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「子どもの入院付き添い」が過酷すぎる! 原因は小児科病棟の想像を絶する人手不足

コクリコ

子どもが入院すると、多くの場合は親も付き添いが必要であるにもかかわらず、食事や睡眠、休息など最低限の環境すら与えられないのが現状です。そこで認定NPO法人キープ・ママ・スマイリングの理事長・光原ゆき氏に、入院制度の問題点について語っていただきました。全3回の2回目。

小児医療は想像を超える人手不足

子どもが入院すると、多くの場合、親も付き添って入院することが求められます。しかし、付き添いが必要であるにもかかわらず、親には食事や睡眠、休息など付き添い環境への配慮が十分に与えられないのが現状です。こうした問題の背景にあるのは「小児医療の圧倒的な人手不足と感じた」と認定NPO法人キープ・ママ・スマイリングの代表・光原ゆきさんは指摘します。

当事者から見える小児医療制度の課題について、光原さんに語っていただきました。

光原ゆき
認定NPO法人キープ・ママ・スマイリング理事長。1996年一橋大学卒業後、株式会社リクルートへ入社。先天性疾患を持つ娘を出産後、育児休暇中に亡くした経験から、2014年11月に現団体の設立、理事長に就任。病児と家族の応援の輪を広げるため、企業や学校、イベントなどで講演も多数行っている。

保育器の中で一人でミルクを飲む赤ちゃんたち

病院が保護者に付き添い入院を求める背景にあるのは、小児病棟における圧倒的な人手不足です。子どもの患者は大人の患者よりも手間がかかります。ですから、ただでさえ人手不足の医療現場でもさらに人手が足りなくなり、やむを得ず付き添いを求めるのです。

このことを実感した、ある出来事があります。私の娘が、親の付き添いを不要とする病院に入院していたときのことです。朝一番に子どもの面会にかけつけたら、娘はまだ首も据わらないくらいの月齢なのに、新生児用の透明なベッドに寝かされたまま、顔の横にタオルを積み、その上に哺乳瓶があったのです。

これには驚きました。なぜなら非常に危険なミルクの飲ませ方だからです。保育園などで同じことをすれば、大問題になることでしょう。慌てて師長さんに報告しようとしたのですが、師長さんはその状況の中で平然と見回りをしているのです。

このとき「医療現場はこれが常態化しているのだ」と知りました。病棟で看護師さんたちはいつもとても忙しそうで声をかけるのも憚られるほどでした。ミルクやオムツなどの赤ちゃんが必要とするケアを頻繁に対応することが難しいことは、院内に長く付き添っているとよくわかりました。

実際の入院付き添い時の1枚。  写真提供:光原ゆき

年齢に応じたスタッフの配置がない

しかし、これは病院が悪いのではないということは、活動を進めるうちにわかってきました。今の医療制度が、このような体制を前提としているからです。

多くの人に知ってほしいことですが、保育園や幼稚園では当たり前の、年齢に応じたスタッフの配置が、病院には基本的にはありません。

例えば、保育園ならば、0歳児のクラスは保育士1人につき乳児3人まで、3歳児クラスになると1人の保育士で15人までみることができるようになります。これは、0歳児と3歳児ではお世話にかかる手間が違うのですから、当然のことです。

大人も赤ちゃんも看護師の配置数は同じ

画像提供:認定NPO法人キープ・ママ・スマイリング(イラスト協力:ひいらぎ舎)

これに対して、病院ではこのような仕組みはありません。大人の患者も0歳の赤ちゃんも、基本的には看護師の配置は変わらないのです。

例えば、重症者が多い急性期の病棟では、患者7人に対して看護師を1人配置することが法律で決められています。これは、大人の病棟でも子どもの病棟でも同じです。

身の回りのことが自分でできる大人の患者であっても、オムツやミルクの世話が必要な赤ちゃんの患者であっても、同じように患者7人に対して看護師1人と決まっているのです。

これは、あまりに現実離れしていると言わざるを得ません。1人の大人がそれほど多くの赤ちゃんを看るのは、たとえ健康であっても不可能です。ましてや病気の子どもですから、通常よりも多くのケアが必要になります。しかし、それをやるだけの人員を配置できるような仕組みにはなっていないのです。

さらに言えば、夜間はこれより看護師の人数は少なくなります。例えば看護師1人で10人の赤ちゃんを看るなどの状況が、当たり前に生まれてしまっているのです。

その結果、病院は足りない人手を埋めるために、やむなく保護者に付き添いを求めることが常態化してしまっているのです。

コロナ禍で軟禁状態に置かれたママたち

団体設立当初は、このような医療制度については全く知りませんでしたが、自分自身の子どもの付き添い入院経験から、少しでも付き添い環境を改善したいと思い、NPO法人を立ち上げて活動を続けてきました。

私が付き添い入院中に一番つらかったのは、温かく美味しい食事が食べられなかったことです。ですから、まずは付き添い入院のママとパパを食事の面から応援する活動からスタートしました。

少しずつ協力してくれる人たちも増えて、さらに活動を広げようとしていた矢先に、新型コロナウイルス感染症の流行が起こり、スタッフが集合することが難しくなってしまったのです。

コロナ禍で、ママやパパたちの付き添い入院はさらに大変になりました。保護者がいなければ子どものケアが回らないので、付き添い自体は多くの病院が継続しました。ところが感染を防ぐために、付き添う親は一切外出できなくなってしまったのです。

そのため付き添いのママたちは、病院内に軟禁状態とも言えるような厳しい状況になり、途中でパパやおばあちゃんたちと交代することもできなくなってしまうケースが出てきました。

そこで私たちは、付き添いのママやパパに必要な食べ物と生活用品を詰め合わせて無償で届ける「付き添い生活応援パック」の活動をスタートしました。病院から出ることができずに子どもに付き添っているママやパパに、少しでも役立ててほしいと思ったからです。

長期間の入院付き添いの保護者へ向けた「付き添い生活応援パック」を持つ、光原ゆきさん。  写真提供:認定NPO法人キープ・ママ・スマイリング

───◆───◆───

保育園では当然の年齢に応じたスタッフの配置が、病院では当たり前ではない──。
そのような驚くべき事実を今回、改めて教えていただきました。

次回3回目では、ママやパパの声が国を動かしたこと。そして、これからの入院の付き添いが、どのように変わるのかを、引き続き光原さんに教えていただきます。

取材・文/横井かずえ

子どもの入院付き添い連載は全3回。
1回目を読む。
3回目を読む。
(※公開時よりリンク有効)

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