glafit、四輪型特定小型原動機付自転車を用いた実証実験を7月から開始。“倒れない”リーンステア制御を搭載したプロトモデル
glafit株式会社は、四輪型特定小型原動機付自転車(以下、四輪型特定原付)のプロトタイプを公開し、2024年7月から実証実験を行うことを発表した
開発背景
課題が取り残されていると感じる高齢者の移動手段へのアプローチ
2023年7月から、特定小型原動機付自転車の車両区分が新設され、16歳以上免許不要で乗れる、電動モビリティ向けの道路交通法改正に合わせ、電動キックボードの他、自転車型着座タイプのものや、立ち乗り三輪タイプや四輪タイプなど、いろいろなタイプのものが開発されている。
近年取りざたされている買い物難民問題(生活必需品などの買い物が困難な状況に置かれている人)の背景には、地方の過疎地域などにおける店舗数の減少や、公共交通機関の縮小、住民の高齢化などいろいろなことが重なっている。
これまでは免許のいらないパーソナルな移動手段というと、ほぼ自転車に限られていたが、新しい電動モビリティの登場で、パーソナルな移動問題へのアプローチが大きく変わろうとしている。
今年3月から5月で特定原付「電動サイクルNFR-01Pro」のクラウドファンディングMakuakeを実施した同社は、購入者からのコメント分析等で、自転車型着座タイプのモデルは、免許不要のパーソナルモビリティ=「自転車一択」からの脱却として有効であり、一定の役割を果たしていると確信したという。
一方で、やはり二輪ではまだ不安があるという高齢者の方やその家族からの意見や相談を多数あったという。
https://www.drone.jp/news/2024031418140883528.html
同社は、日々の移動に自由を提供し少しでも高齢者の移動に対する不安解消に繋げ、気軽に外出を楽しめる生活ができるようになることで、買い物難民などの解消にも繋げたいとしている。また、これまでは時速6km/h以内でのみ使える「シニアカー」もあったが、これでは近距離移動に限定され、行けない場所も多かったとする。しかし、特定原付の車両区分なら、最高時速20km/hのスピードで移動が可能になり、これまでより遠くに外出も可能になるとしている。
また、以下の表のように、日本の高齢者人口(65歳以上人口)は、令和元年には3589万人,総人口の28.4%に達し令和18年には3人に1人が65歳以上になると推計されている。
同社は、高齢化が一層進む中で、高齢運転者の交通事故問題を考えれば、早めに免許返納をしていくことがよいと考えているという。一方で、免許返納後の「移動ができなくなるのではないか?」の不安は大きく、返納前からこの四輪型特定原付などに乗り慣れることで、免許返納後の移動への不安を取り除ければと考えているとしている。
(参考)内閣府 高齢者人口(65歳以上)の推移より抜粋
四輪型特定原付を安全に乗るための課題
原動機付自転車のうち、次の条件を満たすものが特定原付である。
車体の長さ190cm以下、幅60cm以下原動機として、定格出力が0.60kW以下の電動機を用いること時速20km/hを超える速度を出すことができないこと走行中に最高速度の設定を変更することができないことオートマチック・トランスミッション(AT)機構がとられていること最高速度表示灯が備えられていること
車体のサイズの規定がある中で四輪をつくることは、非常に難しいという。四輪というだけで何となく安定して走行できるように感じるが、まっすぐに走るだけではない公道走行において、この車幅の制限が非常に難しい課題だった。
車幅600㎜以下であることが必須となる特定原付では、車道と歩道を行き来する際の段差や、スピードを出して旋回する際の遠心力への対処等、ロール安定性の確保が重要な課題となる。
解説
車幅600㎜というのは、一般的な乗用車の車幅の1/2~1/3倍となる。 仮に車幅が1/2倍になったとして仮定した場合、
同じ段差高を片輪のみ乗り越えた時の車体の傾き:2倍車体が傾いた時の耐横転性:1/2倍 ※重心高さは同じとして仮定すると、車両の安定性は1/4倍となってしまう。
アイシンが開発中の「リーンステア制御」
株式会社アイシンが開発中の「リーンステア制御」とは、車速やハンドル角等の情報に基づき、車体の傾斜角をアクチュエータを用いて制御することで、二輪車並の幅の狭い車両においても高い自立安定性を実現できる技術だ。
リーンステア制御が、glafitの「移動を楽しむ四輪型特定原付」開発において、免許返納後の新しい移動体験の創出に必要不可欠であると考え、glafitとアイシンの共同開発契約締結に至った。
今後の実証実験について
リーンステア制御搭載の四輪型特定原付プロトモデルを利用し、65歳以上の方を中心とした実証を開催する。プロトモデルでの試乗を通じ、機能性や操作性の評価や感想のほか、所有やシェアリングなど利用シーン別でのニーズや課題把握などを行う。
また、将来的には自動運転の実装も見据えており、7月の和歌山市を皮切りに、積極的に実証を行いながら製品化を目指していくという。
開催日程
日時会場7月7日(日)10:00~17:00和歌山城 西の丸広場 (和歌山県和歌山市一番丁3)7月21日(日)10:00~17:00温故創新の森NOVARE(東京都江東区潮見二丁目8番地20号)7月29日(月)10:00~17:00大阪府内で調整中
glafit