Golf CaddyをAutomobile Council 2025に展示します! Der FREIRAUM デアフライラウム“自由な余白” ♯28
しばらくビショフベルガーキャンパーの記事が続きましたが、その間にCaddyのレストアは着実に歩みを進め、気がつけば最終局面に。約600日に及んだレストアが、いったんの終了を迎えます。4月11(金)〜13(日)日に開催されるAutomobile Council 2025にて、完成した姿を披露しますのでぜひご来場ください!
600日の間、私は1983年式・初代Golf Caddyを構成する、ほぼ全てのパーツを目にしたと言えそうです。シャシーは、文字通りボルトの一本まで分解しました。クルマ一台をフルレストアすることがこんなに大変だとは……こんなの、到底一人ではこなせませんでした。
技術、メカニズムの知識、スペアパーツの見定め、場所に設備に時間に費用、そして折れない心……サビもなく綺麗にサフェーサーが塗られたフレームを見た時は、百倍カンタンに考えていました。あまつさえ、そのままボティカラーを塗れるとまで考えていました。
2023年の盛夏に尼崎の中央自動車鈑金工業所に運び込まれたCaddyは、最高のケアを受け、当初の目的であった「新車当時の佇まい」が見事に再生されました。ディーラー、いや、工場ラインから出て来たばかりのようなボディは、新車以上と言っても良い手のかけ方で蘇りました。
レストア開始時に掲げたもう一つの目標は、幕張メッセでの自動車ショー、Automobile Council 2025 に出展展示すること。あの日遥か遠くに見えた目標が、もう、目前に迫りました。
新型車生産を上回るほどのコダワリ
オーストリアの実車Golfコレクター・ヨーゼフから衝撃のフレーム写真が送られてきたのが2019年。そこから、数えきれない出来事がありました。穴の空いていたルーフパネルをスペアのパネルと取りかえ、切り取られていたキャビンと荷台の仕切りを再生し、よく見れば凹んだクォーターパネルや、凸凹だらけのドア、フェンダー、ボンネットを、中央自動車鈑金工業所の主に若いスタッフたちが、それぞれの受け持ちパネルごとに度重なる鈑金作業を施し、Caddyは少しずつ美しい面を取り戻していきました。
そして、時を前後して、ボロボロだったオリジナルのホイールを再生したのですが、なんと、自ら塗装体験をさせていただけることになり、4本のホイールとサスペンション類のシャシブラックをペイントする機会を戴きました。最高の環境と道具のおかげで、それらは自分で塗ったとは思えない仕上がりとなり、少しでもこの手でCaddyの仕上げに参加できたことを嬉しく思いました。
さて、鈑金チームからペイントチームへバトンが渡され、今度は徹底的な塗装へ向けた下地づくりに入ります。こちらでも、想像をはるかに超える作業が展開し、特に、金属のボディパネルといわゆるボディ色となるベースコートの間に塗られるサフェーサーは、これでもか、というくらい何度も塗られ、その度ヤスリがけが施されていました。粉まみれのスタッフの足元には驚く量の削り粉が蓄積しています。そんな工程を3回も4回も繰り返し、ボディの小さな傷や歪みが取り除かれていきました。
1日、サフェーサーの乾燥を待って、いよいよ、ボディカラーの塗装工程に進みますが、その前に、シーリングという作業が施されました。これは、溶接パネルの合わせ目などに水が入らないようにシール材を盛る作業です。エンジンルーム、キャビン、そしてタイヤハウス。このキメの細かさは、新車以上のクオリティかと思われます。
ふたり同時に塗るのには理由がある
そしてようやく、“カーベキュー”台に備え付けられたCaddyのフレームが、最新鋭の塗装ブースに納められ、隔壁が降ろされます。ブース内では空気の循環が始まり、設定された適正温度に室温が上昇、その間に、調色室では塗料の調合が進みます。「ガンビアロート」という名のワインレッドのような赤。
以前の連載で述べたとおり、そのもののペイントが用意されているわけではなく、塗るたびにレシピに基づき調合します。全てのカタログ色が再現できるデーターベースがあるのです。そして、同じガンビアロートにも3つのバリエーションがあり、それぞれ配合や調合する色の数が違っています。ちなみに、私が選んだガンビアロートV2は、5つの色から構成されていますが、6つから構成されるガンビアロートもあるのです。
さぁ、いよいよボディの本塗装が始まります! 一台を丸ごといっぺんに塗る、ということで、2名のペインターさんがブースに入ります。一人だと、反対側を塗る前に乾燥が始まってしまい、色に差が出てしまう可能性があるためです。それくらい、プロの塗料は乾燥も速い。まるで宇宙空母の発着デッキのような塗装ブースで、淡いグレーのフレームがみるみるワインレッドに染まっていきます。
まずは、エンジンルームとキャビン、そして床下が塗られ、続いてボディ外側を塗る段取り。Caddyはトラックなので、荷台があります。普通の自動車とは違って「箱の内側」を塗らねばならないため、足場の確保も大変。塗料の吹き返しで、スプレーガンも赤く染まっています。当然、ペインターさんもそれを浴びてしまうわけですが、中央自動車鈑金工業所では、R-M®️という環境や人体への影響に配慮した最新の水性塗料を採用し、どんどん空気を入れ替えるブースの換気設備と共に、働く人のことを思う最新工房が設えられているのです。
予期せず現れた漆黒のボディ
さて、そうこうしているうちに、今度はトップコート、いわゆるクリヤーが準備されます。これも、毎回調合するのです! シャシー裏は半ツヤ、キャビンとエンジンルームは艶ありで仕上がりました。ここでしばらく間をおいて、ボディの外側の塗装に進みます。ここからは、ドアやボンネットのフィッティングなども出てくるため、カーベキュー台を卒業、特別に作ってくださったCaddy専用架台に載せ替えます。
さぁ、再びガンビアロートの調色に入るかと思いきや、なんと、ボディを一度「黒」に塗るとおっしゃるではありませんか! ピアノのような黒に塗ることで、ボディパネルのヒズミが見えやすくなるというのです。なんというこだわり! なんという手間……頭が下がります。
このCaddy、ボディ後半のサイドパネルが、通常のGolfにはない非常に長い平面を持っています。そこには、リヤタイヤのアーチがあったり、右側には給油口があったりで、その周辺がどうしても歪んでしまっているそうです。Caddyはいわゆる小型トラック、ガンガン使われる商用車ですから、メーカーもそこまでの精度で歪みを取ろうとは思っていなかったに違いありません。
しかし、そこは中央自動車鈑金工業所。自らの技の向上、そして仕上げたボディが全て、というこだわりで「赤く仕上げる車を一度黒で仕上げる」という、半端ないクラフトマンシップの発揮を目の当たりにしました。
前回赤く塗った部分をマスキングし、ボディ外側の平面に黒が吹き付けられます。乾燥後、クリアーコートまで施され、目の前には予想だにしなかったBlack Caddyが出現しました。これはこれでカッコイイ。呑気にうっとり眺める私と違い、プロたちの目は厳しくボディを睨みつけています。特に、給油口側の長いパネルが気になる、と社長。素人目には、ほぼ完璧です。でも、ほぼ、ではダメなのだ、と。
ピアノのような黒い艶は、映り込むライトの光を容赦なく反射し、言われてみれば……というレベルの歪みが確かにあるような気がします。フェンダーやテールゲート、ボンネットまで黒く塗られ、完全にBlack Caddyとして納車できそうな艶です。
そして、私が工房を後にした翌日、妥協なき中央自動車鈑金工業所の皆さんは、気になるボディ右サイドの凹みを消そうと、再度奮闘されたのです。そして迎えた3回目の塗装工程。前回塗った艶々の黒いボディパネルが容赦無くサンディングされています。時折、手のひらで凸凹を確かめながら、より完璧な平面を作ろうと下地づくりが進められます。ボディが塗装ブースに入ってもまだ、サンディングが続きます。
そしてマスキングされ、もう何度目かわからないくらいのサフェーサー塗装が施されると、いよいよ”ガンビアロート”の出番です。今度こそ本塗装、私は固唾を飲んでその過程を見守ります。クリアまで塗られ、深い紅のボディが姿を表しました。誰もが満足している……とこの時は思いました。翌日私は、再び驚きの光景を目にすることに。そしてさらに、さらにその先に怒涛の組み立て作業が続くのですが、今回は紙幅が尽きてしまいました。
あまりにドラマがありすぎて、書ききれませんでした。このように「徹底的に仕上げられた」Caddyを、4/11-13に開催されるAutomobile Council 2025に展示します。昨年に引き続き、Project Caddyとしての個人出展です。新車当時の、カタログの仕様のまま再生した1983 VW Caddyを、ぜひ、幕張メッセでご覧ください。
会場には、実際に鈑金塗装に携わったスタッフ、ペイントのR-M®️スタッフもいらっしゃいますので、このレストア物語について、直接お話を聞いていただければ幸いです。
関連動画
塗装篇1
塗装篇2
塗装篇3(本塗装)