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【静岡県立大のシンポジウム「文学館、いかに〈魅せる〉か」 】 「魅せる文学館」は文学の拡張につながる

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は12月7日に静岡市駿河区の静岡県立大で行われた、静岡県文学館連携シンポジウム「文学館、いかに〈魅せる〉か」 を題材に。常葉大外国語学部講師で焼津小泉八雲記念館非常勤学芸員の那須野絢子さんと、長泉町井上靖文学館学芸員の徳山加陽さんが登壇した。

文学館をテーマにしたシンポジウム、公開対論はとても珍しい。今回は、2023年に東アジア文化都市の事業として「伊豆文学祭」などを手がけた県の「伊豆文学フェスティバル実行委員会」が後援している。

今年は「文学情報発信拠点化連携モデル事業」と題して、文学館や図書館の連携を促す取り組みを進めている。今回のシンポは昨年「全国文学サミットin伊豆」(伊豆の国市)のコーディネーターを務めた静岡県立大国際関係学部の細川光洋教授が「仕掛け人」になっている。

県内でも屈指のクリエイティビティーを誇る2館の学芸員による企画展を巡る対論は、とても刺激的だった。

焼津小泉八雲記念館の那須野さんは「多角的かつ横断的な視点でのテーマ選び」を企画のポイントとして挙げた。「八雲と日本の文豪」「幕末・明治の西洋人と富士山」「八雲の愛した出雲の玩具展」など、小泉八雲という人を真ん中に置いて、四方八方からテーマを拾ってくるバイタリティーに感服した。

長泉町井上靖文学館の徳山さんは館のコンセプトとして、井上靖作品を「読むきっかけ」を作ること、そのために来館者が能動的に楽しめる工夫を凝らすことを挙げた。

井上靖の名言を利用したくじを作ったり、五感を使って井上靖と遊ぶ企画を繰り広げたり。中でも、いくつかの質問に対してYES/NOを選ぶと、回答者にぴったりの井上靖作品にたどり着けるという「お薦め本チャート」は秀逸だ。実は筆者も体験したことがある。

昨今の「活字離れ」に伴い、文学の読み手が先細りしている。それが影響してか、文学館の予算も潤沢とは言えない。館の運営に関わるマンパワーも不足している。

ないない尽くしの「文学館」だが、逆に言えばこれほど学芸員のクリエイティビティーが問われる博物館もないかもしれない。文学者の「顕彰」が最終地点だとしても、そこに至る経路の工夫は館によって全く違う。

「魅せる文学館」は、言葉をひっくり返せば「文学の見せ方」に通じるのではないか。文学館の工夫は「文学」そのものの魅力拡張に直結するはずだ。行政の一層の支援が必要なのは間違いない。
(は)

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