『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』がちょっとダークな理由 ─ 「タイムトラベルものの定番」が招く必然とは
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989)は、前作の明るく軽快なトーンとは異なり、ダークな作風と評されることがある。その理由について、脚本家・プロデューサーのボブ・ゲイルが、第1作と第2作を比較しながら解説している。
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2015年掲載の米のインタビューでは、ファンからの質問として「『PART2』はかなりダークな作品になりましたが、執筆時に私生活で何か悲劇的なことがあったのですか?」という突っ込んだ問いが投げかけられている。これに対し、ゲイルは「自分やボブ(ロバート・ゼメキス監督)の経験を反映したものではない」と否定した上で、第1作についてこう説明した。
「第1作では、タイムトラベルものとしては珍しい展開を見せます。マーティは過去を変えてしまうけど、現在に戻ると状況が良くなっているんです。両親は成功し、家族は一緒に暮らし、彼はトラックを手に入れるなど、生活が改善されている。こうして物語がうまく機能しているわけです。
マーティは1955年に行った時、何かを変えようとしたわけではなく、ただ両親の関係を元に戻し、家に帰ることを望んでいただけでした。しかし、意図せず父親をより良い人間にしたため、その報酬としてより良い生活を得ることになったのです。」
(C)1985 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.
一方、第2作については「タイムトラベルものでよく描かれる、権力の乱用をテーマにしている」と述べ、次のように解説している。
「マーティは未来に行き、“スポーツ年鑑を入手して過去に戻れば、大金を稼げる” と考えます。それは非常に利己的な発想で、ドクに阻止されるものの、当然ビフに気づかれてしまう。そして、自らの過ちの代償を払うことになります。マーティ自身は実行していませんが、それを可能にしてしまいました。だから、物語はより暗い内容にならざるを得ない。必然的な流れです。悪いことをすれば、必ずしっぺ返しを食らうぞというわけです。」
(C)1989 UNIVERSAL CITY STUDIOS, INC.
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』では、マーティが未来の息子を救うため、2015年の世界にタイムスリップする。しかし彼の行動がきっかけとなり、世界はビフが支配するディストピアに変貌。父親は殺され、母親はビフの妻となり、ドクは精神病院へ送られ、マーティ自身もビフに殺されかける、という悲惨な状況が描かれる。
ゲイルの説明によれば、これは「権力の乱用」というテーマに引っ張られた結果のようだ。ストーリーは必然的に暗い方向へ進み、最終的に「過ちの代償」という教訓にたどり着く。これによって、前作とは異なる形でドラマチックな展開が描かれたと言えるだろう。
また、こうした“行動と結果”の描写は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』があらゆる世代に共感される理由の一つだという。ゲイルによると、本作は「家族を描いた物語」であり、誰もが経験する「両親もかつて子供だったと気づく瞬間」を捉えている。加えて、「運命は自分で切り開くことができる」「自分の行動には、その後の人生に良い影響や悪い影響を与える可能性がある」 という普遍的なメッセージが込められているからこそ、世代を超えて人々の心に響くのだと語っている。
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