防災目的で購入するならここを確認! ポータブル電源を選ぶ前に押さえたい8つのチェック項目
自分や大切な人の命を守るライフハック、防災グッズレビューなどを防災士がお届けしている本連載。前回はポータブル電源の必要性と、おすすめのポータブル電源についてお伝えしました。前回の記事を読んで、実際に購入してみようと思った方もいらっしゃるでしょう。しかし、いざ購入しようと思っても、あまりに種類があってどれを選べばいいのかわからず、迷いませんでしたか? 私も実際に購入時、全く同じ悩みを抱えたものです。そこで今回は、「防災グッズ」としてポータブル電源を購入する場合に事前にチェックしておくべきポイントについて、わかりやすく解説していきます。最後にチェックリストもご用意していますので、ぜひ参考にしてみてください。
防災目的でポータブル電源を購入する際に必須の3つのポイント
防災目的でポータブル電源を購入するのであれば、必ずクリアしておくべきポイントが3つあります。
ポイント1:パススルー充電に対応している
1つ目のポイントは、パススルー充電に対応していることです。パススルー充電とは、ポータブル電源を充電しながら、接続した他機器への給電が可能となる機能です。ポータブル電源は蓄電して使うものなので、緊急時に使うためには基本的に、常にフル充電を維持しておかなければなりません。
そのため、防災目的でポータブル電源を備える際には第一に、パススルー充電に対応している必要があります。その上で、普段からポータブル電源を介してスマートフォンなどを充電するようにし、蓄電しながら電気を使っていくことが重要です。
パススルー充電対応なら、ポータブル電源を充電しながら給電が可能に
ポイント2:BMSが搭載されている
2つ目のポイントは、BMS(バッテリーマネジメントシステム)が搭載されていることです。BMSとは、ポータブル電源の安全管理機能を指します。先述の通り、ポータブル電源を災害時に使用するのであれば、フル充電の状態をいつも維持しておくのが重要です。
とはいえ本来、フル充電の状態を長時間維持し続けることは、電子機器にとってあまり良くはありません。過充電や過放電の状態となりやすく、電池の劣化や温度異常、発熱、発火等の危険を引き起こす可能性が高まるからです。
しかし、ポータブル電源にBMSが搭載されていれば、過充電や過放電、出力過電流・過電圧、温度異常などのあらゆるリスクを常に監視・制御してくれます。そのため、日常的に蓄電をしながらでも、安全にポータブル電源を使うことができます。
パススルー充電ではバッテリーにより強い負荷がかかるため、パススルー充電対応のポータブル電源であれば基本的に、BMSも搭載されていると考えて問題ありません。ただし、極めて安価な海外製品や古いモデルでは搭載されていないケースもまれにあるため、購入時にきちんと確認するようにしてください。
ポイント3:リン酸鉄リチウムイオンバッテリーが使用されている
3つ目のポイントは、内蔵の電池にリン酸鉄リチウムイオンバッテリーが使われていること。発火や熱暴走のリスクが低く安全性の高い電池で、耐久性が高い、長寿命、といった利点もあります。
繰り返しになりますが、防災目的でポータブル電源を使用する場合は、フル充電の状態を長く維持することから、温度異常や発火などのリスクが比較的高くなります。BMSが搭載された製品なら安全性に問題はないものの、電池に関しても、より安全性の高さを重視するのがベターです。
ポータブル電源の購入前に、確認しておくべき4つの数値
加えて重要なのは、災害時の「どんなシーンで」「どういう用途で」ポータブル電源を使用したいかを明確にしておくことです。利用シーンや用途によって、購入すべきポータブル電源のスペックが決まります。
ポータブル電源を購入する際は、「定格出力」と「消費電力」について事前に確認しておきましょう。これらの数値を確認しないままなんとなく製品を選んでしまうと、使用したい電子機器をポータブル電源に接続しても、動かない可能性があるので注意が必要です。
「定格出力」と「消費電力」について
定格出力とは、ポータブル電源が安定的に出し続けられる電力の大きさのこと。また、消費電力とは、電化製品を動かすのに必要な電力の大きさのことです。どちらもW(ワット)という単位で表されます。
ポータブル電源を利用するには、接続する電子機器の総消費電力が、ポータブル電源の定格出力以下でなければなりません。
図表1:ポータブル電源が稼働するための条件(1)
ポータブル電源に記載の「スマートフォンならn回充電可能」などの表示も参考にすると良い
たとえば、定格出力800Wのポータブル電源を購入した場合。図表2に照らし合わせて考えると、このポータブル電源では、電気ケトルは物によって使えても、電子レンジやIHヒーターは使えないことになります。一方で、スマートフォンやノートPC、電気毛布は、同時に接続してもまだ余力があります。
図表2:主な家電の消費電力の目安
家電名消費電力の目安電気ケトル約800~1300W電子レンジ約900~1450WIHヒーター約1200~3000Wスマートフォン約5~18W(充電時)ノートPC約30~100W冷蔵庫約100~600W(大きさや年式により変動)扇風機約30~70W電気毛布約40~60W
「起動電力」と「瞬間最大出力」について
起動電力とは、電化製品が動き出す瞬間にのみ一時的に必要となる大きな電力のこと。ポータブル電源が使用する機器の起動電力に対応できていない場合、フル充電の状態でポータブル電源に接続したとしても、機器を動かすことができません。
冷蔵庫など、モーター (コンプレッサー)を搭載した機器では、動き始めに大きな力が必要となり、起動電力が消費電力の数倍にもなる場合があります。たとえば、消費電力150Wの冷蔵庫の起動電力が、 450~750W(消費電力の3~5倍)になるケースもあるのです。
図表3:ポータブル電源が稼働するための条件(2)
冷蔵庫や電子レンジ、エアコン、ドライヤーなどは、起動電力が大きい
ポータブル電源購入時には「瞬間最大出力」という項目を確認し、これが使いたい機器の起動電力以上となっているかをチェックしてください。
そのほか、もしもの備えとしてポータブル電源を購入するならあると良い機能も含めて、下記のような事前チェックリストを用意しました。優先度の高い順に並べてあるので、これを見て購入すれば安心です。
図表4:ポータブル電源購入時の8つの事前チェックリスト
パススルー充電に対応している BMS(バッテリーマネジメントシステム)を搭載している 電池に安全性の高い「リン酸鉄リチウムイオンバッテリー」を使用している ポータブル電源の「定格出力」と使用したい電子機器の「消費電力」を確認済み ポータブル電源の「瞬間最大出力」と使用したい電子機器の「起動電力」を確認済み 出力ポートの種類と数が十分である ソーラー充電に対応している 急速フル充電に対応している
ポータブル電源は決して安い買い物ではないからこそ迷うものですが、かといってコスパばかりを優先すると、安かろう悪かろうでかえって失敗することも……。「安心を買う」と思って、重要なポイントは必ずチェックした上で、質の良い製品を選んでくださいね。