いれいす 初披露の最新曲含む全30曲を届けた、初のベルーナドーム公演・Day2「-Future-」をレポート
いれいす One Man Live in ベルーナドーム「The Progress of Dice」 -Memory- / -Future-
2024.12.1 ベルーナドーム
2020年の結成以降、驚くべきスピードでファンを獲得していった2.5次元歌い手グループのいれいす。個性的な6人のメンバーで構成された彼らは、YouTubeでの配信や積極的な楽曲の発表に加え、エンタメ要素満載のライブ活動で瞬く間に人気が爆発。2024年の2月12日には“結成3年以内に日本武道館公演を実現させる”という目標をクリアしてみせた。そして直後の3月には“3年以内に歌い手グループ史上最短となる東京ドーム公演を行う”と宣言。新たな挑戦に向けて走り出した。その前哨戦となるのが11月30日と12月1日に開催されたベルーナドームの2DAYS公演『いれいす One Man Live in ベルーナドーム「The Progress of Dice」 -Memory- / -Future-』である。DAY1は-Memory-、DAY2が-Future-と、それぞれコンセプトが掲げられており、Day1は「君と紡いだ軌跡を辿る」をテーマに、過去の思い出の曲を中心に構成。Day2は「僕らの未来と夢を叶える」のテーマで、最新のオリジナル楽曲を盛り込んだ内容だ。ここではDAY2・12月1日の公演についてお伝えしよう。
会場のベルーナドームは言うまでもなく、パ・リーグの球団・西武ライオンズのホーム球場。都心から離れた埼玉県所沢市にある。シーズン中は熱戦が繰り広げられる野球の聖地だが、この日ばかりはメンバーカラーのアイテムや痛バ(推しの缶バッジなどを飾った痛バッグ)を持ったいれいすのファンが大集合。スポーツの殿堂はいつもとは異なる華やかな空気に包まれた。
場内に入ると、大きなメインステージが目を引く。そのメインステージ中央からは花道が伸びており、その先端と横に伸びた花道の先にもミニステージがある。その長さを見ると、会場の大きさが際立つ。開演時間が近づくと、観客の持つペンライトがチラチラ点灯し始め、場内の照明が落ちると一気にペンライトが客席を覆いつくす。スタンド席からもよく見えるようにと、ステージ上には大きなスクリーンが3枚掲げられている。そこに各メンバーのキービジュアルとなるイラストが映し出され、観客からは早くも熱い声援が飛ぶ。
オープニング映像の後、ステージ後方の壇上に本物のメンバー、りうら、-hotoke-、初兎、ないこ、If、悠佑が登場。Ifが「盛り上がっていこうぜ!」と煽り、「星降るフェアリーテイル」へ。1曲目からボーカルやダンスフォーメーションがくるくると変わるナンバーで、オープニングからキラキラの世界を演出。その勢いのまま、ファンとメンバーとの関係を想起させるポップチューンの「Promise」へ。3曲目の「Brave」は2024年1発目のシングル曲(アニメ『最強タンクの迷宮攻略』OP主題歌)だ。
勢いのある3曲が続いたところでMCタイムへ。りうらは「1日目の熱量に勝ちたい!」と、早くも煽りモード。そんなりうらに悠佑が「昨日、誕生日おめでとう!」と11月30日のバースデーボーイを改めて祝福する気遣いを見せた。さらに「明日誕生日の人がいる」と、Ifを盛り立てる。だが、わちゃわちゃと話しているうちに彼らは「あ、野球ごっこがやりたい!」など、どんどん話が脱線(笑)。そんなカオティックな流れから「学級崩壊☆ですとろいやー」につなげたのはさすが! 楽曲は、ないこ、If、悠佑の先生役と、生徒役のりうら、-hotoke-、初兎の掛け合いがコール&レスポンスを生むライブ受け抜群のキラーチューン。さらに「言いたいことがあるんだよーーー!!」もメンバーコールありの必殺曲。メンバーも花道に移動し、客席に向けて手を振るなど、ファンサもぬかりない。前半ブロックはキュートなラブソング「愛してるじゃ足りないもん!」まで、休む間もない盛り上がりだ。このままだと酸欠になりそう……なタイミングでムービーの上映タイムへ。毎回、ムービーにも力を入れている彼らはこの日、どんなものを用意してくれたのだろうか。
ムービーのタイトルは『鍋の約束』で、リアリティーショーのような仕上がり。キャンピング場に集まった6人には(なぜか)食材が割り振られ、その食材をネタにカップル成立を目指す(?)という設定。割り振られた食材は、基本は鍋にまつわるもののはずが、ないこは“漬物”担当になるなど、ツッコミどころ満載。しかもメンバーの中には“ウルフくん”というウソつきもまぎれていて……という状態で、心理戦が展開。BL的な展開もあり、場内からは“きゃ~!”と悶絶の声が。結末が気になり過ぎるところだが、続きは後半へ……となり再びライブがスタート!
このあとのブロックは各メンバーのソロタイムとなる。6人がそれぞれソロ曲を持っているのもグループの強みだ。一番手はダイスナンバー1番のりうら。会場は彼のテーマカラーの赤いペンライトに染まる。歌うのは「一等星」だ。美しいパワーバラードをエモーショナルに熱唱し、多くの声援を集めた。続いて-hotoke-が登場。甘い歌声でキュートなキャラが魅力の彼は「ベルーナ、一緒に踊りますか!」と煽り、ポップな「超次元♡理論→→→」を披露。水色のペンライトが光る客席を思い切り弾ませた。3番手は初兎。キュートネス全開の-hotoke-とはガラリと空気を変え、初兎は低音ラップを効かせたハードチューン「Xos」で勝負。白いペンライトが揺れる中、ワイルドなパフォーマンスで圧倒した。そしてここでリーダー・ないこが登場。花道に登場したないこをピンクのペンライトが迎える。彼は振りで一体感を味わえる「メンヘラホイホイ」で観客を楽しませた。ソロコーナーも大詰めとなり、ここでIfの出番に。彼が歌うのは自身のイメージカラーを彷彿とさせる「Sky Blue」。広がりのあるサウンドが清々しく、伸びやかな歌声で青く染まった場内を酔わせた。ソロコーナーのトリは悠佑。「暴れたいんじゃないの?」とのプチ煽りに観客は黄色のペンライトで反応。歌ったのは彼自身が作詞作曲を手掛けたロックナンバー「DIVE!!」。パンチの効いた歌声で会場をKOした。
次なるブロックではいれいす総選挙(オリジナル曲のセンターメンバーを決める投票)で1位に選ばれた人気曲が続々登場! まず、第四回いれいす総選挙1位となった悠佑がセンターを務める「逆境STORY」に始まり、第五回いれいす総選挙1位のりうらが「ONE」を熱唱。激しめの2曲が続き、観客のノリもヒートアップしていく。第六回いれいす総選挙1位に選ばれたのは-hotoke-がセンターの「恋星エトワール」。悠佑、りうらのアグレッシブなパフォーマンスとは対照的に、可愛らしさをふりまく-hotoke-にファンは癒されまくった。
曲が終わると、-hotoke-が口を開き、「ベルーナ! 楽しんでますか? すでに前半が終了してしまいました! みんな体力使い切ってないでしょ? みんなまだまだ盛り上がれる?」と煽る。そして、続くブロックでは四季をテーマにした曲で構成。こういう企画力の豊富さも心憎い限りだ。まず「春は麗し舞え桜吹雪」では桜のような紙吹雪を舞わせ、季節感を演出。そして、おなじみトロッコ車が出動! ステージの左右から2手に分かれてアリーナ通路を移動していく。メンバーと目が合った!と実感できる貴重な時間だ。トロッコ車がセンターステージにメンバーを運ぶと、ここで「よっ!夏大将!LOVE紫外線」が投下される。お祭りチューンだけに、メンバーはタオルを手にブチ上がる。「ジダンダーナイト」は夜がテーマの超絶ダンスナンバー。ちょっとハロウィンを思わせるダークな雰囲気もカッコいい。四季曲ラストは今の季節にピッタリの「Luminous」。このアップテンポの甘いラブソングで観客を狂喜させつつ、メンバーはトロッコ車でメインステージへ戻っていった。
ここで場内をクールダウンさせるべく、ムービー『鍋の約束』の後半が上映される。それぞれの思い(?)が絡みあったあげく、ウルフは初兎だと判明。場内がザワつくも、最後は和気あいあいの鍋シーンで着地。シリアスな名演技を披露した6人だったが、映像の終わりではNGシーンも暴露され、吹き出す寸前もありの、苦労多き撮影だったことをうかがわせた。
その後、本編はいよいよ佳境へと向かっていく。ムービー明けではメンバーがステージ後方の壇上に一列に並び、ラップをフィーチャーしたクールな「Paparazzi」を歌唱。そしてハードに和を表現した「百鬼夜行」、オトナっぽく展開する「Place to be」、ドープなHIPHOPとキレのあるラップで新境地を切り開いた「零番街」など、意欲的な楽曲達を連発。後半のヤマ場を作った。
曲が終わると記念撮影タイムへ。客席を背景に6人とバンドメンバーがステージ中央に集まる。この日は前日が誕生日だったりうらと、公演翌日(12月3日)が誕生日というIfがセンターに促され、レアなフォーメーションでの撮影となった。
撮影が終わると、ボリューム満点の本編はついに佳境へ。ファンに向けて悠佑が作詞を手掛けたバラード曲「世界はそれでも進んでいく」や、背中を押してくれるポジティブソングの「メテオライト」、そして本編最後はいれいすの結成3周年記念ソングの「僕らが描いた夢のその先に」など、ファンにとっても思い入れ深い曲が次々に飛び出す。曲の後半では銀テープも発射され、エンディングを盛り上げた。本編でたっぷり26曲を歌い上げた彼らだが、観客はまだまだ聴きたい曲があるようで、すかさずアンコールがかかる。
もちろん、その声援に応え、メンバーがグッズの白いパーカーに着替えて爽やかに登場した。アンコールは「ACROSS DIMENSIONS」でスタート! メンバーはリラックスした表情で花道を歩き、全方向の客席に向かって手を振りながら笑顔を見せる。曲が終わると、ないこが長めのMCでベルーナドームでの2日間の公演について、自身の思いを語り始めた。
「皆さん、今日の会場を見渡してみてください。ペンライトがめちゃくちゃキレイ……一方で、今日の公演は満席ではありませんでした。昨日もそうです。ナメてかかったわけではないです。僕達いれいすは地道に歩み続けてきました。なので、今日はめちゃくちゃ悔しい気持ちもあります。今日の悔しい気持ちは絶対に忘れません……でも、僕らの夢は東京ドームをやるだけじゃなくて、満席で成功をおさめたい」
この言葉に会場からは「がんばれ~!」の声も。
ないこは「今日はこんなにキレイな景色を見せてくれてありがとう」とファンに感謝の言葉を送った。ファンからも「ありがとう!」の声がたくさん飛んでいた。そう、この居場所があることが、ファンのみんなにとっても、どれほど支えになっていることか……。改めていれいすとファンの強い絆を感じた。
アンコール最後の曲は、そんないれいすを愛する多くの人々へ送る「愛をありがとう」だった。ここでメンバー、観客共に笑顔が戻り、温かい空気がベルーナドームを包む。この素晴らしい空気の中、アンコールは終了。直後にこの2日間の会場周辺や楽屋、ライブを編集したダイジェスト映像が流れ、これで濃いライブも終わりなのか……と、思ったが、ライブタイトルに-Future-の文字があることを忘れてはいけない。なんと、再びメンバーが飛び出してきて、この日、初披露の最新曲「追憶のダイヤモンド」をお披露目してくれたのだ。明るい未来を照らすかのような楽曲は、これからのいれいすの活躍を期待させるようなサウンドに仕上がっている。“次”の決意を示してくれたような新曲は何よりのプレゼントだったのではないだろうか。歌い終わると、6人は何度も「ありがとう!」と叫んでいた。
全30曲に映像も挟み、盛りだくさんの内容ながら、飽きさせることなくリスナーを楽しませてくれたいれいす。ないこは2公演がソールドアウトせずに、悔しい思いをにじませていたが、それでもすごい数のリスナーが集まり、美しい景色を作ってくれたのはまぎれもない事実。とはいえ、彼らはその現状に決して甘んじていないということだ。この先、彼らは東京ドームへの挑戦を続けていくはずだが、それは“ただ東京ドームがやりたい”という自己満足などではない。より多くの人を巻き込み、そこに来る人達をハッピーにしたいのだと思う。ライブのパフォーマンスを体験すれば、その一途な思いが理解できるはずだ。そのハッピーの結晶が彼らの夢である東京ドームで美しく煌めく光景を、今から楽しみに待ちたい。
文=海江敦士