遅い春の訪れを待ちわびる、金山町・旧三更集落の「霧幻地蔵」
年間300日、奥会津やJR只見線の撮影をし続ける郷土写真家・星 賢孝(けんこう)さん。彼だからこそ知る四季折々の“美しき奥会津”をお届け。撮影アドバイスも紹介します。
夢かうつつか-霧幻峡の春
峡谷を縫う様に流れる只見川は、川面に蒼天を映し、静かにたおやかに流れている。春の陽に照らされた桜は、ほのかに輝き、枝の合間から差す光が水面に優しくこぼれている。風がそよぎ、花びらはひらひらと散り峡谷へと舞い上がる。やがて花びらは、川の流れに溶かされて静かに消えてゆく。
岸辺の丘には、赤い頭巾と前掛けの小さな霧幻地蔵が、時の移ろいを数えながら密やかに佇んでいる。苔むした岩の台座で、幾度の春夢を見送ってきたのだろうか。
眼下の川面には小さな木舟が緩やかに進んでゆく。舟頭の巧みな櫂裁きで、深緑の水面は舟影をそのまま映し出している。涼風に誘われた野鳥のさえずりも聞こえてくる。どこまでも透き通る音色に春の匂いが絡み、霧幻幻想絵巻は夢かうつつかと展開している。
地蔵へは雨沼集落の集会所に駐車場し、徒歩15分。レンズは24mmから105mmが妥当である。
文・写真/星 賢孝
遅い春の訪れを待ちわびる、金山町・旧三更集落の「霧幻地蔵」
住所
【今回の撮影スポット】
大沼郡金山町三更地内&z=14