【マニアの噂】実は笹塚に「立ち食いカレーそば界のレジェンド」がある件 / このご時世でも570円の柳屋キーマカレーそばとは?
そばとカレーのマリアージュであるカレーそば。そばの風味を諦めたような力技感は、そば好きの間では異端と見る者も少なくない。しかし、逆に言うと、その異端っぷりが魅力のそばとも言えるだろう。カレーそばにはカレーそばの世界があるのだ。
ウマイ立ち食いそばを探して色んな町を放浪する連載「立ち食いそば放浪記」。今回訪れたのは笹塚駅前だ。昔ながらの商店街と閑静な住宅街が同居するこの町に、実は立ち食いカレーそば界のレジェンドがあるのである。
・どこで聞いたか忘れたが
勢い余って立ち食いカレーそば界とか言っちゃったけど、そんな界隈が本当にあるのかすら不明だ。なにせ、前述の通り、カレーそば自体がニッチな存在だし、それゆえかカレーそばがない立ち食いそば屋も多いからである。
ただ、連載を長い間続けていると、どこから聞いたのか分からないんだけど、なんか知ってるみたいな店が出てくる。派手に話題になるというより、小声でひそひそつぶやかれ続けているような、まさしく風の噂。立ち食いそば屋のカレーそばにおいて、それが聞こえてくるのが笹塚の『柳屋』だ。
・カレーそばが噂になるって地味に凄い
そもそも、明治時代に朝松庵がカレー南蛮を発明した際、そば屋から反発があった歴史からも分かるように、そば好きなほど邪道に感じるカレーそば。時代は変わったとは言え、カレーそばがそば好きの間で語られるというのは凄いことだと思う。そんな『柳屋』は笹塚駅北を通る甲州街道を渡った先の商店街入ってすぐに佇んでいる。
アルミサッシの引違い戸を開けるとすぐにカウンターになっているこの店。外観からも昭和の雰囲気があふれ出しているけど、もちっとした微妙に野暮ったい食感のそばに絡む色の濃い暗黒つゆがどこか懐かしい。かつお節、サバ節、だし昆布を元に作られたつゆの味は深い旨みがある。
・奇をてらってるように見えて
キーマカレーそばは、そんな暗黒つゆにキーマカレーが乗った一品だ。ゆえに、見た目から普通のカレーそばとは違うんだけど、キーマカレーのぎゅっと濃縮されたスパイシーさがコクのあるつゆに解けると相性の良さを見せる。
カレーそばにも、ほぼカレーソースのものから、つゆ多めでスパイシーさだけをカレーから借りてるようなものまで色々あるけど、このつゆのバランスは唯一無二と言えるかもしれない。キーマカレーのスパイシーさとのコントラストでつゆのコクが際立ち、2つの味が完全に融合しているのだ。
メニュー名の時点では奇をてらっているようにも感じられるが、食べると、確かに頂(いただき)を見た気がするこのキーマカレーそば。物価高騰が叫ばれる2025年8月においても570円であるところも魅力の1つだ。
・超個性
なお、柳屋はトッピング天ぷらに、ポテトフライをかき揚げにしたような「ジャガイモ天(120円)」や「ソーセージ天(140円)」などもある。昭和に見えて、その個性は令和の世においても超個性。決して派手ではないけれど、ひそひそ語られていることに今の時代が失くしつつある何かを感じる。
そんなわけで、立ち食いそば放浪記357回は立ち食いカレーそば界の街談巷説。一部には有名だけど、界隈に興味がない人は絶対に知らないマニアの噂でした。暑い夏こそキーマカレーそばが乙かもしれません。
・今回紹介した店舗の情報
店名 柳屋
住所 東京都渋谷区笹塚2-11-4
営業時間 平日6:20~14:30
定休日 土、日曜日
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.