プレ幼稚園で気になった息子の発達。発達外来は2ヶ月待ち!?紹介状は必要?事前に用意して正解だったもの
監修:初川久美子
臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
発達外来を受診したい。どこで紹介状をもらう?
1歳頃から発達に不安なところがあったたーちゃん。
2歳半から通い始めたプレ幼稚園で集団行動ができない様子を見て、発達外来で診てもらいたいと思うようになりました。
しばらくして、近所の診療所にて、発達外来のある大きな病院への紹介状を書いていただきました。
もともと、この診療所では児童発達支援を利用するために必要な意見書を書いてもらうだけのつもりだったのですが、先生から「専門の病院で詳しく診てもらったらどうでしょうか」と紹介してもらえたのです。
恥ずかしながら、発達外来への紹介状を手に入れる方法が分からず困っていたので、思いがけず解決して幸運でした。
紹介状を手に入れ、早速予約の電話をしました。……が、電話がとても込み合っていて、何度かけても全くオペレーターに繋がらず、不安になりました。私はそれまで大きな病院にお世話になった経験がなかったので、電話の呼び出し音が鳴っている間もずっと緊張していたのを覚えています。
そしてなんとか予約できたのは2ヶ月後。
もし診察を急いでいるなら、早めに行動したほうが安心だなと思いました。
息子を連れて、ドキドキの初受診……!
自宅の最寄り駅から電車に揺られ30分……着いたのは、私ですら緊張してしまうような大きな病院でした。初めての場所や人の多いところが苦手なたーちゃんはとても不安だったようで、まず病院に入ることができませんでした。脱走しようとするのをなんとか抱っこでなだめて、院内に入りました。
隙あらば走り出そうとするたーちゃんを押さえながら、問診表に生育歴や発達で気になる点を細かく書きます。あらかじめ書いておいたメモを持ってきていたので、スムーズに記入することができました。
そして長い待ち時間をなんとか耐えたあと、いよいよ診察です。
たーちゃんが人見知りと場所見知りで癇癪を起こさないか、入室する瞬間は特にハラハラしていました。ですが、ありのままの子どもの様子を見てもらうという点では、癇癪を起こしてしまっても良いのかもしれないと今は思います。
いざ、診察!どんなことを聞かれるの?診断結果は?
まず、先生とテーブル越しに対面するようにたーちゃんが座り、「お名前は?」「何歳?」など、簡単な質問をされました。
ほとんどの問いにたーちゃんは単語で答えることができましたが、「誰と一緒に来たの?」「どうやって来たの?」の問いは難しかったようです。
部屋には先生以外にもう一人いて、診察室に入った時からたーちゃんの様子をその方が観察・記録していたのだと思います。その後、診察室内のブースでその職員さんとたーちゃんが遊んでいるところを先生に見ていただきながら、自宅や幼稚園での様子や、困りごとは何かなどを伝えしました。
1度目の診察でははっきりと診断はされませんでしたが、ASD(自閉スペクトラム症)の可能性が高いと伝えられました。そして、幼稚園2:療育3くらいの割合で通ったほうが良いだろうと言われ、さらにショックを受けました。
「年少になったら、週に5日お友達と幼稚園に通うのだろうな」と漠然と想像していた未来が崩れてしまったような気持ちになったのかもしれません。
しかし、実際に、プレ幼稚園での集団活動が難しい状況を見ていたので、先生のアドバイスに納得もしていたと思います。
そして3ヶ月後、2度目の受診。3歳前で診断が……?
初診から3ヶ月後、2度目の受診をしました。診察は前回とほとんど同じ流れでしたが、たーちゃんは前回よりも受け答えができていたと思います。
そして最後に、「ASD(自閉スペクトラム症)です」とはっきり先生から伝えられました。
「そうではないと言ってほしかった」という気持ちももちろんありましたが、覚悟はできていたので落ち込むことはありませんでした。初診からの3ヶ月という時間は、私が障害を受容するためにも必要だったのかもしれません。
しかし、覚悟はしていたものの、2回目の受診、それも3歳前に診断されるとは予想していませんでした。けれども、「診断書を書いてください」とその場で先生にお願いしました。
実は幼稚園にASD(自閉スペクトラム症)かもしれないということを話してあり、「診断書があれば提出してほしい」と園長先生から言われていたのです。
近所の診療所で紹介状をもらった時はその場で書いてもらえましたが、診断書は即日発行というわけにはいかなかったようで、後日郵送で送られてきました。
診療所で紹介状をもらってから約4ヶ月ほど経って、ようやく診断書を手に入れることができました。もし児童発達支援の利用に診断書が必要だったならば、その間児童発達支援の利用ができなかったと思うと震えます。
現在のたーちゃんと発達外来の付き合い方
たーちゃんはその後、1年に1度の頻度で診察を受けています。その時々での困りごとや悩みに、専門の先生からの意見をいただけることがありがたいです。発達外来の先生から伝えられたことは、幼稚園の先生や、児童発達支援の支援員さんにも共有しています。
そうして、たーちゃんへの理解や環境の整備がより良い方向に進んだらいいなと思っています。
執筆/みかみかん
(監修:初川先生より)
初めての発達外来のエピソードをありがとうございます。同じような経験をされた読者の方からすると、そうだったそうだったと懐かしく感じるような、不安やどきどきハラハラのエピソードだったことだろうと思います。発達外来などの専門外来を受診を検討する場合は、医師による紹介状が必要なことが多いので、かかりつけの小児科の先生に相談してみるのがまずは良いと思います。専門外来はなかなか電話がつながらない(さながらチケット争奪戦)ことも多いですね。混んでいるところだと半年くらい待つこともありますので、そうした心づもりもあったほうがよいかもしれません。
初めて訪れる病院への場所見知り・人見知りはひやひやしますね。ただ、みかみかんさんも書かれていたように、癇癪を起こしてしまってもその様子を見ていただけばよいと思って、あまり萎縮しすぎなくても大丈夫かと思います(そうはいってもハラハラされると思いますが)。
初めての受診、初めての(相談機関への)相談だと、だいたい生育歴の記入を求められます。事前にまとめておかれたのはさすがです。その場で母子手帳を見ながら振り返るとどうしても時間がかかってしまいます。病院によっては、Webサイトなどに生育歴のフォーマットがダウンロードできるようになっており、家で記入して持参するところもあると思います。
診断された際の気持ちについてもシェアありがとうございます。受診の間隔によって生まれる時間が心の準備をするための時間となったとのこと。そうですね。さまざまな想定をされながら受診されたと思いますが、いよいよという場面でもいろいろな思いが逡巡することと思います。
服薬の必要によっても、またお子さんの状態によっても診断後の通院の間隔はさまざまです。ともあれ、お子さんが健やかに育つにあたってのパートナーに医療機関が加わったのは心強いですね。定期的にお子さんの相談をできる場所が増えたこと、何よりです。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。