介護は要介護認定から始まるわけではなかった!40代から知っておきたい「親の介護」でもっとも大切なこと
今年2025年、団塊の世代の約800万人が後期高齢者となり、およそ5人に1人が75歳以上になります。介護は突然始まることが多く、何から手をつければいいのかわからず戸惑う人も少なくありません。いずれ訪れる日のために、知っておくといいことはあるのでしょうか。経済産業省で健康・医療・介護などヘルスケア領域の政策立案を担当している水口怜斉さんにお話をうかがいます。
教えてくれたのは……経済産業省 水口怜斉さん
経済産業省に入省し、スタートアップ支援や起業家育成、2025年大阪・関西万博関連業務などに従事。現在は健康・医療・介護分野を横断したヘルスケア領域の政策立案を担当。働く家族介護者に対する支援や、介護を個人の課題からみんなの話題へ転換することを目指す「OPEN CARE PROJECT」の立ち上げメンバー。その他、医療の国際展開やヘルスケアスタートアップ支援に関する政策も企画・推進。
日常の何気ないサポートから介護は始まっている
「最近、調子が悪くて……」「スマホを買い替えたら、使い方がわからなくなったよ」。こんな連絡が親から届くことはありませんか? まだ介護が必要なわけではないしと、自分の予定を調整してやりくりしている方が多いかもしれませんが、経済産業省で介護関連サービスの拡充に携わっている水口怜斉さんは、「そうした小さな積み重ねが大きな負担になることもある」と話します。
水口さん 「介護は、明確な始まりがあるわけではありません。親を病院や買い物に連れて行くなど、日常のちょっとしたケアからじつは介護が始まっていることも往々にしてあります。繁忙期に親の用事にあわせて有給休暇を取得するなどの必要に迫られて困ることもあるかもしれません」
水口さん 「介護は精神的な負担が大きく、すべて家族で行うのは大変です。介護が本格的に始まってからはもちろん、本格的に始まる前から早めにプロに頼るのもひとつの方法です」
早期からプロに頼るメリットとは
「早くから介護のプロに頼るのもひとつの方法」と水口さん。いざというとき最初に頼るべき相談窓口として「地域包括支援センター」の名前を挙げています。
水口さん 「各市町村には、『地域包括支援センター』が設置されています。介護が必要になったときは、まずは親が住んでいる場所の地域包括支援センターに相談すると知っておきましょう。地域包括支援センターは、地域の高齢者の健康を支えることが主な役割で、要介護を受けていない65歳以上の方も支援対象です。要介護認定を受ける前に、親の支援を相談することもできます」
水口さん 「地域包括支援センターの業務のひとつに『総合相談』というものがあります。総合相談は、高齢者の困りごとに対して、必要なサービスや制度を紹介して解決することを目指しています。たとえば、ご自身で買い物するのが難しい場合、シルバー人材センターを利用した日常生活のサポートや、連携している地域の事業者による支援プログラムなどを比較的安価で利用することができます。そのほかシニア向けのジムや外出支援などのサービスを行う事業者のプログラムを紹介してくれる場合もあります。こうしたサービスがあることを知っておくと、いざというときの手立てになります」
健康寿命を延ばすことが介護予防につながる
早くからプロに頼ることにためらいを感じるということもあるかもしれませんが、「介護が必要になる前、たとえば足腰に不安が出てきたような状態から健康な状態に戻していくことが非常に大事になってくる」と水口さんは話します。
水口さん 「早いうちから公的サービスや民間サービスを利用することで健康寿命が延びるのはご本人にとって何よりのことですし、健康寿命が延びるということは、介護の期間が短くなるということでもあります。要介護になってから対処するより、フレイルと呼ばれるような虚弱状態から、元気な状態、自分で日常生活を行える状態にいかに戻すかが大切です。支援が必要なご本人が利用可能なサービスに気づいていないケースも多いので、その子ども世代である40代からこうした情報を集めておき、家族からサービス利用をうながすことも大切になってくると思います」
早めにプロの力を借りることが、介護の予防にもつながるのですね。次回は、親が元気なうちにしておきたい「介護の備え」について水口さんに教えていただきます。
saita編集部