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フェルメール『牛乳を注ぐ女』はどんな絵?特徴と見どころを解説!

イロハニアート

フェルメールの『牛乳を注ぐ女』は、台所の何気ないシーンを描いた作品です。日常的な主題でありながら、この作品が世界的に愛され続けている理由は、フェルメールの天才的な絵画技術にあります。 豊かで写実的な表現は、まるで額縁の奥に空間が広がっているようにも見えます。この記事では、フェルメールの『牛乳を注ぐ女』の特徴と見どころを、わかりやすく解説します!

『牛乳を注ぐ女』(フェルメール)の歴史


フェルメール『牛乳を注ぐ女』

, Public domain, via Wikimedia Commons

『牛乳を注ぐ女』は、オランダの画家ヨハネス・フェルメールが1657-1658年ごろに完成させた作品です。明確な完成年代の特定は現在もまだされておらず、美術史家の間でも意見が分かれています。おおむね1657-1658年という意見が多いものの、1661年ごろとする見方もあります。

オランダ語のタイトルは『De Melkmeid』(英語『The Milkmaid』)です。つまり原題では「ミルクメイド」と呼ばれる職業を指しており、単に牛乳を注いでいる女性というよりは、乳製品を作る仕事に従事する女性を描いた作品であることがわかります。絵が描かれた当時はおそらく、乳製品専門のメイドというよりはキッチンで炊事に従事する職業だったと考えられます。

女性は若く、がっしりとした体格です。被っているリネンの帽子はきれいにシワが伸びており、腕まくりをしています。オランダでは15世紀以降、「キッチン・メイド」に“特定の象徴性”を持たせる風潮が生まれました。それは、「キッチン・メイドは恋愛や男性関係に奔放である」というイコノグラフィーでした。

オランダにおける伝統的なキッチン・メイドの象徴性には多くの信奉者がいました。そのため、キッチン・メイドは副次的な社会的立場でありながらも、近世以降は絵画に含まれることが珍しくありません。

フェルメールの時代にはこの「象徴性」は現実感をもって家庭の問題に発展することがあり(=男性を誘惑して家庭を壊すイメージ)芸術主題として面白可笑しく扱われることもありました。フェルメールの描く『牛乳を注ぐ女』は、性的な側面を強調されることが多いキッチン・メイド像のなかでは、尊厳が保たれている珍しい例です。

『牛乳を注ぐ女』(フェルメール)の特徴:豊かな陰影表現


フェルメール『牛乳を注ぐ女』

, Public domain, via Wikimedia Commons

フェルメールの『牛乳を注ぐ女』の特徴は、豊かな陰影表現です。フェルメールは光を巧みに操り、リアリスティックな情景を描くことに長けていました。レンブラントが影の芸術家と呼ばれた一方で、フェルメールは光の芸術家と対比されることもあります。

しかし光を描くためには、当然影の部分も描かなければなりません。『牛乳を注ぐ女』には、描かれている光源は左側の窓のみであり、女性の右側の顔は明るく照らされてよく見える反面、左側はほとんど認知できません。

半分しか見ることのできない女性の表情は、ぼーっとしているようにも、悲しげなようにも映ります。彼女は、なにを想っているのでしょうか…。フェルメールが追求したのは、定義できない、意図のない日常の一瞬だったのかもしれません。

フェルメールの描く柔らかい光は、幻想的な雰囲気を宿すだけではなく、女性や備品にリアルな重量感を与えています。がっしりとした女性の体格は、肩に当たる光が丸みを強調することで引き立っているでしょう。はっきりと明暗を分けず、グラデーションによって細やかに明暗を表現することで、窓越しの光の優しさが伝わります。

1つの強烈な光源から生まれる明暗を好んだレンブラントとは、この点において大きな違いが見られます。レンブラントが影に、フェルメールが光に焦点を当てたと評されるのは、このためでしょう。

『牛乳を注ぐ女』(フェルメール)の見どころ:圧倒的なディテール


フェルメール『牛乳を注ぐ女』

, Public domain, via Wikimedia Commons

『牛乳を注ぐ女』の見どころは、圧倒的なディテールです。主役である女性はもちろん、テーブルに置かれた備品や背景に至るまで、すべてが緻密に繊細に描かれています。

テーブル上のパンに注目すると、ざらざらとした手触りが伝わるようですね。パンに比べると木のバスケットには光のつややかな反射があることから、ざらざらというよりは多少なめらかな表面であるとわかります。

女性が両手で支えるポットとその横にある陶器は、光沢の違いから異なる素材で製造されているのでしょう。女性のまとう服やテーブルクロスは、布の厚みや強度が視覚情報のみで伝わるほどの精度です。

『牛乳を注ぐ女』の女性が本作の主役であることは間違いありません。しかし、真珠の首飾りのような象徴性は、この絵にはないでしょう。「牛乳を注ぐ女」は、その場にいた現実感のある女性です。だからこそ、フェルメールはディテールを徹底して描き、鑑賞者が吸い込まれそうになるような空間をカンヴァスのなかに生み出したのです。

『牛乳を注ぐ女』を鑑賞する際は、素材の描き分けや陰影に注目すると、より楽しめるはずです。以上、フェルメールの『牛乳を注ぐ女』の特徴と見どころ解説でした!

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