九州新幹線と西九州新幹線の利用客は1日ざっと2万3000人 観光まちづくりアワードも発表 JR九州の近況2題(九州7県)
お盆輸送を前にした8日に宮崎県日向灘沖を震源とする最大震度6弱の地震が発生し、それをきっかけに南海トラフ地震の臨時情報が発表。月末の29、30日には台風10号接近で、九州新幹線、西九州新幹線が計画運休を強いられるなど、自然災害に揺れた2024年8月のJR九州。
お盆期間(8月8~18日)の輸送実績(九州新幹線と長崎線、日豊線の在来線2線の一部区間の合計)は、JR旅客6社の全国平均(前年同期比107%)を上回る109.6%で、まずは順調な夏季輸送だったといえそうだ。そんなJR九州の近況から硬軟取り混ぜた2題。
管内全線区の利用状況と利用の少ない線区の収支を公表
まずは2024年8月20日に発表された2023年度線区別利用状況。「新幹線と在来線の路線・線区別の利用状況(1日平均通過人員)」、「利用客1日2000人未満線区の線区別収支」、「駅別乗車人員ランキング」の3項目の情報を開示した。
路線・線区別利用状況は、2023年度と会社発足時にあたる1987年度を比較した(カッコ内が1987年度実績)。
・九州新幹線博多~鹿児島中央間1万7004人(ー)
・西九州新幹線武雄温泉~長崎間6239人(ー)
新幹線は、会社発足時には未開業だったので比較はない。主な在来線は、
・鹿児島線門司港~鹿児島間3万838人(2万5138人)
・日豊線小倉~鹿児島間7941人(1万249人)
・篠栗線吉塚~桂川間2万1397人(1万755人)
・筑肥線姪浜~伊万里間9265人(7557人)
地方圏は利用客が減少した線区が多いものの、福岡市近郊は利用を増やした線区もあり、相応の健闘をみせたといえそうだ。
利用客1日2000人未満の線区は苦戦
一方、社会的に注目を集めたのが利用客数(平均通過人員)1日2000人未満の13路線18区間の利用客数と収支。
利用客1日2000人は、国が鉄道としての存続が可能かどうかを判断する一応の指標になる数字だ。こちらも主な5区間をピックアップすれば(カッコ内は1987年度実績)、
・日豊線佐伯~延岡間907人(3428人)
・筑豊線桂川~原田間384人(2981人)
・豊肥線宮地~豊後竹田間193人(1028人)
・指宿枕崎線指宿~枕崎間222人(942人)
・日南線油津~志布志間179人(669人)
13路線18区間を合計した全体の営業赤字額は55億7100万円で、前回2022年度の14路線20区間との比較では約5億円収支改善したが、前年度と比較可能な17区間にしぼればおよそ1億5000万円悪化した。
対象18区間のうち唯一の黒字を計上したのが、宮崎空港線田吉~宮崎空港間で2300万円の利益をあげた。2022年度は全区間が赤字だったが、空港線に限ればコロナ禍明けの航空需要回復を反映した格好だ。
駅利用客数(乗車人員)上位ベストテンは、①博多、②小倉、③鹿児島中央、④大分、⑤熊本、⑥吉塚、⑦折尾、⑧千早、⑨香椎、⑩黒崎。
県都のターミナル駅以外、もう少しかみ砕けば鉄道ファンが駅名を聞いてすぐにイメージしにくい可能性があるのが吉塚、千早、香椎、黒崎の4駅。ランキングからは、福岡都市圏で通勤通学需要が増えている様子がうかがえる。
西小国町のカフェに大賞(九州観光まちづくりアワード)
後半は趣向を変えて、JR九州による地域振興の話題。
JR九州が、2022年9月の西九州新幹線開業を契機に創設したのが「九州観光まちづくりAWARD(アワード)」。「九州に根付き、魅力あるまちへと成長させる人物・団体を顕彰する」を趣旨とする、旅行者と受け入れる地域をつなぐ沿線地域観光振興策といえる。
初回の「西九州観光まちづくりアワード」の対象を、翌2023年から九州7県に拡大して、現在の名称にステップアップ。変更後2回目になる今回は、最優秀賞の大賞が熊本県南小国町の「株式会社Forepue(フォレック)」に決定したほか、金賞3件、特別賞2件を選考した。
大賞のフォレックは、南小国町で「喫茶竹の熊」を運営する。喫茶では、地元・阿蘇周辺の食材を利用した食事や飲み物を提供。インテリアも地域の国産材・小国杉でまとめ、来店客に阿蘇の魅力を伝える。
金賞は大分県臼杵市の陶芸家の宇佐美裕之さんと料理家の友香さん夫妻、福岡県みやま市の筒井時正玩具花火製造所、同県宗像市の団地再生プロジェクト「ひのさと48」がそれぞれ受賞。特別賞の2件を合わせた受賞者・企業・プロジェクトの表彰セレモニーは、2024年12月4日に東京で開催される。
記事:上里夏生