発達障害と不登校に関連はある?アンケート結果や不登校からの進学先、保護者の支援など【専門家が回答】
監修:井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
不登校、行き渋りとは?160人以上が回答!読者アンケート結果や令和5年度の統計結果など
不登校とは、心理的な問題や人間関係など、病気や経済的な理由以外で年間30日以上の欠席があり、学校に行けない状態のことを指します。不登校の原因は一人ひとり異なり、さまざまなタイプが考えられます。早期の介入と適切な支援が重要です。
行き渋りとは、学校に行きたがらない、または登校に時間がかかる状態のことです。毎日登校していても、本心としては「学校に行きたくない」「学校がつらい」などと感じており、新しい環境への適応の難しさ、人間関係の悩み、学習の遅れなどが原因として考えられます。お子さんの様子をよく観察し、何がつらいのかを一緒に探ることが大切です。
子どもに不登校がある…約25%
子どもに行き渋りがある…約31%
子どもに不登校があった…約7%
子どもに行き渋りがあった…約17%
不登校も行き渋りも特にない…約19%
※2024年12月16日時点の結果ですhttps://h-navi.jp/selective_surveys/209
発達ナビ利用者の皆さんへのアンケートの結果は、「子どもに行き渋りがある」が約31%で、次いで、「子どもに不登校がある」(※発達ナビ利用者へのアンケートのため、年間30日以上の定義を満たしてない可能性もあります)の約25%と続きました。過去に不登校、行き渋りがあった人数も含めると、約8割近くの方が不登校や行き渋りに悩まれているという結果になりました。不登校、行き渋りは発達に特性があるお子さんにとっては身近にある大きな悩みと言えそうです。
「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(文部科学省)によると小・中学校における不登校児童生徒数は346,482人(前年度299,048人)であり、11年連続増加し、過去最多となりました。
増加の背景としては、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」など児童生徒の休養の必要性を明示した法律が浸透し、保護者の学校に対する意識の変化などがあげられます。また、引き続きコロナ禍の影響なども考えられます。
しかし、特別な配慮を必要とする児童生徒に対しての早期からの適切な指導や必要な支援にもまだまだ課題があると言われています。
小学校からの行き渋り・不登校は中学進学後も続き……試行錯誤の結果は【発達ナビ読者体験談】
小3の頃の担任の先生の対応がきっかけで行き渋りが始まったASD(自閉スペクトラム症)の息子さん。その後発達障害をクラスメイトにからかわれるようになり不登校に。中学に進学後も行き渋り、不登校は続いていましたが中学生になった息子さんには小学校の頃とは違う「ある思い」があり……。
不登校や行き渋りのさまざまな原因、背景要因、保護者の方も心配されるところです。どのように息子さんが乗り越えたのか……気になった方も多かったようです。
不登校からの進学先は?学びの多様化学校(不登校特例校)やフリースクール、通信制高校などさまざまな学びの場所
出席日数と内申点に重点を置いている高校などでは受験が難しくなる場合もあります。 ただ、それらを重視しない高校や、不登校でも通いやすいさまざまな高校があります。
例えば通信制高校、フリースクール、学びの多様化学校などです。単位制ではない高校の場合、各科目ごとの出席日数が重視されるので、3年間通えるかも考えて親子で相談しながら進路を選ぶことが重要です。
通信制高校とは、インターネットやテレビなどの通信手段によって教育を行う高校です。学校教育法第4条において、通信制課程は「通信による教育を行う課程」とされています。さらに、通信制課程における教育の方法等については、「高等学校通信教育規定」に定められています。
自分のペースで学ぶことができることが特徴の通信教育。近年では学習時間や時期、方法などを自ら選択してスタートラインも目指すゴールも異なる多様な生徒に対して教育機会を提供しています。
フリースクールは法や制度などによって定められた学校でないため、その定義はさまざまです。文部科学省では「不登校の子どもに対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設」と示しています。
フリースクールは国からの助成金などはないですが、自治体からの助成金がある場合もあります。例えば東京都では小・中学生1人につき 月額最大2万円の助成金が適用されます。
※利用料が月2万円を下回っている場合は、利用料と同額となります。
自治体によって助成の有無や内容は違うので一度問い合わせをしてみましょう。
学びの多様化学校(不登校特例校)とは、不登校児童生徒の実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校です。
不登校児童生徒の学習状況に合わせた少人数指導や、勉強の進み具合によって指導方法を変えるなど一人ひとりの生徒に合わせた支援を行います。また、学校外での学習プログラムの積極的な活用など工夫されたプログラムが組まれている学校が多く見られます。学びの多様化学校(不登校特例校)は、一般の学校と同様に卒業資格や、大学や専門学校等の進学資格を得られるなどのメリットもあります。
令和6年度現在、学校数は35校となっています(公立学校:21校、私立学校:14校)。
専門家が解説!発達障害と不登校、行き渋りは関連あるの?対策や支援の方法なども
Q:子どもの発達障害と不登校や行き渋りに関連はあるのでしょうか?
A:かならずしもそのような訳ではありませんが、発達障害のない子どもと比較してそのようなリスクは高いと言えます。ASD(自閉スぺクラム症)の子どもは社会性(対人関係)やコミュニケーションに苦手さがあったり、こだわりが強いなどの特性があることが多いと言われています。
それらの特性から友だち関係がうまくいかない・環境に慣れないなどのトラブルやストレスが生じ、行き渋りや不登校のきっかけになる場合もあるとされています。
Q:不登校や行き渋り、保護者のできる対策や支援の方法が知りたいです
A:不登校に関してはできるだけ早期の対応をすることが重要です。登校したくない・休みたいなどの言葉が増える、朝起きない、食事や着替えに時間がかかる、学校を出る時間が遅れる、遅刻早退が増える、保健室で休む時間が多くなる、休み時間に孤立するなど兆候が見られた場合は何か学校でしんどいことがあるのかな、など本人のしんどさについて話を聞くことが大切です。
学校に行くように指示するだけではなく、本人の視点に立ってその気持ちを理解し、学校場面の環境調整や合理的配慮を進めていくことが大切です。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。