トークンで支援!博多大丸がはじめた地方創生プロジェクトが熱い!
株式会社博多大丸が「九州の生産者を応援する」地方創生のおもしろい取り組みをおこなっていることをご存知でしょうか。2023年より株式会社博多大丸と株式会社フィナンシェが手を組み始まった「未来共栄プロジェクト」では、トークンを活用して九州の生産者さんを支援されているそうです。今回は、株式会社博多大丸営業統括部九州探検隊の高宮佑典さんをお迎えして、フクリパの運営会社である株式会社えんメディアネットの坪倉伸一代表取締役がお話を伺いました。また、プロジェクトに欠かせないシステムを運営する株式会社フィナンシェの大西さんともオンラインで繋ぎ、この取り組みのしくみについて解説いただきました。
博多大丸による「未来共栄プロジェクト」とは?
坪倉:大丸福岡天神店で10月に開催されたくまもとフェア「くまもとモン×福岡天神」は、すごく盛り上がっていましたね。夏にも宮崎展が催されていましたが、九州内の物産品に力を入れているのでしょうか?
高宮:そうなんです。株式会社博多大丸では、「九州探検隊」というプロジェクトを2018年から運用していて、その一環として、九州に関連する展示やイベントを積極的に実施しています。九州探検隊について簡単に紹介すると、「九州のまだ知られていないモノやコトを発掘・発信する」ことで、九州全体の活性化を目指す取り組みです。WebサイトやSNSなどでも活動内容を紹介しているので、フクリパの読者さんにも、投稿を見てくださっている方がいらっしゃるかもしれません。
株式会社博多大丸が運営するWEBサイト「九州探検隊」:https://www.daimaru-fukuoka.jp/kyushutankentai/
株式会社博多大丸営業統括部九州探検隊の高宮佑典さん
坪倉:九州の活性化を目指すプロジェクトとは、非常に興味深いですね。具体的には、どのような活動をしているんですか?
高宮:熊本展のようなイベントをはじめ、対馬市の海ごみをアートに活用するSDGs関連の活動や、伝統工芸の発掘と継承に関する活動なども実施しています。実は九州探検隊は、「今までお世話になった自治体や生産者さん、事業者さんに恩返しがしたい」という、当社の社員からのアイディアによって立ち上がったプロジェクトなんです。
なので、どちらかと言えば、ビジネス的な活動というよりも、地方創生や地域活性化としての意味合いが強いかもしれません。ちなみに2023年末には、九州探検隊としての新しいプロジェクト「未来共栄プロジェクト」も始まったので、注目していただけたらうれしいです!
HP:https://www.daimaru-fukuoka.jp/kyushutankentai/activity/detail/?cd=000249
九州探検隊がトークン発行型クラウドファンディング「FiNANCiE」と連携し、生産者・事業者が叶えたい夢を支援するプロジェクトを開始
坪倉:おもしろそうですね、ぜひ概要を教えてください。
高宮:「未来共栄プロジェクト」は、九州の自治体や事業者さん・生産者さんの夢を応援する新しい形のプロジェクトです。“トークン”と呼ばれるデジタルアイテムを販売することで、生産者さんが商品を開発するために必要な資金の調達を行っています。
2024年10月現在は、すでに第三弾までプロジェクトを実施していて、トークンの販売で集まった資金によって、キャビアやお酒の製造を進めているところなんです。現在、次の3つのプロジェクトを進めています。
①宮崎県椎葉町のキャビア王国
絶滅危惧種であるチョウザメの養殖・キャビアの製造プロジェクト
HP:https://financie.jp/users/CaviarOukoku
②熊本県あさぎり町の高田酒造場
遊休農地を活用して栽培したサトウキビを原料としたアグリコールラム酒の製造プロジェクト
HP:https://financie.jp/users/takata_shuzohjyo
③熊本県水上村の大石酒造場
熊本県産”山桜”の樽で熟成させたモルトウイスキーの製造プロジェクト
HP:https://financie.jp/users/OhishiSyuzohjo
“トークン”を購入して生産者を応援!
坪倉:つまり、活動資金を集めて生産者さんを応援することで、九州の活性化を狙う取り組みなんですね。出資側にもメリットが必要だと思うのですが、どのような仕組みになっているのでしょうか?
高宮:トークンの購入者(出資者)のメリットや特典はたくさんあります。例えば、熊本の大石酒造場さんのプロジェクトでは、出資者に対して、トークンの購入口数に応じたウイスキーの購入権や、限定の焼酎購入権が付与されました。プロジェクトによっては、商品の先行購入権だけでなく、工場見学ツアーなどのオフラインイベントへの参加権が用意されていることもあります。
坪倉:出資者が商品の購入権やイベントへの参加権などを得られる点は、クラウドファンディングと似ていますね。
高宮:そうですね。活動に関する資金集めができる点や、出資者に対してリターンが用意されている点は、クラウドファンディングと同様です。ただ、以下の3点については、クラウドファンディングとの大きな違いだと感じています。
<クラウドファンディングとの違い>
●生産者さんと出資者が濃密なコミュニケーションを取れる
●出資者がプロジェクトの意思決定に携われる
●トークンという価値のあるアイテムを保有できる
当プロジェクトにて使用しているFiNANCiE(フィナンシェ)というアプリには、トークン保有者限定のコミュニティ機能があり、そこで生産者さんと保有者さんが直接交流したり、自分の意見をプロジェクトに反映させたりすることも可能です。保有者さんは、クラウドファンディングよりも主体的にプロジェクトに携わることができるんです。
ちなみに、各プロジェクトのトークンは自由に売買できます。また、トークンの価格は変動性なので、今のうちに購入しておけば、将来的には大きな価値を得られるかもしれません!
坪倉:クラウドファンディングの良いところを活用しつつ、出資者と生産者がさらに濃密な関係性を築ける仕組みを取り入れている点がとても画期的ですね。トークンの価格はどうしたら上がるのでしょうか?
高宮:トークンの価格は、トークンの購入希望者が増えると上がる仕組みです。そのため、生産者さんや保有者さんがコミュニティを盛り上げるなどして、プロジェクトをより魅力的なものにしていくことがとても重要なんです。各プロジェクトのトークン保有者さんは、オフ会をはじめとしたイベントを自主的に企画するなど、価値上昇に向けて積極的にプロジェクトを盛り上げていますね。
例えば大石酒造場さんのプロジェクトでは、プロジェクト開始時は1トークン1円だったものの、現在は1トークンが2.7円前後となっていて、約3倍までに価格が上昇しています。応援したい生産者さんのコミュニティを自らの手で盛り上げられることは、トークン活用の面白さの一つなのではないでしょうか。
「九州の生産者に光を当てたい」との想いでプロジェクトを推進
坪倉:未来共栄プロジェクトのしくみは、百貨店としては珍しい取り組みだなと感じています。なぜ、トークンを活用したプロジェクトを実施することになったのですか。
株式会社えんメディアネットの坪倉伸一代表取締役
高宮:株式会社博多大丸の親会社であるJ.フロントリテイリング株式会社と、トークンの販売に使用しているアプリ「FiNANCiE」を運営している株式会社フィナンシェが資本提携したことが、大きなきっかけです。当社では2018年より、「九州探検隊」として地域活性化に向けた取り組みを多数実施してきました。
そのため、九州探検隊から派生した取り組みとしてトークンを活用したプロジェクトを実施することで、「夢を持って事業に取り組む方々をより応援できるのではないか」との考えに至ったんです。そこで2023年12月に、第一弾となるキャビア王国のトークン発行・販売を開始しました。
坪倉:確かに、地方創生や地域活性化と非常に相性が良い取り組みだとは思うのですが、博多大丸がこのプロジェクトを推進することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
高宮:一番のメリットは、九州各地で頑張っている事業者さんや生産者さんに光を当てられることだと考えています。私たちは九州探検隊として、九州にある119の市を一つ一つ訪問して、各自治体からアンバサダーの認定をいただきながら、情報の収集や発掘を行ってきました。
そして活動を通して、「より多くの方に広めたい」と思う品々にたくさん出会ったものの、まだまだ魅力を広めきれてないことが現状です。そのため、この未来共栄プロジェクトを盛り上げることで、より多くの事業者さんや生産者さんについて、皆さんに知っていただきたいと考えています。
ビジネス面についてはまだ検討中ではありますが、将来的にはオンラインショップで、同プロジェクトで開発された商品をトークン保有者以外の方にも販売したり、物産展などのイベントで商品を広めたりすることも予定しています。まずはトークンをきっかけに、生産者さんの熱心なファンが増えていけば嬉しいですね。
坪倉:アプリを運営している株式会社フィナンシェの大西さんは、未来共栄プロジェクトについてどのように感じていますか?
大西:未来共栄プロジェクトの最大のポイントは、お客様とのリアルな繋がりを持てる場として、大丸福岡天神店を活用できることだと考えています。店舗でアピールすることで、もともとトークンに興味を持っていた方だけではなく、オフラインの場にも情報を届けられますよね。リアルに商品に触れられる点も大きいです。
知識ゼロの状態から手探りでスタート
坪倉:聞けば聞くほどワクワクしてきました!現在は第三弾までプロジェクトを実施しているとのことですが、新しい動きも予定されているのですか?
高宮:今年の10月から、新たに2つの生産者さんによるトークンの販売が決定しました。熊本県で酪農業を営む『オオヤブデイリーファーム』さんと、同じく熊本県で車海老の養殖を行っている『幸福堂』さんです。この2つの生産者さんには、先日開催した「第3回熊本展」にもご出展いただいたんですよ。
坪倉:プロジェクトを推進している生産者さんは、食品やお酒など、作っているものが結構バラバラですよね。どのように選んだのでしょうか?
高宮:以前より、当社とのお取引があった生産者さんを中心に声をかけさせていただきました。はじめは本当にゼロからのスタートで、関係者全員が「トークンってなに?」「コミュニティってどうやって運営するの?」という状態でしたが、たくさんの方々のサポートのお陰で、安定してプロジェクトを進められています。
現在はトークン保有者の皆さんが自主的にプロジェクトを盛り上げてくださっているので、コミュニティのオーナーである生産者さんが積極的に発言をしなくても、保有者さんのみで自走できるコミュニティが成り立っている状態です。これからも新しい地方創生の形として、トークンを活用していきたいと考えています。
坪倉:トークンの保有者さんも、熱心な方が多そうですね。現在トークンを保有している方は、やはり九州の方が多いのですか。
高宮:九州在住や九州出身の方、九州の特定の県を応援したい方などさまざまな方が集まっています。投資が目的だった方も、コミュニティで他の保有者さんや生産者さんと交流したことで、その商品の良さを知り、ファンになってくださることも多いようです。日本中からさまざまな方が集まっているからこそ、より魅力的なコミュニティへ近づいていっているのではないでしょうか。
坪倉:交流によって新たなアイディアが生まることや、オーナーが主体的に動かなくてもコミュニティが盛り上がり続けるのは、生産者さんにとってもメリットが大きいですよね。現在プロジェクトを進めている生産者さんからの反応はいかがですか。
高宮:まだプロジェクトが始まってから一年ほどですが、前向きな感想をたくさんいただいています。「博多大丸がサポートしてくれるだけでなく、開発後の商品の販路まで確保できるので非常にありがたかった」「トークンのことは今まで聞いたことがなかったが、今回のプロジェクトのお陰で、より多くの方に商品について知っていただけてとてもうれしい」などの感想が集まっています。
今後も博多大丸だからこそできることを活かしつつ、生産者さんのサポートを続けていく予定です。
博多大丸が手掛ける「未来共栄プロジェクト」の将来像
坪倉:未来共栄プロジェクトが続いていくことで、ますます九州が盛り上がりそうだなと感じています。最後に、今後の展望についてお聞かせください。
高宮:先ほどの大西さんからのお話にもあったように、百貨店として売り場を持っている点が当社の強みであると思うので、今後もその点を活かしていきたいと考えています。現在はまだプロジェクトの数が限られている状態ですが、数を増やしていくことで、トークンを販売している事業者さん・生産者さんだけで、大丸福岡天神店の催事場を埋め尽くしたいです。
九州には、良い商品を作ろうと熱心に事業に取り組んでいる方がたくさんいらっしゃいます。コミュニティへの参加によって商品の背景を知ることで、その商品や地域に愛着を持っていただければうれしいです。例えば同じお酒でも、完成までのストーリーを知らずに飲む場合と、知ってから飲む場合では、味わいが変化するように感じています。商品のファンになった方が、周囲の人へ良さを伝えることで、少しずつコミュニティの輪が広がっていくことが理想ですね。今後も未来共栄プロジェクトを発展させていくことで、九州の活性化に繋げていきたいです。
坪倉:大丸福岡天神店の催事場がトークンの商品で埋め尽くされるなんて最高ですね。これからも未来共栄プロジェクトでのいろいろな取り組みをフクリパでも応援します。
【参照サイト】
株式会社フィナンシェ
九州探検隊
《「九州探検隊×Web3」が生み出す新たな地方創生モデル》未来共栄プロジェクトが始動します!