高知県高知市『サニーマート 中万々店』~宴会好き文化が生み出した幸せを呼ぶ掟破りのレイアウト~
高知県のご当地スーパー「サニーマート」は、売り場のレイアウトがちょっと違う? 最近でこそ、都市部の大手スーパーでも取り入れられるようになったこのレイアウト。高知ならではの“おきゃく”文化とパン好きが関係しているようです。入口のベーカリーと弁当・総菜だけでなく、店の奥にある生鮮三品まで、しっかり回りましょう。
今回のゴー!ゴー!
『サニーマート 中万々(なかまま)店』(高知県高知市)
「入口は、季節感や香りや色で気持ちを高揚させる、果物や野菜から」というのが、スーパーの売り場レイアウトのセオリー。でも『サニーマート』は独自の配置を採用し、多くの主婦層の支持を得てきました。
おきゃく(土佐弁で飲み会)の多い高知の女性が、短時間で家族の晩ご飯をそろえられるよう、入口すぐに「ベーカリー」と「弁当・総菜」コーナーを設置。
最近になって、都市部の大手スーパーでも「コンビニ使いできるように」と取り入れられてきたこのレイアウトですが、同社ではもうずっと以前からこのスタイルを推していました。
2023年にリニューアルオープンした『サニーマート中万々店』も同じ。
それだけでなく、ベーカリー、弁当・総菜、その奥の野菜売り場まで見通せるような開放感があり、ゆったりと買い物ができる雰囲気です。
この画期的な配置、もう一つの理由は高知県民のパン好きにありそうです。
実は人口あたりのパン屋さんの数で国内上位に入る、高知県。メロンパン製造の途中で上にかけるクッキー生地の代わりに、カステラ生地をかけて焼いた偶然の産物「ぼうしぱん」は高知県のご当地パン。もちろん、この店のベーカリーにも並び、カリカリの「ぼうしのふち」だけも提供し、大人気です。パン好きが、入口で立ち止まらないわけがない!
その一方で、野菜果物、鮮魚、精肉の生鮮三品が店の奥にあることで不利にならないのか、という疑問も。
でも奥まで行って、その答えがはっきりしました。生鮮三品が驚くほど新鮮でリーズナブル! 郷土食のカツオのたたきは香ばしく、新鮮そのもの。
地元人たちがそうするように、朝でも夜でも、生タマネギのスライスにたたきをのせ、生ニンニクを薬味にゆずぽんをぶっかけスタイルでいただけば、今日一日、幸せな気分で過ごせる気がします。
高知の食卓を豊かに彩る魚や野菜が手に入る、店の奥。誰もが引き寄せられる力があるのです。
黒潮の恵みと高知の地元食
高知の人々が力強く、そしてやさしいのは、太平洋を望むダイナミックさと、霧が多く発生するような山間部の静寂をあわせもつ、高知県の風土に関係するのかもしれない。ご当地の味も豪快で個性派ぞろい。
『サニーマート』製、地元の味
焼きたてパンとできたての総菜があれば、気兼ねなく夜も飲みに! 寿司や刺身などのおかずを大皿に盛りつければ、宴会料理の皿鉢(さわち)料理に! そんな土佐スタイルが透けて見える、『サニーマート』製の人気商品。
「純米酒」の棚に注目!
2023年の朝の連続テレビ小説『らんまん』の主人公の生家は酒蔵でしたね。水が清らな高知は米どころでもあり、酒造りが盛んです。各蔵の名酒をそろえ、『サニーマート』のオリジナルラベルで統一した「飲みくらべ純米酒シリーズ」が美しい!
『サニーマート 中万々店』の詳細
サニーマート 中万々店(なかままてん)
住所:高知県高知市中万々40-1/営業時間:9:00~22:00/定休日:不定/アクセス:JR土讃線円行寺口駅から徒歩11分
取材・文・撮影=菅原佳己
『旅の手帖』2024年9月号より
菅原佳己
スーパーマーケット研究家
執筆やテレビ出演、講演活動をこなしながら、全国のご当地スーパーを行脚。埋もれた日常食の発掘とその魅力を伝えている。著書に『47都道府県 日本全国地元食図鑑』(平凡社)など。