「誰がスタッカートをきかせろと言った!」みたいにツッコミを入れてくれるんです。モニカとの組み合わせや掛け合いが楽しいキャラクターだなって思っています!
種﨑:私もそのスタッカートの下りは大好きでした! この先のエピソードもふたりの関係性が素敵なんですよ……!!
──種﨑さんは気になるキャラクターはいましたか?
種﨑:ルイスさん周りの女性が二人とも気になります。奥さんのロザリー・ヴェルデさんと、契約している精霊のリィンズベルフィードですね。ロザリーさんはあのルイスさんがしっかり惚れている方ですし、ふたりの時はどんな空気でどんな会話をしているんだろうなと気になっています。リンさんは言っていることが辛辣なようでしっかり的を射ているのであのルイスさんのそばにいるのがこの子で納得というか、とても良いなぁと思いました。
会沢:あの誰にも負けなさそうなルイスさんが尻に敷かれている家庭……そんなのもう気になりますよね。
リンさんは感情の起伏がほとんど感じられないけれど、“浮かれポンチ”みたいなちょっとトンチキなワードを使うんです。ルイスさんに平気でめちゃくちゃ失礼なことを言うし、そのワードセンスをどこから仕入れて来たのか気になる面白いキャラクターです。
イザベルの「発声練習をしてまいりましたの!」という台詞には注目!
──イザベルの登場シーンはかなりインパクトがあります。どのようなことを意識されましたか?
種﨑:登場というかモニカとちゃんと相対する最初のシーンですかね、あそこは第1話の冒頭でモニカを慕うことになる決定的な出来事があった上での場面ですし、その冒頭シーンからそうでしたけれど、イザベルは自分の立場ややるべきことをしっかり分かっているし、常に一本芯が通った行動をしている子なので、悪役令嬢っぷりも何もかも、「全ては救っていただいたモニカお姉さまのため」だと考えながらお芝居していました。ただただその一心で、イザベルなりにめちゃくちゃ練習してきたであろうものを思いっきりやったら、金崎監督に「品を忘れずに」と言われたという…(笑)でもそのシーンのおかげでそれ以降は「悪役令嬢風」以前に「真の伯爵令嬢」であることを常に意識していられました。
──モニカはそんなイザベルから慕われる訳ですが、このシーンはどのように見ていましたか?
会沢:モニカの口が×印になって「うん?」って圧倒されていましたけれど、私自身も似たような心境になりました。試しに悪役令嬢を演じた後に、突然「今のどうでした!?」って目をキラキラさせてあまりにもガラッと態度が変わるじゃないですか。私はその後の「発声練習をしてまいりましたの!」っていう台詞が大好きだし、この台詞を聴いて種﨑さんは本当に引き出しの多い尊敬する役者さんだなって思いました。
そういう面でもイザベルという面でも、私はモニカと同じように圧倒されたんです。「これはなんだ!?」みたいな。それに、私自身もモニカ自信も悪役令嬢についてそこまで深い知識があるわけではないので、ここで悪役令嬢という概念を学んだような気分でした。
種﨑:だいぶ偏ってそうな……(笑)。
一同:(笑)。
種﨑:後はアガサとの「流石です、お嬢様!」みたいなやり取りも、褒め称えるところなのかなって思うくらいちょっとズレていますし、このふたりの組み合わせも作品のポップでコミカルなところになっていて大好きです。
──種﨑さん的にどんな感じの悪役令嬢をイメージして演じたのでしょうか?
種﨑:とりあえず悪役令嬢といえばみたいなところがありますし、「オーホッホッホ」という高笑いが上手く行けば後は流れに乗っていけるのではという感じでした。先ほどもお話しした、品を忘れないでのディレクションをいただいたとき、腑に落ちるのと同時に「どうしよう、発声練習のところは絶対やりたい。けど言い方に品があるかどうかは分からない」と葛藤していたのですが、いやこれはやる!やろう!と決意して本番でやったらOKをもらえたので、ホッとしたのと同時に今後ここまではやっていいというラインも見えた気がしました。
──物語が動き出すきっかけとなった存在として、諏訪部順一さん演じるルイスの存在があるかと思います。モニカとは掛け合いもあったかと思いますが、彼の印象もお願いします。
会沢:ルイスさんはイザベルと違ってわかりやすいインパクトは薄いと思います。だけど、淡々と喋っているところから滲み出る恐ろしさ……怖さ……。そして、絶対に「はい」としか言えない環境を作り出す諏訪部さんのお芝居に震えました。
ちょっとしたミスをしてしまった時にモニカが想像したルイスさんに怒られたりするのですが、「ハッハッハッハッハ」という地の底から唸るような高笑いがモニカの脳内に響いて、拳の骨をバキバキ言わせているようなイメージが出てきたりします。それくらいモニカはルイスさんを恐れているんです。喋りには品を感じるのに、なぜだか怖い。本当に不思議です……!!
──種﨑さんはルイスについていかがですか?
種﨑:モニカは本気で「ルルルル、ルイ、ルイ……ス、さん……」って言っているのに、「人の名前をルルルルル、ルイ、ルイ……スなどと愉快な名前にしないでいただけますかな」って返していて。天然でやっているモニカに対してマジで返す。そういうブレないところが素敵です。
会沢:諏訪部さんはモニカの「ででででで、でも……!」とか、「ルルルルル、ルイ、ルイ……ス、さん……」とかの文字数をちゃんと拾ってくれるんです。本当に優しいです。
──そのあたりの文字数って台本上で決まっていたのでしょうか?
会沢:台本でも決まっていましたし、原作をチェックしたらそちらと数をあわせているようだったので、自分は1、2、3、4、5としっかり数えてメモしました。
種﨑:でもたとえ台本上では5個で、本番で1個多く言ったり少なく言ったとしても、多分諏訪部さんはそれにあわせてくださるんですよね。
会沢:本当にありがたかったです。
──最後に放送を楽しみにしている視聴者のみなさんへのメッセージをお願いします。
種﨑:人見知りであがり症のモニカがどのように成長していくのか。そして、護衛対象の第二王子フェリクスとどのように出会って近づいていくのか。序盤だけでも見どころだらけですし、最後までずっと面白いので、物語を堪能しつつモニカの成長を一緒に見守っていただけたらと思います!
会沢:原作の雰囲気がとても美しくて、そんな部分がきちんとアニメの映像に落とし込まれています。本当に綺麗だし、温かい作品になったと思います。推理もののようにモニカの得意な数学を使って、フェリクスの命を狙っている存在にも迫っていきます。点と点が繋がる瞬間があって、きっと「なるほど!」って思わず声が出ちゃうと思います。本当に作品の隅々までご覧いただけたら嬉しいです!
[文・胃の上心臓]