生物多様性の宝庫 後世へ 小網代の森、開園10周年でシンポ
2千種類を超える生き物が生息し、豊かな生態系を擁することから「奇跡の森」として知られる「小網代の森」(三浦市三崎町)が昨夏、開園10周年を迎えた。1日、周年を記念したシンポジウムが初声町の三浦市民交流センターで行われ、約50人が参加。保全活動に携わってきた学者や行政、企業ら関係者が登壇し、希少な自然環境を残す意義などを共有した。
「ここは『自然のテーマパーク』。生態系を司る流域が丸ごと残る場所は世界でも珍しい」。シンポジウムに先立って行われた自然観察会で、案内役を務めた東京科学大学教授の柳瀬博一さんが森の希少性を説明した。
同園は2014年7月にオープン。約70ヘクタールの緑地が広がる園内には首都圏で唯一、源流域を含む森林、河川、干潟が連続した環境が残るとされる。
かつては水田が広がり、1980年代にはゴルフ場の開発計画が持ち上がったが、保全を求める声が高まり自治体や企業の話し合いの末中止に。1995年に県が保全を決定し、2009年から5年かけて県と三浦市、(公財)かながわトラストみどり財団、NPO法人小網代野外活動調整会議の4者が保全や管理を進めてきた。
園内には約1・4Kmのボードウォークが整備され、ホタルの飛翔やアカテガニの放仔(ほうし)など四季折々の自然の営みが観察できる。環境学習の場として市内外から来園があり、これまで来園者は延べ40万人以上に達した。
自然環境どう残す
シンポジウムでは、森の保全に関わる関係者5人が登壇。貴重な自然をどう後世に残していくべきかや、森を観光資源とした地域活性化、地元住民への認知度向上などについて意見を交わした。
40年来、森の保全に携わり、同会議の代表理事を務める岸由二さん(慶大名誉教授)は「小網代の森は”ダイヤの原石”。整備が決まってからは磨き続けた10年だった」と回顧。多様性を維持するため人による整備が必要とし、「まだガラス玉と見間違うかもしれないが、あと10年続ければ見違える」と活動の継続を呼び掛けた。
開園は午前7時から午後5時(4〜9月は6時まで)。毎月第3日曜日には参加者のボランティアを兼ねた自然観察会を催している。