福岡空港の第2滑走路が3/20供用開始、3/28には国際線ターミナルがグランドオープン
〝日本で一番便利な空港〟と言われる福岡空港は2025年3月20日、第2滑走路の供用を開始し、同月28日に同国際線ターミナルがグランドオープンします。福岡空港は2025年2月1日現在、国内線28路線・国際線24路線が就航し、2024年の旅客数は過去最高の2, 675万5,262人(大阪航空局調べ(速報値)』)にも上り、今後が注目されます。
2025年3月20日、待望の福岡空港第2滑走路が供用開始!
出所:国土交通省『福岡空港滑走路増設事業の供用について~観光・MICEの促進、地域経済への波及効果などの効果が期待されます~』
既設の福岡空港第1滑走路の西側に建設された第2滑走路が、2025年3月20日にいよいよ供用を開始する。
従来、全長2,800メートルの滑走路1本での運用だった福岡空港は長年、“日本一の過密空港”と言われ、遅延や混雑の常態化、さらにピーク時間帯の増便が難しいという課題を抱えていた。
今回、2本目の滑走路として増設された全長2,500メートルの第2滑走路が供用されることで航空機の離着陸可能な滑走路処理能力の増加が期待されている。
その第2滑走路は今後、原則として国際線の離陸用として使用されていく予定だ。
また、第2滑走路増設の事業費は1,643億円だった。
福岡空港での第2滑走路の供用開始に先立ち、国土交通省は国際線地区に高さ94.2メートルの新管制塔を建設し、2024年12月から業務を開始している。
羽田空港の管制塔(高さ115.7メートル)に次いで、日本国内の空港で2番目の高さとなる福岡空港の管制塔は、第2滑走路の増設に合わせて、国際線地区へ移転・新設した。
新管制塔と国土交通省大阪航空局福岡空港事務所庁舎
福岡空港80周年の歩み、そして第2滑走路増設へのタキシング
手前の滑走路が第2滑走路、奥の滑走路が第1滑走路
福岡空港の前身である席田飛行場は1945年5月、日本陸軍の手によって完成した。
試作機『震電』が、終戦直前に初飛行をしたことでも知られる同飛行場に600メートルの滑走路が設けられ、飛行場用地の広さは221万5,000平方メートルだった。
終戦後、飛行場用地は旧所有者に返還されたものの、占領軍の進駐と同時に接収された。
そして、土地の賃貸契約が結ばれて、板付飛行場としてのスタートを切る。
米軍によって拡張された板付飛行場は朝鮮戦争勃発で前線基地となる中、1951年に国内線(福岡~大阪~東京)が就航した。
国際線(福岡~釜山)も1965年に開設している。
2002年12月の交通政策審議会において、「福岡空港は、将来的に需給が逼迫する事態が予想される」との答申がなされた。
そして、2003年度から国(九州地方整備局、大阪航空局)と地域(福岡県、福岡市)が連携・協力して、『総合的な調査』に加えて、住民らの意見を募るパブリック・インボルブメント(PI)を実施した。
既存ストックの有効活用策として2012年、国内線ターミナルビルのセットバックと平行誘導路の二重化工事に取り掛かり、2020年1月に完了した。
この間の2016年3月、航空法上の混雑空港に指定された福岡空港の滑走路処理能力は、年間16万4,000回とされた。
その後、国内線ターミナル側の平行誘導路の二重化工事を終えた福岡空港の滑走路処理能力は、年間17万6,000回へ増えている。
一方、総合調査やPIは、2009年4月に終了した。「新空港建設か」「現空港での滑走路増設か」という議論について、住民の声として、現空港での滑走路増設を支持する声が多かった。
そして、福岡県と福岡市から現空港への滑走路増設の要望が国に上がった。
このため、滑走路増設の構想・施設計画段階へ移行して2012年8月、環境アセスメントに着手。
2015年度から始まった滑走路増設工事は、空港の発着が行われない22時30分~翌6時に行われた。
そして、当初の予定通り2024年9月末に第2滑走路が完成している。
なぜ第2滑走路が供用を開始しても離着陸回数は小幅増なのか?
福岡空港の国内線ターミナル側の駐機場
今回、第2滑走路が稼働した福岡空港の滑走路処理能力は当面、1時間あたり38回から同40回、年間で1万2,000回増の18万8,000回となる見込みだ。
なぜ、滑走路が2本になった福岡空港の滑走路処理能力は、小幅増にとどまるのか。
一般的に空港の滑走路処理能力は、平行滑走路の中心線からの間隔とターミナル地区の配置によって異なる。
滑走路中心線間隔で滑走路は、3種類に区分される。
滑走路の形態によって異なる空港の滑走路処理能力
【オープンパラレル滑走路】
滑走路中心線間隔が1,310メートル以上離れている場合、『オープンパラレル滑走路』と呼ばれる。
並行する滑走路が1,310メートル以上離れている場合、それぞれの滑走路は独立した形で独自に運用できる。
このため、それぞれの滑走路を離陸・着陸共用として独立的に運用した場合、最大2倍程度の滑走路処理能力となる。
【セミオープンパラレル滑走路】
滑走路中心線間隔が760メートル以上~1,310メートル未満の場合、『セミオープンパラレル滑走路』と称される。
2つの滑走路をそれぞれ離陸用と着陸用として使い分けることができ、一般的に滑走路1本の場合の1.6倍程度の滑走路処理能力になるとされる。
【クロースパラレル滑走路】
滑走路中心線間隔が、760メートル未満の場合、『クロースパラレル滑走路』に区分される。
平行滑走路の間隔が狭いクロースパラレル滑走路では、航空機の離着陸に伴う気流の乱れなども考慮して、2本の滑走路を一体的に取り扱うことが多い。
このため、航空機を同時に離着陸することはできず、滑走路処理能力は一般的に滑走路1本の場合の1.3倍程度とされている。
福岡空港の場合、敷地面積の関係上で滑走路中心線間隔が210メートルと狭く、クロースパラレル滑走路となる。
また、ターミナル地区は、一般的に平行滑走路の間に配置して、それぞれの滑走路へ効率良く運用していくことが多い。
福岡空港のケースでは、国内線ターミナル地区、国際線ターミナル地区は、両滑走路の外側に位置しており、運用面でも不利な構造になっている。
それらの結果、第2滑走路の供用が始まった福岡空港での増便効果は当面、小幅増にとどまる。
今後の発着回数増に関する国のスタンスとしては、「地元自治体が地域の声を聞いたうえで、国に対して発着回数を増やして欲しい等の要望があれば検討を開始する」としている。
2025年3月28日、福岡空港の国際線ターミナルビルが本格開業
画像提供:福岡国際空港
福岡空港における現国際線ターミナルの供用開始は、いまから四半世紀余り前の1999年だった。
供用を開始した当初、240万人だった国際線旅客数は、2012年度に300万人を突破した。
その後、コロナ禍前の2018年度には690万人に達し、施設のスペースにゆとりがない点が問題視されていた。
2019年4月、福岡国際空港株式会社が、福岡空港の運営・管理を始めた。
同社は『福岡空港特定運営事業等マスタープラン』に基づいて、2022年5月より国際線ターミナルの増改築工事に着工した。
既存の屋外駐車場(897台収容)の立駐化などで約1.4倍の約1,300台に拡大させた新立体駐車場の供用も2023年2月に開始した。
その後、2023年12月、国際線旅客ターミナルの北側へコンコースを延伸させて、旅客機への搭乗橋を6基から12基に倍増させた。
さらに2024年12月、到着ロビーを4,000平方メートル増床し、新設した『アクセスホール』がオープン。
そして、床面積が従来の約7万3,000平方メートルから倍近い約13万6,000平方メートルに拡張した国際線ターミナルビルが、2025年3月28日にグランドオープンする。
今後、2025年12月には搭乗待合室内に新たに物販店15店舗をオープンさせて、さらなる拡充を図っていく予定だ。
画像提供:福岡国際空港
福岡空港の国際線ターミナルのグランドオープンビルに際して、福岡国際空港株式会社総務本部総務部の橋本雅俊広報課長は、次のように語る。
橋本雅俊広報課長
福岡空港では、空港機能の強化と共にさらなる賑わいの提供を通じて、地域経済の活性化や福岡という街の魅力向上に寄与していくことを目指しています。
2048年の国際線旅客数で1,600万人を目標として、国際線ターミナルの増改築を進めてきました。
国際線の出発・到着機能の強化に向けて、保安検査場の拡張・機能強化をはじめ、検査レーンの増設やスマートレーンの導入、自動チェックイン機の増設、九州初のプライオリティレーンの導入などを実施しました。
国際線ターミナルビルの内装コンセプトは、「福岡らしさ・日本らしさ」であり、楽しく快適な空間を提供していきます。
今年3月28日のグランドオープンでは、免税店エリアを4倍増の約6,000平方メートルに増床し、福岡・九州のグルメを楽しめるフードコートも登場します。
グランドオープン後の今年4月から国内線ターミナル地区において、商業・ホテル・アクセス機能を備えた複合施設の建設に着工します。
福岡空港は今後、〝比類なき空港〟としてのオンリーワンの強みを生かしながら、空港自体が目的地となり得る魅力化が、重要になっていきます。
そして、都市型空港である福岡空港が、空港全体として都市の役割や機能の一部を補完していく『エアポートシティ』の実現に向けて取り組んでいきます。
福岡国際空港株式会社総務本部総務部の橋本雅俊広報課長
2027年春の完成を目指し、国内線地区で新複合施設を建設
複合施設(イメージパース、画像提供:福岡国際空港)
福岡国際空港株式会社は、国際線ターミナルビルのグランドオープンに続いて、国内線ターミナルにおいても商業(飲食・物販)やホテル、アクセス機能を備えた複合施設を建設する計画だ。
2025年4月に着工して、2027年春に完成、供用開始は同年夏を予定している。
完成後は、九州をはじめ広く西日本一帯から年間800万人以上の一般客らを呼び込んでいくとする。
新複合施設は「旅する空港」をコンセプトとして、地上11階建てで延べ床面積は約4万平方メートルだ。
建物の1~4階は商業フロアで、5~11階はホテルとなる。
1階には、路線バスや高速バスが乗り入れるバスターミナルを整備する。
また、旅行客だけでなく、地元住民らも利用できるスーパーが1階に入居する予定だ。
2階には、福岡・九州をはじめ日本の土産や工芸品の一大集積エリアとなる。
3階は、日本のキャラクターや体験が楽しめるゾーンとしていく。できたての食を味わえる『食べ歩きグルメゾーン』も新設する計画だ。
4階には、アジアの食を楽しめる飲食店が揃う〝日本最大のアジアンフードエリア〟を設ける。
約8,000平方メートルのフロアに40店以上が、出店する計画だ。
商業フロアは国内線ターミナルビルと直結し、また国内線の立体駐車場とも接続する。
複合施設と国内線ターミナルビルを合わせた店舗数は、現在の約3倍の約270店舗となり、保安検査場通過前のエリアでは国内空港の中でも最大級になるという。
5~11階には、西日本鉄道グループの『ソラリア西鉄ホテル福岡エアポート(仮称)』が入居する。
早朝便を利用するビジネス客や観光客らの宿泊需要を見込み、客室は165室の予定だ。
ホテル内には、サウナ付き大浴場やフィットネスジムを併設する。
出所:梓設計・隈研吾建築都市設計事務所・西日本技術開発共同企業体(画像提供:福岡国際空港)
空港直結型ホテル「ソラリア西鉄ホテル福岡エアポート(仮称)」2027年夏頃開業予定!
https://fukuoka-leapup.jp/city/202503.49418
〝エアポートシティ〟から始まる福岡空港の新たな挑戦
画像提供:福岡国際空港
福岡国際空港株式会社は、『福岡空港特定運営事業等マスタープラン』において示した、将来イメージの実現に向けた5つの基本コンセプトの一つが、『エアポートシティ』だ。
エアポートシティとは、都市型空港である福岡空港の強みを生かして、高水準の空港サービスを提供すると共に〝交通拠点としての殻〟を破って、空港全体として都市機能の一部を補完していくものだ。
福岡空港における30年後の将来イメージとして、同マスタープランでは、「比類なき東・東南アジアの航空ネットワークを有する、東アジアのトップクラスの国際空港」を掲げる。
そして、2048年時点における東・東南アジアの就航国数では、日本一となる14ヵ国・地域、51路線の就航を目指す。また、同時点における旅客数3,500万人(国内1,900万人、国際1,600万人)を目標とする。
今回、福岡空港における第2滑走路の供用開始や国際線ターミナルのグランドオープンは、いわば福岡空港の将来イメージの実現に向けた試金石の一つであり、その動向が今後、注目される。
参照サイト
福岡空港『国際線ターミナル 3/28(金)グランドオープン』
https://www.fukuoka-airport.jp/information/grandopen-international.html
福岡空港調査連絡調整会議『福岡空港の総合的な調査:PIレポートステップ3』解説:平行滑走路について
https://www.pa.qsr.mlit.go.jp/fap/rencho/info3/pdf/pi_report03.pdf
みなとから未来へ「みなと総研」 No.30 2025年1月
https://www.wave.or.jp/magazine/index.html
未来へはばたく神戸空港『平行滑走路にも種類がある
仕様も運用も様々な滑走路の話』
https://www.kobeairport.jp/pilot/3970/
西鉄グループ初の空港直結型ホテル「ソラリア西鉄ホテル福岡エアポート(仮称)」2027年夏頃開業予定
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000723.000017692.html
国土交通省『福岡空港滑走路増設事業の供用について~観光・MICE の促進、地域経済への波及効果などの効果が期待されます~』
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001855919.pdf
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福岡空港が生まれ変わり、エアポートシティとして飛躍する ~第2滑走路誕生まで、あと1年~
https://fukuoka-leapup.jp/biz/202402.24090