吉田康雄のザ・チャレンジへらぶな【数十年振りの一発セット#2】
テーマは「数十年ぶりの一発セット」。埼玉県寄居町にある円良田湖常管桟橋で角麩の釣りをスタートさせた。何もかもが手探り状態だったが、思いのほか出だしは好調だった。しかし……。
(アイキャッチ画像提供:週刊へらニュース編集部 関口)
好調な滑り出し
久しぶりと言いながらも手早く準備をし終えた吉田。6時前には竿9尺チョウチンで早くも第一投を入れた。
吉田康雄
「それにしてもこのパサパサバラケはハリ付けしにくいですね。かなり圧をかけないと、うまくまとまってくれません」
だよね。だからと言って上エサが抜けてしまってはアタリにならない。にしてもバラケ小さくないかい?
吉田康雄
「そうですか?通常サイズにハリ付けしたつもりなのですが」
記者が知る限り、握りこぶしとも思えるほど大きなバラケを打つ人もいるよ。それと比べたら吉田のバラケは両ダンゴサイズにしか見えないよ。
ところがそんな小バラケ(それでもウドンセットのそれと比べたら大きい)でもアタリはすぐに出始め、数十年のブランクなど感じさせない展開となった。
調子いいじゃない?
吉田康雄
「ですが、ついついツンとかチクッとか小さなアタリに手が出てしまいますね。乗らない確率が高いのはわかっているのですが」
竿を持っていかれた!
そんな会話を交わして油断していたのか、振り込んでウキが立つまでと握りから手を離していたすきに竿ごと水中に消し込んでしまった。
吉田康雄
「ヤバいです!竿を持っていかれました」
一瞬視界から消えた竿だったが、幸い魚が浮いてくれ竿が水面に姿を現し別の竿で引っ掛けて回収し難を逃れた。
吉田康雄
「そう言えば一発セットだと、こういうアクシデントが多いのを今思いだしました(汗)」
でも落ち込みでそのまま消し込むなんて一発セットとしてはサイコーの時合いじゃない?
吉田康雄
「まあ、そうとも言えますが、再現できなくては意味がありません」
聞きアワセが重要
ところでさっきの話の続きなんだけどね、ツンとかチクッとかをアワせてはダメなの?
吉田康雄
「ダメではないんですよ。アワせてもいいんです。ただ、それを聞きアワセしないとダメなんですよね」
聞きアワセってことは乗らなければ、また竿尻を元に戻すって動作のことでしょ?
吉田康雄
「はい。達人になるとそれを何度も繰り返して乗るまで打ち返さない人もいるくらいですから」
それなら記者も知ってるよ。昔、浅草へら鮒会の名人を取材したことがあったんだけど、その人も聞きアワセを何度もやってた。しかもチョウチンではなく浅ダナでね。その方がこうも話していたよ。体力で劣るボクらご老体が若いモンと例会で勝負するには、カラツンをいかになくすかにかかっている。だから1投のビッグバラケで乗るまで竿を上げないとね。
吉田康雄
「完ぺきな聞きアワセだったんでしょうね」
そりゃあもう、見てるこっちも驚きの連続だったよ。スパッと消し込んでもアワせず、そっと穂先を上げて乗っているかを確認しているんだ。あんないいアタリでもアワせないなんて、普通の人にはなかなかできない技だと感じたね。
吉田康雄
「今のボクがそうなんです。頭ではわかっているのですが、ついつい穂先が止まらずそのままフィニッシュまでアワせてしまってますから」
アタったらアワせるのが通常のヘラブナ釣りだが、こと一発セットに至ってはそれがセオリーではない。そのジレンマと格闘する吉田であった。
次回も「数十年ぶりの一発セット」です。
<週刊へらニュース編集部 関口/TSURINEWS編>
この記事は『週刊へらニュース』2024年7月12日号に掲載された記事を再編集したものになります。