記者まちかど探訪 未来へ向けて再スタート 数少ない文具店の挑戦
全国で少子高齢化や、後継者不足、大規模小売店の進出といった問題から、商店街の衰退が叫ばれている。中原区内では、元住吉駅前など活発に活動している商店街がある一方で、商店街の構成主である個人商店が減少しつつある。
以前は、街中で見かけた個人経営の文房具店もその一つ。平間駅から向河原駅に延びる北谷町通り商店会の一角にある文具店「文具倶楽部クリップス」は、今や市内でも数少ない個人経営の文具店だ。今年創業70年を迎え、5月7日に「文具と推し活の店クリップス」としてリニューアルオープンした。
同店は、1955年に日用雑貨店としてオープン。70年に文具専門店、90年代に入り文具とギフトの店と、時代に合わせて少しずつ業態を変更してきた。3代目の山本守弘社長は「大規模小売店の影響もあり、年々お客さんが減って街の文具店は絶滅危惧種になってきた。時代に即したビジネスへの転換が必要だと思った」とリニューアルの理由を語る。
リニューアルに際し山本社長は、現状を徹底的に分析。来店構成は、地元の小学生や小学生を持つ親、昔馴染みの人たちであり、20代から30代といった購買力のある年代が少ないことがわかった。その世代に来店してもらおうと着目したのが「推し活」だった。スポーツやミュージシャンなどのオリジナルのグッズを一緒に作ることができるように、ワークショップを定期的に開催していくという。「店内で一緒に考えながらグッズを作る。お客さまと共有して自分たちも育っていきたい」と話す。
変化の激しい時代に個人商店としてどう生き残っていくか。「3代で店が終わるかもしれない。お客様とともに進化し、子どもたちが継ぎたいと言ってくれるように、20年後も存在し続ける街の文具店でありたい」。山本社長の挑戦は続く。